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番外編 アルケミーBO1でミシックに到達したので使ったデッキの話をする。

今月、実はずっとアルケミーでランクを上げてました。
職工おじさん、はれのちしとどです。
よろしくお願いします。

※本記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。
題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。
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ウィザーズ・オブ・ザ・コーストのファンコンテンツ・ポリシーより。


◆はじめに

普段は「ヒストリック職工」村の、そのまた奥地に引き篭もってデッキの作成や対戦会の開催に明け暮れる私は、ランク戦(ラダー)なんて土俵からは一線を退いて久しくありました。

ある日のことでした。
いつものようにスパーキー師匠との組み手に明け暮れる私の眼前で、その萎びた戦意をかき立てる事件が起きました。

毎月の「ワンコイン・リーグ」でも鎬を削る朋友、小川めぐみが「スタンダード」でミシックランクに到達したのです。

幻聴「どうじゃい、オリジナルデッキでミシックだぞ」

最初に訪れたのは賞賛の心であり、友人の健闘を称え、労いの言葉を尽くしました。悔しいとか、負けたくないとかいう気持ちとは無縁でした。

ただ、並び立ちたくなった。
強敵(とも)として、お前の隣には私がいるのだと示したかった。

「やらねば。」
それは強迫的でもある言葉一つを胸に刻み、ひたすらに、孤独に戦う日々が訪れました。


◆なぜアルケミーだったのか

どんな思いがあれ、ラダーを登ると決めたのは良いとして、それを「アルケミー」で為そうとした理由はなんだったのか。別にランク戦が実施されているフォーマットは、「アルケミー」だけに限りませんし、友人と張り合いたいのなら、それこそ「スタンダード」を選択することもできました。

理由として挙げられるのは、「環境への理解度」「使用できる資産」
そして前者2つを強固にするのが「残された実施期間」です。

ランク戦から長らく離れていたどころか、レアカードを使う構築戦とも距離が生まれていた私にとって、12セット3年分のカードプールを有する「スタンダード」のメタゲームを残された半月の間に理解して、限られた資産の中で広大な環境における自分なりの正解に辿り着いて、ラダーを勝ち進む……というのは至難の業に思えました。その他のフォーマットについては、それがより顕著になります。

対して、「アルケミー」。
30種類のカードが収録されている「アルケミー」用の拡張セットが毎回追加されるとはいえ、使用できる範囲は基本的に旧「スタンダード」と同じ2年分で、そこに極一部の限られた『指輪物語』のカードが使用される程度であり、環境理解の難易度は低め。
更に、「ヒストリック職工」で使用するアンコモンために、アルケミーセットを毎回20パック購入していた私には十分なカード資産がありました。

限られた時間と資産の中でなら、よりメタゲームを理解できるのは「アルケミー」であると判断したのです。更に空いた時間でゲームの試行回数を重ねられるようにBO1で挑むことにしました。


◆試しに使用したデッキ

初めに適当なデッキで勝ったり負けたりして、ランク戦の流行を探ります。
使用したのはまず【赤単アグロ】

あり合わせのカードで組んだ割には勝てました。
しかし、黒系のミッドレンジ相手に非常に分が悪く、特にライフ回復まで備わっている《執念の徳目》を4枚搭載するような型とのマッチは最悪。赤単とのミラーマッチも後手になるだけで勝率が下がり、安定して勝ち続けるのは難しいように思えました。

次に赤に対して有利が見える【黒単ミッドレンジ】
こちらもあり合わせの割には悪くなかったです。

しかし、今度は【グリクシス強奪】に対して、非常に相性が悪い。
「強奪」側が序盤を除去で凌ぎつつ、こちらのライブラリーからカードを抽出して使う手前、汎用性の高いカードを詰め込んだミッドレンジの構成は「強奪」にとっては狩場も同然。私の除去がクリーチャーに牙を剥き、私の《シェオルドレッド》や《肉体喰らい》が襲い掛かってきます。

私がラダーを開始した当初は、月の半ば程で『アルケミー:サンダー・ジャンクション』のリリースからまだ間もなく、【グリクシス強奪】のデッキリストが出回ってから加速度的に使用者数を増やしたことも重なって、黒単を含むミッドレンジの立ち位置は非常に悪いものに感じられました。

