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ユニフォーム盗撮行為を無くすために

石塚晴子です。
今年の1月に女子陸上選手/元選手の方を対象にした、ユニフォームに関するアンケートをとりました。
今回のnoteではそのアンケートの結果と寄せられた意見の一部を紹介し、最後にこれらを踏まえた今後の取組について記していきます。

アンケートをとった背景

2020年、盗撮とSNS上での性的嫌がらせを受けた選手がその被害を日本陸連に訴え、JOCを始めとするスポーツ7団体が性的ハラスメントを防ぐための声明を発表しました。しかし法規制は困難で、この問題に対する効果的な打ち手がなされていないのも現状となっています。
そこで当事者の方々の声を聞きたいと思い、アンケートを取りました。

このアンケートには丸2日間で818件にのぼる回答が寄せられました。
ありがたいことに自由記述の回答数の割合が非常に多く、そのことからは多くの人がこの問題について何かしらの不都合を抱えた経験や、意見をお持ちであるということが推測されました。
先ずは皆様のご協力、本当にありがとうございました。
回答者だけでなく、拡散などで協力してくださった方々にも厚く御礼申し上げます。

アンケート結果のサマリー

【陸上競技のユニフォームについて】
対象:女性の現役陸上選手/女性の元陸上選手
期間:2022年1月18日〜20日の約48時間
集計方法:Google formを使用・Twitterによる呼びかけ
回答総数:818件

質問と回答の概要
①回答者の年代

本来陸連登録者の割合は中学生が最も多いですが、Twitterで集計したことによりその通りとはなっていません。

②現役選手かどうか

割合としてはほぼ半々となりました。

③身近な性的被害の有無

約4割の方にとって、性的被害は身近に起こっていたことがわかります。

④盗撮防止に配慮したユニフォームを着たいと思うか

6割近くの方がユニフォームへの配慮を求めています

特に、身近に被害があったと答えた303人中、73%にあたる人が盗撮防止に配慮したユニフォームが欲しいと答えました。

残り2つの設問では
「⑤(④で「はい」と答えた方へ)あなたにとって、それはどんなユニフォームですか」
「⑥ユニフォームについて困りごとや意見があれば自由に記述してください」
と、自由記述を設けています。

ユニフォームに求められている機能

⑤の回答で最も多かった意見は露出を減らすことについてでした。
回答の一部をご紹介します。

肌の露出が少なく、盗撮されても透けない素材。特に下はブルマタイプではなく365日安心して履けるスパッツタイプがいいです。(高校生/元選手)
機能性を重視しつつも、もう少し肌を覆えるもの(大学生/現役選手)
・男子のようなユニフォーム(高校生/現役選手)

セパレート型・ブルマタイプである必要があるのかという意見は想定していましたが、ランシャツタイプでも下着が隙間から見えるのが気になる、といった意見も多く見られました。
赤外線盗撮(特殊なカメラで撮影すると服が透けた写真が撮れ、それが出回るという被害が報告されています)をされない赤外線透過防止素材を求める声もあります。

一方で、
・すでにあるものでも対策できるから、学校、チームで統一ではなく、選択の幅が広がるとよい。(一般/現役選手)
・それぞれ気になるポイントも違うと思うので、どんなユニフォームというよりは、ユニフォームの形を自身で選択できるのが当たり前になるといいなと思います。(一般/元選手)
といった選択の自由を求める意見もあり、これも非常に重要なことです。

選手が感じていること

⑥のユニフォームについて困りごとや意見について、寄せられた意見の一部もご紹介します。

・女性は生理の時に着やすいユニフォームがあればいいなと思います。(一般/元選手)
チームの伝統的なデザインとかあると、透けるとか変えたいとか言いにくいと思います。我慢してる人多いんじゃないかな。(一般/元選手)
・ユニフォームを改善するより、撮影禁止等のルールを徹底するなどしてほしいと個人的には思います。(大学生/元選手)
・タイムを求めたらあの形のユニフォームになってしまうのはしょうがないし、半ば諦めています。盗撮された写真をSNSで見つけた時はとても傷つきました。(大学生/現役選手)
他にもジェンダーレスなデザインを求める声などもありました。

本当は全部紹介したいと思うほど体験に基づいたリアルがそこにあり、実に様々な意見が寄せられました。
繰り返しになりますが、性的被害を自身や身近な人が経験したと答えた人が4割近くいました。
放置し続けていい問題では無いことは明らかです。

