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第2話 恐怖の飛行シミュレーション

人材育成について、ちょっと立ち止まって考えていきます。

今から20年以上も前だと思いますが、次のようなテレビCMを見たのです。

飛行機が飛んでいる。
飛行機の機内が映っている。
乗客は思い思いに新聞を読んだり、音楽を聴いたりしている。
そこへ機長の挨拶。
「皆さん、本日は○○航空△便にご搭乗いただきありがとうございます。
当機は現在◇◇の東方○○フィートを予定時刻通り、順調に運行中です。」

(ちょっと間があいて・・・)

「実はわたくし、本日が初のフライトです。」
んっ? と乗客が顔を上げる。

機長が続けて言う。
「でも皆さん、何もご心配されることはありません。
シミュレーターでの訓練を徹底的にやりました。
だから大丈夫です。」

おいおい大丈夫か?・・・と乗客がざわめく。
機長が言う。
「快適な空の旅をお楽しみ下さい。」
乗客、ますますザワザワ・・・

 このCMが印象深くて、10年以上経って、人材育成を考える素材として面白いと気づいて探したのですが、見つけられませんでした。ウロ覚えなので実際のCMとはちょっと異なるかも知れません・・・。


 さて、人は実地の経験でこそ育つ、という認識は今でも広く共有されているものでしょう。研修で人は育たない、OJTがはるかに重要だという意見もよく耳にします。

 しかし、飛行機の操縦などは、経験が必要と言ってもその前に十分な訓練がなければ、実地の経験をさせること自体、危険を伴います。
 経験を積ませにくい=間違うことの影響が大きい=例えば生死にかかわる技能こそ、シミュレーションが不可欠なのですね。

 経験を補う手段を使う時、もっとも重要なことは、
実際その場に身を置いているかのように感じること=「臨場感」
です。
臨場感のない練習は効果が薄いのです。

 今ではシミュレーション技術も進化し、リアリティが高い状態での練習も可能になっています。前回ご紹介した外科手術の場合も、臓器等の状態が360度映像化され、手術の事前研究・事前準備が進化していると聞きます。

 しかし、一般的なスキル習得で
シミュレーションが用意されることはあまりありません。
(工場の作業や設計等の仕事では一部見られますが・・・)。

シミュレーションができない時、人材育成の効果を高めるには、
例えば 手続きの文書を読むときに
例えば 上司の指示を受けるときに
例えば 仲間の体験談を聴くときに
例えば 研修講師の話を聞くときに
実際の場面でどんな感情や意識、行動、結果をもたらすかを
リアルに想像する力が大切になります。

 生死に関わる技能の習得に「臨場感」が必要であることは、比較的容易に理解・実感できると言えましょう。しかし、臨場感はすべての人材育成に大切なものです。
 そして実地の体験ではない学びの場面で臨場感を得るには、「想像力」が求められます。実地の場から離れていればいるほど、強い想像力が必要と言えます。

 学ぶ力を養う前提として、想像力=リアルにイメージする力を育てることが、これからますます重要になると思われます。

人材育成には「臨場感」と「想像力」が大切
というお話でした。

以上です。
皆さんはどう感じたでしょうか?

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