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第19話 教えて学ぶ

前々回は「職務充実(job enrichment)」、
前回は「職務拡大(job enlargement)」を取り上げました。

人材育成の第一歩は、
ある仕事を何度も反復して経験し、
自分でできるようになること=「習熟」です。
何をどうすればいいかが分かっていて、
自然に頭や体が動く状態ですね。

ある仕事に習熟できたら
より難易度の高い判断や例外事項にも
自分で対応できるよう、さらに経験を積みます。
これが「職務充実」です。

「職務充実」まで進んだら
今後は未経験の仕事にチャレンジして幅を広げます。
これが「職務拡大」ですね。

習熟⇒職務充実⇒職務拡大⇒習熟・・・
と育成が進めば順調ですが、
その先には何があるでしょうか?

それは「人を育てる」という経験です。

誰かを育成するということは
育成する側にとっての新たな学習・成長です。
「教えて学ぶ」ということです。

この「教えて学ぶ」には、2つの側面があります。

(1)教え方を学ぶ
やって見せたり、説明したり、助言したり・・・
育成という行為は自分が身につける場合とは異なる体験であり、
異なる意識、異なるスキルが求められます。

・仕事によって教え方を変える。
・相手によって教え方を変える。
など、ティーチングのコツや

・相手の話を傾聴する
・相手の考えを引き出す
など、コーチングのコツ

を身に着ける必要がありますし、

・相手が自分で学ぶよう誘導する。
・うまくいかなかった時に乗り越えられるよう働きかける。
など、「教える」ことにはたくさんの視点があります。

研究しながら実践し学んでいくことが大事ですね。

(2)教えて気づいたことを業務に活かす
教える過程で、新たな気づきを得ることがよくあります。
仕事の改善点の発見がその典型です。
その気づきを大事にし、自分自身が実践し、
新たな成果につなげ、
自分自身がさらに成長することが期待されます。

自分自身についての気づきが得られることもありますね。
教えることなど、好きでもないし、得意でもない・・・
と思っていた人が
教える相手に真摯に向き合っていく中で
やりがいを感じるようになるのは少なくありません。

逆に、教えることが得意、と思っていた人が
苦戦することも珍しくないことです。

教えることは、自分自身に向き合あうこと。
気づきを得てから、それをどう解釈し、
今後の行動にどう生かしていくかが
一番肝心なことです。

人材育成においては
習熟、職務拡充、職務拡大が基本ですが、
「教えて学ぶ」という体験は非常に大切です。

自分が習熟したことは、誰かに伝える・・・
これだけでも「教えて学ぶ」という行為になります。

「誰もが、誰かに、何かを、必ず教えることができる。

皆さんの中には、
“教えることが自分の学びになった”
という体験を持っている人は
たくさんいらっしゃると思います。

では、
「教えることは、教える人自身の学びであり、成長である。」
という組織文化、組織習慣は根付いているでしょうか?

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