ついでに間に合わせの【グリクシス強奪】を組んでみて、自分でも「強奪」の使用感を確かめることにしました。

もう少しコントロールに寄せてクリーチャーを減らした構築などもありますが、強い動きは2ターン目に《荒々しい財宝略奪者》の「先制攻撃」でアグロの動きを止め、除去で時間を稼ぎながら《勝利の逃走》や《歪んだ看守、グレンゾ》へバトンを渡す流れ。「宝物」を生成してマナを伸ばす動きも強力です。
除去を多く採用するので赤単から奪った「果敢」持ちのクリーチャーなどは生かせる機会が多く、黒系のミッドレンジは自分でもやられたように何をめくっても美味しい狩場状態。

ただ、「強奪」同士のミラーマッチは本当につらい。先に相手の「強奪」元のカードをより多く奪った方が勝利する相手のデッキピックアップガチャ対決が始まります。確かに強いけど、コントロールをやりたいデッキなだけあって1ゲームが長く、試行回数を稼いだり、空き時間でプレイするのには向いてなさそうなので、研究することを断念しました。続けていれば、高い勝率を維持できるデッキテーマであることは確かだと思います。


◆最後に選んだデッキ

というワケで、持てるリソースや情報源を総動員し、勝ったり負けたりの紆余曲折を経て、最後にラダーで握っていたデッキがこちらです。

【ナヤ召集】です。
「スタンダード」にも赤白をベースにした【ボロス召集】が存在しますが、その「アルケミー」版はデジタル限定の《議事会の声、イマーラ》を採用し、クリーチャーの軸を緑と白に変更。《イモデーンの徴募兵》だけをタッチカラーするという構成に変化しています。

このデッキ、まず第一に速い
ファストランド+ペインランドの組み合わせで強引にマナを安定させることで、1ターン目からクリーチャーを展開し、2ターン目には「召集」で《イマーラ》の着地を狙います。
そこから邪魔なクリーチャーを《門道急行の事件》で除去して総攻撃することで、事件の解明まで一気に達成し、ライフと盤面の両方でマウントを取るのがセオリーです。

狙いの動きを安定させるために1マナのクリーチャーの採用枚数は17枚。この軽さと、4~5ターンで決着が付くスピード感が魅力です。空いた少しの時間でプレイできますし、試行回数を稼いで動きを最適化することもできました。

次に、私の場合は資産的な負担が軽いのが助かりました。
デッキに使用するカードの大半がアンコモンであり、「ヒストリック職工」で遊ぶのであれば確保しておいて損のないカードばかり。レアについてもこれまでのシーズンをある程度遊んでいたので十分にありましたし、ワイルドカードから交換したのは数枚の《イマーラ》くらいで、試しにデッキを作成するハードルが非常に低かったのです。

そして、メタゲームでの立ち位置です。

アルケミーのBO1ランク戦環境において、よくマッチする相手は【グリクシス強奪】【ナヤ(ボロス)召集】【赤単果敢】【《灼熱の銘》バーン(赤単・赤緑)】で、たまに【黒単・黒緑ミッドレンジ】【多色レジェンズ】【青緑(+黒)毒性】辺りが登場します。
中でも環境最多の勢力である【グリクシス強奪】に対して有利を取れ、他の大抵のデッキにも五分以上に立ち回れる構成にできるのが大きな加点でした。

まずもって、自分でプレイした感想として「強奪」側は【ナヤ召集】のカードを奪ってもあんまり嬉しくありません。積極的にクリーチャーを並べるワケでもないので《門道急行》は除去として成立しないし、小粒を奪って戦場に出しても後手後手に回って一時しのぎの壁にできる程度。唯一《イマーラ》を奪って、追放除去をドラフトできればそれなりなのですが、運試しが二段階なのであまり期待しても仕方ありません。

デッキの速度感的にも「召集」が有利で、「強奪」側は《勝利の逃走》を設置する4ターン目以降が本番であり、対する【ナヤ召集】はその付近をキルターンに定めているため、準備を整えているあいだに走り抜けられることは多々あります。

もちろん、大量のクリーチャー除去を抱えれば序盤を凌げますし、「強奪」を行うことで相手のリソースを削り、マナフラッドを誘発する効果はあります。
長期戦に持ち込んでから強奪したクリーチャーを連打することで一気に「ナヤ召集」をして勝つこともできますが、その状況はただコントロールデッキがそれに成功しただけであり、基本的な「強奪」側の不利は揺るがないでしょう。