3つのアプローチ

私がこれらのアンケート調査を踏まえ必要だと思うのは
①モノが開発されること
②選択の自由があること
③悪質行為ができない環境を作ること

の3つであると考えます。

これらは働きかける先が違います。
「①モノが開発されること」については、女子選手の意見に基づいたウェアをメーカーが生産していくことにあります。
ランシャツ型・セパレート型とも違う新しい選択肢を作ることが必要であり、今ある形にも必要な機能を搭載していくことが求められるでしょう。

「②選択の自由があること」については、ユニフォームのデザインを決定する立場である人物に働きかける必要があります。
部活動がメインの日本では、顧問の先生が決定していることが殆どだと推測されますが、選手本人が納得して選んだユニフォームを着ることは、選手が安心してパフォーマンスを発揮することにも繋がります。
一方で、リレー種目のユニフォームを統一するルールによって形を選択できないといった現状について言及する意見もありました。

「③悪質行為ができない環境を作ること」については、特に多くの人の協力を必要とします。
撮影禁止ゾーンや許可証制・巡回といった大会の整備。画像取り扱いにあたってのインターネットリテラシーの浸透。
そして当事者だけでない多くの人が男女関係なくこの問題について認知することが必要となります。

私に出来ることは何か

私は昨年の大会で露出が少ないユニフォームを着て走り、その様子を「セパレートも格好良いけど、ユニフォームの形は選手が選んでいい」というメッセージを添えて投稿した所、選手や保護者・学校関係者などから多くの反響がありました。

一方でSNSで発信するだけでは限界があるとも感じました。
もちろん悪質行為が無くなることが理想ですが、先ずは私たちが自分の身を守る方法を編み出し選択していくことが第一歩になります。
今回はそのためにアンケートを行い、ある程度の現状を把握できたのではないかと思います。

DESCENTEとのアドバイザリー契約

そして、この9月からDESCENTEとアドバイザリー契約を結び、商品開発とプロモーションを共同で行っていくことになりました。
DESCENTE様には昨年度からウェアの提供をして頂いており、何か恩返しになることをしたい思いで共同開発について申し出た所、「モノを作る意義を持って取り組むことは、我々にとっても重要なことです」と話を受けてくださりました。

DESCENTE様には2年に渡り、格好良く動きやすいウェアを提供して頂きました。

女性の意見を取り入れた「モノが開発されること」に繋げていくために、ぜひ色んなご意見をお寄せ頂きたいのと、もちろん今回のアンケートで集まった意見も活用していきます。
自分達の意見が反映されていくという実感が、きっと無力感を覆す力になっていくと信じています。

「私たちは選手を守る」

元々アンケートを取る前、私には作りたい形のユニフォームがありました。
しかし実態を見てみると、そのユニフォームを作ることが必ずしも必要とされているゴールでは無いことが分かってきたのです。

今回のアンケートで浮き彫りになったのは、モノを作ることだけでなく問題の解決に多くの方面からのアプローチを必要としていることでした。
当たり前ですが、それは私一人の力ではとても出来ることではありません。

アンケートを取る前に構想していたデザイン。自分の「あったらいいな」を詰めたつもりでした

最後に

これを読んでいる皆様にお願いがあります。
「私たちは選手を守る」という意思表示をして頂きたいのです。
それは私に意見を送ることでも、観戦中に周囲に目を配ることでも、来年度のユニフォームについて検討することでも、どんな形でも構いません。
この意思表示と行動をすることは、3つのアプローチ全てに繋がっていくからです。

この問題の解決に、力を貸して下さる方を必要としています。
自分が頑張ってきたことを侮辱される悲しさや、現状を変えられない無力感を、これから陸上をする女性に残したく無いのです。

選手が安心して全力を出し切り、頑張ってきた陸上を嫌いにならないで良いように。

改めて、今回はアンケートのご協力をありがとうございました。
そしてこれからのために、皆様の力を貸してくださると嬉しいです。

今年の5月に行われた女子サッカーの試合で、私が参画しているOPT UNITEDが作成したキービジュアルが日産スタジアムに掲出されました。記事のヘッダー画像もOPT UNITEDメンバーのmiho(@miho_h.90)さんが撮影して下さいました。

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