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続・暗黙知と形式知~生成AI時代に必要な学びの素養~

こんにちは。HRDX & Co. 代表の ノノミヤ チヒロです。

私は教育の専門家でも、AIの専門家でもなく、人事領域DX・人材育成の一実務者にすぎないのですが、これからの生成AIの時代に、私が必要だと考える学びの素養についてお話させてください。

ここ数か月、自分自身でもイラスト作成や文書生成などで生成AIを活用しながら、生成AIの時代に必要な学びってなんだろうということを、ずっと考えていました。

様々な書籍を読むと、「AIに適切に指示を出せる力」「AIの出力を評価できる審美眼」が大切だという主旨の論説をよく見かけます。私もその通りだと思うけど、もう少し自分の内なる言葉で表現したいなと思いました。

いろいろ思索を重ねて、私なりに言語化したのが、以下の図式です。
暗黙知と形式知のSECIモデルとの対比で考えてみました。

※B、T、Cのラベルは、いわゆる「BTC人材」の各要素に当てはめています。
 BTC = Business × Technology × Creative
 https://honto.jp/netstore/pd-book_29834523.html

①~④がSECIモデルに対応していて、それぞれ具体的を挙げて解釈すると以下のとおりです。

①本質的なニーズ・困りごとを、デザイン思考などのフレームワークで言語化する(暗黙知→形式知)
②生成AIやデジタルツールで、ニーズ・困りごとに対応する。AIやデータ分析で新たな知見を得る。(形式知→形式知)
③完成したシステムをデザインのよい良いUI/UXでユーザーに使ってもらう。得られた知見を良いデザインの資料でわかりやすくプレゼンして伝える(形式知→暗黙知)
④ユーザーが得た経験、プレゼンの聞き手が理解した内容を、社会や組織の中で伝承して共有していく(暗黙知→暗黙知)

この暗黙知・形式知のサイクルを、高い質で高速に回していくために、上記のB→T→Cサイクルにそった学びが必要だと思います。

思考フレームワーク、生成AI・デジタルスキル、デザイン・プレゼンといった個別の分野の学びにフォーカスするより、これらの学びを俯瞰して、全体として見る視点が大事だと思います。料理でいうと、個別の工程(玉ねぎの皮むきや魚の三枚おろし)ではなく、料理のコースを完成させるための全体工程を考えるということですね。

思考力を鍛えるというのは、遠回りなようでも、長い目で見た時、これからの時代には、こういった学びの素養は絶対に必要だと思う。一見、高尚なように見えるけど、前提のITの知識/スキルの差がでにくいので、むしろフラットに学べると思う。

思考のフレームワークというと難しそうだけど、例えば行動経済学のナッジ・スラッジだったら、「子供に叱ったりルールを押し付けたりしないで、自ら勉強したり片づけをしてもらうには、どういうナッジが良いのだろう」とか、「ついつい後回しにしがちな面倒な家事をやるには、どういうスレッジを取り除けばよいのだろう」とか日常の中にも、考えることはたくさんあります。

職場でDXを進める上でも、いきなりツールを導入したり、手を動かしたりするのではなくて、ナッジとスレッジ、発散と収束、ユーザー視点、暗黙知と形式知、・・・など、ここ3回の記事で触れてきたような思考を、考えることが重要だと思います。要するに、問題解決の第1STEPの、あるべき姿を考えることをしっかりやりましょうということですね。

デジタル技術やAIとどう向き合うかというより、私たち自身が、人類が積み重ねてきた叡智や感性とどう向き合うかという、内面の問題なんだと思う。なんとなく不便だと感じているもの(行動経済学のスラッジ)ってなんなのか?どういう時に人はうれしさを感じるのか(デザイン思考の共感・理解)ということを突き詰めて考えるということですね。

先日、姪っ子に会いに行ったときに、アンパンマーチが流れていて「何が君の幸せ なにをして喜ぶ?」って歌が流れていて、「これってデザイン思考そのものでは!?」と思いました(笑)

このコラムでツラツラと書いてきたことって、一人で考えている時より、心理的に安全な場での、なにげない対話から答えが見つかることが多いんですよね。本当に根源的な課題感、本質的なニーズは、堅苦しいまじめなビジネスライクな場ではなく、脳がリラックスした発散思考の状態にある時にこそ、言語化できるのだと思います。

だからこそ、学びのコミュニティで、みんなで対話して一緒に考えたい。それこそが「みんなでつくるDX」の大切にすべき精神だと思います。

知識やスキルを付与する場としての研修ではなく(そういう知識やスキル自体は世の中にいくらでもありますし・・)、対話と共創の場としてのディスカッションやワークショップを場を設計すること、それによって、これからの時代に必要な「しなやかな知性と感性」をみんなで身に付けること、これが重要なことかと思います。そのために知恵を絞ることは、本当に教育者としての冥利に尽きる幸せなことです。

<参考データ>
 シンニホン:夢×技術×デザイン
 https://honto.jp/netstore/pd-book_30122143.html#productInfomation
 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouikumirai/dai1/siryou7.pdf

 BTC人材:Business×Technology×Creative
 https://honto.jp/netstore/pd-book_29834523.html
 https://note.com/sleepyhead_blog/n/n9fc5ce8340ec

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

HRDX & Co. 代表 ノノミヤ チヒロ

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