自然なかたちで《機能不全ダニ》を採用できるのも環境に合致しており、【強奪】が使う《勝利の逃走》や、ミッドレンジやコントロールが好む《一つの指輪》《オルサンクのパランティール》などの厄介な置き物を除去する役割を担えるほか、【赤単】系が相手でも《灼熱の銘》を牽制したり、《巨怪の怒り》が付けた「怪物」を割って、ライフを回復しつつ「トランプル」を失わせてダメージ計算を狂わせることが可能です。

環境の全体除去が5マナなのも早いターンで勝負を決めにいく【召集】にとっては追い風となっていました。《太陽降下》なんか打たれようものなら大抵負けるので気にしても仕方ありません。全力で駆け抜けられます。

また、《イーオスの遍歴の騎士》や《イマーラ》で後続を確保しながら戦えるのでメインボードの軽さとは裏腹に意外と粘り強く、繰り返し盤面を処理されてもライフを詰めていくようなゲーム展開も可能でした。《イモデーンの徴募兵》の「出来事」面を使うこともそれなりにありましたね。


◆カード個別の話

ここからは少し個々のカードについてお話をします。

《陥没穴の偵察》《進化する適応体》
【ボロス召集】がベースにあるとは言え、実は【ナヤ召集】では緑のクリーチャーを1ターン目に出すことの方が多いです。

《陥没穴の偵察》については、まさに1ターン目の偵察に適任で、絶妙に除去を打ちたくないラインで盤面に残りやすく、「探検」でデッキの動きを安定させてくれます。
《進化する適応体》を1ターン目に出すかは状況次第ですが、《ひよっこ捜査員》などで2/2に、続けて《イマーラ》で3/3に成長し、《遍歴の騎士》の「召集」に貢献しつつ4/4までは順調に育ってくれますので、序盤はじっくり寝かせておいて、最後の総攻撃で暴れさせることもしばしば。

《ひよっこ捜査員》《内なる空の管理人》
《イマーラ》の最速召集を支える白の方のパーツ。

《内なる空の管理人》は、《イマーラ》の不在時にとりあえず能力を起動して2/3になったり、占術1でデッキを安定させたり、飛行を得ることで突破口を開いたり……と仕事は多いですが、1回能力を起動するのに3つもパーマネントをタップする必要があるのでたくさん引いても嬉しくありませんし、メインの動きである「召集」を優先するため、起動しているヒマがないことも多いです。ゆえに、枠を空けたいときは最優先で削りました。

対して、《ひよっこ捜査員》は《管理人》用のアーティファクトを用意でき、「手掛かり」のドローで詰めの勝ち筋を探しにいったり、序盤は《進化する適応体》を成長させることもできますし、《陥没穴の偵察》と同様に除去を打ちたくなる顔をしていないので盤面に残りやすいのも強み。このデッキにおいては、レアの《内なる空の管理人》よりも優先して枚数を採用していいと判断しました。

そして、1マナ域の最後が《機能不全ダニ》
なぜかライフ回復は3点に増えており、タフネスも2に上がっているので《進化する適応体》の成長にも加担できます。
アルケミーにはメインから割りたい置き物がたくさんありますし、BO1環境では赤単も多いので3点のライフは勝負の明暗を分けるには十分。最悪、自分の「手掛かり」を対象にして能力を起動することもあります。

もう少し枚数を取っても仕事をすると思いますが、「召集」に使うときに色マナを補えないので、特に《イマーラ》を出すときには複数枚あると不便。調整の結果、2枚に落ち着きました。

《毅然たる援軍》
唯一の2マナ生物。引き次第で土地と1マナ生物の色が噛み合わないことが多いデッキですので、「召集」のついでに上手にマナを消費したいときにメインで唱えます。《イーオスの遍歴の騎士》を唱えるために使うと、カード1枚で2枚分のカウントになるのが強いですね。
また、終盤は構えておいて実際の頭数を誤魔化すことも多いです。

《議事会の声、イマーラ》
『アルケミー:カルロフ邸』に収録されたデジタル限定カードであり、【ナヤ召集】をデッキとして成立させている主役。
軽めの「召集」と、出たときに後続を確保する能力は非常に噛み合っており、デッキの中継地点として、所謂「ブン回り」の立役者でもあります。

