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【二次創作】二次小説がもっと楽しくなる「解像度」の話

今回は、二次小説における「解像度」の話。既に二次小説を書いていて、「もっと厚みのある表現ができないかなあ」とか「推しのことをもっと魅力的に書きたいなあ」と思っている方、もっと二次創作を楽しみたい方向けのヒントです。

二次小説を書く時、最初に考えるのはストーリーですよね。そして、ストーリーに地の文や会話文で肉付けして小説にしていきます。このようにして完成した小説が、ちょっと物足りないなと思うことはありませんか。それは、もしかしたら「キャラの行動だけをなぞっている」とか「キャラの感情表現に対する書き方が薄い」のが原因かもしれません。
ひたすら事象のみを書き連ねていく小説は確かにあります。でも、「推しキャラ」ありきで書く二次小説の場合、それだとちょっと物足りなくなってしまうかもしれません。二次創作を始める時のモチベーションって「もっと推しキャラを浴びたい!」とか「このキャラの原作とは違う表情が見たい」とかの場合が多いですよね。だからこそ、キャラの行動や感情に対する「解像度」が低いと少し物足りなくなってしまうのです。
複雑なストーリーやドラマチックな筋書ももちろん魅力的です。でも、キャラを浴びたい勢、見ているだけで満足勢としては、キャラの様子や気持ちを存分に知りたいわけです。
そこで提案したいのが、キャラクターの行動や感情の「解像度」を上げること。早速ですが、「解像度」とは具体的にどういうことかを考えていこうと思います。

解像度とは:キャラクターの動作や心情が鮮明に浮かび上がる状態のこと

さらに具体的に考えると……
・キャラが存在している空間や場面がありありと想像できる
・キャラが「なぜその行動をしたのか」の背景がわかる
・行動や感情が次のシーン、物語の続きにつながっている
・キャラの感情の動きが手にとるようにわかる

上記のような状態が「解像度が高い」ということだと考えます。小説は絵や漫画ほどわかりやすくない。一方で細々と説明を入れてしまうと、解説調の情感のない文章になってしまう。悩ましいですね……
そこで、小説の解像度を上げるにはどのような技法が有効か、解説調にならずに流れるような文章を書くにはどうしたら良いのかを考えていきます。

【1】「場面」のレイヤーを重なる

レイヤー、即ち表現の「層」を重ねることで、場面の解像度を上げていく方法です。具体的には、季節や時間、場所について詳しく記載していきます。キャラが話しているのは部屋の外なのか、道路なのか、何かの施設なのか、昼なのか夜なのか、暑い日か寒い日か。小説の筋書、ストーリーを前に進めるという点では大事ではないかもしれませんが、読者と物語をつなぎ、場面を想像してもらうためには重要な描写です。
また、これらを描写する際に「それってどんな感じ?」「うんうん、それでどんな感じかもっと教えて?」と自分に問いかけながら、どんどん細かく書いていく。そうすると、場面の解像度が上がり、読者がそのシーンの絵面をより想像しやすくなります。

たとえば、同じ「夏」の描写でも、以下の文章それぞれから想像される場面はまったく違いますね。

A)暑い夏の日、AとBが海に向かって歩いていた。
B)照りつける真夏の太陽が、地上の水分をすべて奪い去ってしまったようだった。焼けたアスファルトの道をAとBは海に向かって歩いていた。
C)一歩進むだけで首筋から汗がにじみ出てくる。重く湿った空気がじっとりとまとわりつく夏の道を、AとBは海へ向かって歩いていた。

「夏」というキーワードに対して、時間は?気温は?湿度は?日差しは?夏は始まったばかり?それとも夏の盛り?終わり?キャラは汗をかいてる?喉が渇いている?あるいは??と考えることで上記のような文章がつくられていきます。また、「夏がはじまる」「夏の盛り」「夏の終わり」などの季節感や朝・昼・晩の時間帯、空気の重さや匂いを通して、キャラの心情たシーンがもつイメージ、メッセージを間接的に読者につなげることができます。

【2】「行動」「感情」のレイヤーを重ねる

「行動」や「感情」についても同様です。
行動であれば、「なぜそうしたのか」「過去にどんなことがあって、どう影響しているのか」「思い切ったのか、躊躇いながらなのか」「どんな気持ちで行動したのか」と、なぜ?なぜ?どうして?を書き手である自分が自分自身と自分が描くキャラに対して問いかけていきます。
感情について「悲しい」とただ書くよりも、「なぜ悲しいのか」「どのくらい悲しいのか」やどんな風に悲しいのか(落ち込んでいるのか、苦しいのか、切ないのか、やるせないのか)……キャラの心情を分解して、レイヤーを重ねていきます。「悲しい」とひと言で表してしまうこともできますが、実際はその感情は複雑で、たった一言で言い表せるようなものではないはず。より細かく、より詳しく、キャラの感情の襞まで分解して描写していく。「キャラをもっと浴びたい!」と思う二次創作だからこそ、その努力が萌えにつながっていきます。
また、感情を描写する際に、キャラの表情や動作についても描いていくとさらに解像度を高めることができます。

【3】R18シーンの解像度の上げ方

二次創作のお楽しみ、R18シーン。原作では絶対に見られない展開だからこそ、みんな大好きですよね! では、そのR18シーンの解像度はどう上げるのか。これもまた、レイヤーを重ねることが有効です。
たとえば、肌の質感や色づき、吐息の様子、汗、湿度、体温……これらを描写することで、あれをしてこれをして喘いでフィニッシュ!という単調なR18シーンを抜け出し、よりじっとりねっとり、読者の興奮を煽るシーンを描くことが可能になります。たとえば、「キスする」という動作一つでも、①双方の舌の動き、②目の閉じ方、③キャラの表情、④息の吐き方、⑤身体の反応など描写すべき点は複数あります。優しいキスなのか、余裕のないキスなのか、遠慮がちなのか積極的なのか、キスが目的なのかその先もあるのか……オタクの妄想力をもってすればいくらでも階層を重ねることができますね。同時に、キスをしている場所の雰囲気も大切です。

妄想して、想像して、シーンのレイヤー(階層)を重ねることで、二次創作はもっと深く、楽しくなります。いつもの二次小説がちょっと物足りなくなった方、もっとたくさん、もっと詳しく推しの魅力を伝えたい方、ぜひ試してみてください。

ありがとうございます。 好きを形に!たのしく同人活動!を目標にがんばります!