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飽きと自立

突然、部屋にある大きなものや目立つものを捨てたくなるときがある。そういうときは、すぐに思い切って捨てる。いままで、そういうときに何を捨てたのか一つも覚えていないので、後悔したことはたぶんないのだと思う。

先週は久しぶりに「ものを捨てたい」という欲求が出てきた。それですぐに頭に浮かんだのがツイッターだった。前から、自分は一度にたくさんの情報に触れると疲れるタイプだな、という自覚はあって、でもいろいろと理由をつけて毎日ダラダラとツイッターを見ていた。「つながっている人たちと連絡が取れなくなったら…」「ツイッターでしか流れてこない求人情報もあるし…」「調べ物にもツイッターは便利だしな…」などなど。

でも、よく考えてみたらどれもツイッター以外のもので代用が効いたり、そもそも理由そのものがどうでもよかったりする。それに気づいてから数分で、今までに作った全てのツイッターアカウントを削除した。こういうときに思い切りのいい行動ができるのが、私の隠れたいいところだ。削除し終わったら、なんだか粗大ゴミを捨てたような爽快感があった。

それから数日経つけれど、アカウントは一度も開いていないし(ツイッターはアカウントを消してから30日は再ログインできる)、今のところ何も困ったことは起きていない。生活上のノイズが減って、すごく快適に過ごせていると思う。

その代わりに、自分のことを見つめる時間が増えた。そうしたら、なんだか、ふとした瞬間に「今の自分の生活って本当に退屈だな…」という気持ちになることが増えた。思い悩むことは少ないし、環境に恵まれてるなとは思うけれど、日常に刺激がなさすぎる。とにかくつまらない。人より少ない時間とはいえ働いて、ご飯を食べて、夜は何か作ったりして、寝る。それだけ。正直言って、人生に飽きている。

美大で過ごしていたころがちょっとだけ恋しい。たくさん悩んだけれど、友達もいたし、毎日何かしら刺激があった。今はそれとは程遠い環境にいるし、ほとんどの友達と離れてしまった。ネットに作品をアップして反応をもらうのが、数少ない癒しと励みだけれど、大学が与えてくれた面白さとは全然違っている。

やっぱり、今より好きな仕事を見つけて頑張ってたくさん働いたほうがいいのかな?とか、どこか遠くに旅行に行ったら何か変わるかな?とか、もっとたくさん映画を観たり本を読んだ方がいいのかな…とか、いろいろ考えるけれど、退屈ということは穏やかに過ごせている証拠でもある。今まで散々思い悩んで、薬に頼るほど苦しんできたことを考えると、しばらくこの生活を続けてみて考えるのもありかなあ…という気もしている。

ただ、このまま年を取っていくのはちょっとまずいかもしれない。「後悔のない人生」ってよく聞くけれど、何をしたら後悔せずに済むんだろう。やってみたいことをリスト化したら違ってくるんだろうか?どの方向に向かって努力したらいいんだろう…

たぶん、これは自立がカギになっている。今まで、精神的にいっぱいいっぱいで考える余裕がなかったけれど、私は親に依存しすぎている。経済的な部分もそうだし、何か決めるときも親の顔を見て確認してしまう。家族で知らないところに来ると親のあとをついていってしまう。いつも、自分の意思で物事を決められていない…

自立したら、確実にやることは増えていく。その分、エネルギーの消費も激しくなって、くたくたになるかもしれない。でも、確実に暇つぶしにはなる。

いつか自立して実家を出たら、やりたいことが一つある。それは家族に言えないような秘密を、些細なことでもいいからいっぱい作ること。私は、基本的になんでも家族に話してしまうけれど、そういう自分が実はあまり好きじゃなかったりして、その背景にあるのが自立できないことに対する後ろめたさなのかもしれない、と感じている。なんでも家族に話して安心したい自分のことが、おそらくうっすら嫌いなのだと思う。

今よりもう少し自分のことを信用できるようになりたいし、何より好きになりたい。だから、そのために、自分のなかの自分しか知らない部分を、もう少し広げていきたい。「親から自由になりたい」というほど振り切っているわけではないし、今の生活は楽ではあるけれど、それでも自分の人生の舵は自分で切りたい。

経済的に今すぐ自立して一人で家を出るのは無理だけれど、まずは自分一人で行動する範囲を今より広げるところから始めていきたい。人より遅いかもしれないけれど、何かを確実に一人で判断する時間を増やしたい。それで少しずつ自立に向かって徐々にステップアップできたら、自分を褒めればいいかな…と思う。

そうしているうちに「人生が退屈で仕方ない」とか言っていたことも忘れるんじゃないかなと思うけれど、うーん…どうなんだろう…やっぱり、まだわからない…でもとにかく、当面の目標として、自立はしたい。

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