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RPA とは何なのか(私見) #2

 引き続き、RPA とは何なのかについてお話していきます。前回の記事はこちら

 前回は RPA の定義、目的、現場での捉えられ方という話をしました。経営層は推進役と現場に目的をきちんと伝え、推進役と現場は協力したり対立しながら RPA を実現しようとし、失敗する。そこには何があるのでしょうか。

 経営層 vs 現場、現場 vs 推進役、推進役 vs 経営層という三つ巴を解いていくと、感情的分断とでもいうべきものが失敗の原因として見えてきます。

■ 経営層 vs 現場

 経営的には正しい論理が、現場では尊重されないということは往々にしてあるように思えます。この2軸での言い争いはだいたいはこういう感じです。

・ 経営層は IT とかいうけど、現場はそんなに単純じゃない
・ 経営層は現場の感情をわかっていない
・ 現場は市場や経営の状態をわかっていない
・ 現場はITリテラシーが低すぎる

 経営と現場のレイヤーの乖離は、資本主義があったときからずっとある、歴史的なものです。目の前に迫る納期や期限に対してとにかく手を動かさなければいけない現場。その現場の状況はわかっていつつも、売上目標を強いなければいけない経営層。意見が合うことはまれでしょう。

 経営層や管理職についているというだけで牙を向く現場の人。逆に、現場の人間を低い視座の連中であると見下す経営層や管理職。よくある構図です。

 このような対立や分断を、このシリーズでは感情的分断と仮に呼ぶことにします。上記の2軸はわかりやすいですよね。経営層と現場のベクトルが違う。だから感情的に分断が生まれる、というわけです。

これでは「業務の自動化と会社の仕組」両方あって RPA という定義は満たせそうに有りません。

■ 現場 vs 推進役

 では同じく、現場側ではどうでしょう。経営層との対立はともかく、同じ現場同士なら感情的分断はない…なんて思っていらっしゃる方はいないでしょう。

 致命的な分断が発生するのはこの対立軸です。役割による対立ではなく、RPA に対する理解度の違いからくる分断がひとつです。

新しい仕組みを活用せずとも仕事は進む。新しいことを覚えなくても仕事は確実に進む。何故新しい仕組みをわざわざ入れて、安定した既存の運用を壊すのか。理解ができない。

 という勢力と

RPA を用いれば、単純業務をなくすことができる。早出や残業も減るだろう。忙しいからと後回しにしてきた「やらなければならない」仕事に着手することだってできる。時代は DX。何故古いやり方に甘んじているのか。理解ができない。

 といった感じでぶつかり合うのでしょう。

 推進役は、業務を分析し、どのあたりをどう自動化すれば効果的なのかをある程度理解している。現場は、それがそもそもイメージできない。その理解度の差が分断を生むというのはは容易に想像できるでしょう、が、それは表層的なもので、解決ができます。

 もう一歩踏み込みましょう。

 推進役の未熟さから、現場が大事にしてきたノウハウを「単純作業」と評価してしまい、自動化できますよなどと言ったらどうなるでしょう。「推進役は何もわかってないくせに偉そうに我々現場の足を引っ張る」という感情が生まれます。

 一方、現場が RPA に対してアレルギーのような反応を見せ続けたらどうなるでしょう。「ああ、この会社はまだまだ昭和だ。RPA なんて無理だ」という感情が生まれます。

 わかりやすく書くと以下のような構図でしょう。

「現場のオッサン・オバサン」 vs 「推進役の若造」

 若造とは限りませんけどね。先述した「RPA 等に対する理解度の違い」とは逆に業務に対する理解度の違いも分断に一役買っています。

 まとめると、現場 vs 推進役では「お互いの業務に対する理解度の違い」が感情的分断を生んでいるということになります。

■ 推進役 vs 経営層

 ここにはすべての分断の要素が盛り込まれます。

 経営者 vs 現場 のときの「経営層と現場の文化が混ざっていない」に加えて、現場 vs 推進役のときと同様に「お互いの業務に対する理解度の違い」も生まれます。

 加えて「信頼関係の崩壊」から分断が発生します。

 推進役が溜める不満の代表例は下記2つ。

・ 経営層に依頼されて推進役になったのに、フォローしてくれない
・ 自ら手を上げて推進しようとしているのに、経営層が邪魔をする

 経営層が溜める不満の代表例は下記2つ。

・ できるというからやらせてみたが効果が全く出ない
・ クラウド系の、よくわからないサービスの稟議ばかりが届く

 本来なら手に手を取り合って会社の仕組を創っていくペアであるはずなのに、こういった感情的分断が生まれてしまう。最悪、推進役だけが知見を溜め込み転職してしまうなんてのがその典型例です。

■ 感情的分断は何故起こったか

 各軸における分断の中でも「感情の分断」を中心にお話してきました。改めて聞くまでもなく、働く上では感情の分断は起こって当たり前です。

 社会人なのだから、そんなことは織り込み済みで働くしか無いじゃないか。そもそも、感情的分断の何がそんなにまずいというのか ― について話す必要はないでしょう。組織において、感情のもつれというのはなかなかに厄介です。組織崩壊のきっかけともなりかねません。

 問題は、それがなぜ起こったか、です。

 思い返してみましょう。発端は「RPA を取り入れようとした」ことでした。

 つまり、RPA 化しようとすると組織内で感情的分断を起こして失敗し、組織そのものの崩壊を招くことがある、ということです。

 業務効率を上げ、会社を強くするはずだったのに、逆に会社そのものが崩壊する? RPA とは一体何なのでしょうか?といったところで、本筋に戻ってきました。

 とはいえ、納得されてない方もいらっしゃるでしょう。そうですよね。これまで話してきた分断が、発生しないことは十分にありえます。推進役がうまくやってくれれば波風も立たないかもしれません。

 なので、次回は、RPA 化を進める方法と気をつけるべきことについてお話をしていこうと思います。

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