「呪文書」の内容は9種類の「召集」付きカードになっており、その中でよく使うものは《議事会の裁き》《イーオスの遍歴の騎士》《大集団の行進》《敬慕されるロクソドン》の4枚。「ドラフト」能力は「呪文書」(イマーラの場合は9種類)から3種類が選出される形式なので、これらの当たりを引けることは多いです。
たまに15/15くらいに成長した《古の放漫トカゲ》で戦場を蹂躙することもありますが、やはり重すぎるのでこれを選ぶ状況は随分少なくなります。

《イモデーンの徴募兵》
デッキ内で唯一の赤い呪文。3ターン目から連打してれば勝てることも多いですし、ロングゲームになったら「出来事」で頭数を稼いで、本体込みの3体9点パンチでゲームを決めることもしばしば。
ほぼ【セレズニア召集】と呼んでもいいデッキ構成の中に、赤をタッチカラーしてでも採用されているだけのパワーはあります。

《イーオスの遍歴の騎士》
《議事会の声、イマーラ》の「呪文書」にも含まれていますが、メインボードにも4枚採用しています。それなりのサイズに加えて、とにかく息切れを防止できる能力が強い。あまり多くのクリーチャーを「召集」に使うと攻撃の手を緩めることに繋がってしまいますが、最低でも3体はタップさせて《イマーラ》や《徴募兵》を手札に加えたいところです。

《門道急行の事件》
「強奪」が2ターン目に出してくる《荒々しい財宝略奪者》を除去できないと、こちらの攻撃の手が止まってしまうので、そこに高確率で対処できるように4枚積みしています。引きすぎると困りますが、引かない方がより困るカード。

《没収の強行》
1枚だけ採用。永続的な全体強化に加えて、オマケで置き物を割れるのが強い。タフネスを上げることで《財宝略奪者》のパワー2・先制攻撃を超えて殴れるようになるので枚数が欲しくなりますが、こちらは引きすぎるとより困るので調整に難儀した部分。

土地については、とにかくテンポを重視するために3ターン目までにアンタップ状態で置けるものしか入れていません。特にデッキ内のほとんどのカードに対応している緑白の《剃刀境の茂み》と《低木林地》は4枚ずつ確定で入れて構わないと思います。

残りの配分は、白の方が緑よりやや多く、3ターン目には赤が出る状態が好ましいので、結局「緑白赤」絡みのファストランドを全部と、ペインランドの枚数を調整して納得のいくところに収めることになると思います。私は《戦場の鍛冶場》4枚+《スランの門》2枚にしました。

《スランの門》は再調整によって無条件でアンタップインするようになっていますので、あらゆる状況で足りない色マナを補充できる便利な土地として使えます。この枠には《魂の洞窟》を試したこともありましたが、色マナがクリーチャー以外に使えないのが割と不便なことに加えて、そもそもクリーチャーに対して打ち消しを構えようなんていうデッキがBO1環境に存在しないので、より用途に融通の利く方に変更して構わないと判断しました。


◆おしまい

と、いうワケで私はアルケミーBO1でミシックランクに到達しました。
最終的に物を言ったのは、試行回数によるプレイの最適化と、それを実行するだけの気持ちです。

1日のプレイ時間は1~2時間程度。
半月で達成する必要があったので、負けからの立ち直りを早くするために、土地事故や相手のブン回りによる負けで発生したストレスを即座に吐き出せる環境が好ましかったのでYouTubeでの配信は行いませんでした。
本当はやりたくてサムネまで作ったんですが、そうなると間に合わなかったかもしれません。知らんけど。

せっかく作ったんで置いておきますね。

おかげさまで最後は破竹の勢いで連勝してダイヤから一気にミシックまで駆け上ることができました。「とりあえず目標を達成してしまって、最悪noteでまとめて報告したらいいや」という選択肢が生まれたのは強みですね。

アルケミー村に現れた恐怖の速攻ピンキーパイと化した私の戦いはこうして幕を閉じました。来月以降も続けるかは未知数です。

あと、根詰めすぎると体調を崩すのでラダーは余裕を持って計画的に昇ることを強くおすすめします。

ご清聴ありがとうございました。

じゃあの。

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