成功はすべてコンセプトから始まる

■著書
成功はすべてコンセプトから始まるー「思い」を「できる」に変える仕事術
著者:木谷 哲夫

■なぜコンセプトが必要なのか

朝から晩まで一日中動き回って、自分なりに頑張っているのに、なかなか成果が出ない人がいる一方で、一見普通そうに見えるのに、大きなことを成し遂げてしまう人もいます。

成果を出す人と、そうでない人との差は何か。
著者いわく、「何か」の実現のために本当に集中しているのかどうか、らしいです。

出来たときのことを考えると、ワクワクする。実現すれば、良いことが続いていくはず。達成できるまではいろいろな困難があるかも知れないが、何とか頑張ってみよう。そういう気持ちにさせる、将来のあるべき姿が「コンセプト」なのです。

コンセプトは、既存の知識や経験などの積み上げや、ロジカル・シンキングだけでは見つけることができません。つまり、今までとは違う「新しい仕事のやり方」を身につける必要があります。

その仕事のやり方とは、「コンセプトからスタートし」「決定してから細部を詰める」、もしくは「行動してから考える」方法です。

コンセプトという言葉を直訳すると、「概念」だと辞書に書いてあります。しかしそれでは何のことかわかりません。「ビジョン」のように大まかなものではないし、「アイデア」のような、単発なものとも違います。

「コンセプト」とは何なのか。

それは、「自分が実現したいことの包括的なイメージ」です。
もし実現すれば、大きなインパクトをもつもの。そんな面白く、ワクワクする「あるべき将来像」であり、自分が本気になり、心の底からコミットできるものです。

■実現可能性より面白さ コンセプト・ドリブン思考

良いコンセプトとは、チャレンジしがいがあるもので、実現すれば大きなインパクトをもつものです。面白く、ワクワクするようなものでなければ、良いコンセプトとは言えません。

とはいえ、いくらインパクトがありそうに見えても、まったく実現できないものでは、ただの妄想になってしまいます。絵にかいた餅を振り回したところで誰も相手にしてくれません。

「インパクト」と「実現可能性」の二つの軸で、考えるとコンセプトありき(コンセプト・ドリブン)のアプローチと、実現可能性ありき(実現可能性ドリブン)のアプローチの全く違う二通りがあります。

本書では、コンセプトありき(コンセプト・ドリブン)のアプローチを提唱しています。

大切なことは、実現できるかどうかに縛られないことです。予見を持たず、インパクトを優先して、あるべき姿、到達点を鮮明に描き切ることに集中します。

明確なゴールが描けたら、そのあとで、実現段階で直面するさまざまなハードルを想定し、問題を解決していけばいいのです。

インパクトが大きければ大きいほど、そのコンセプトを実現可能かどうかという点から見れば、大きな疑問符がつきます。しかし、そのぶん確実にチャレンジのしがいがあり、困難を克服した暁には、競争相手に圧勝できるというわけです。

非常に面白そうに見えるのに、これまで誰もやっていなかったことには、できない理由がちゃんとあるものです。しかし、かつてできなかったからといって、いまもできないとは限りません。技術は進化していますし、環境も変わっています。

大切なのは、それが本当に実現したらどうなるか、です。顧客や市場の目をわっと引くかどうか。その目的に向かってみんなで走りだしたくなるかどうか。インパクトの面で最初から「ひよって」しまっては、何の感動も生まれないのです。

「時の宿しみれ」や「プリクラ」も、コンセプト・ドリブンの思考から生まれたものと本書で実例と書かれていました。
どんなコンセプトも、現実性を高めれば高めるほど、面白くなくなります。これを本書では「インパクトと実現可能性のトレードオフの法則」と呼んでいました。

コンセプト自由競争の時代、生き残りの勝負においては、「ひょっとするとうまくいくかもしれない。うまくいった場合には、すごいインパクトがはるはずだ」というものが、「インパクトが小さいが、現実的」というものよりも圧倒的に有利です。

なぜなら、いまの時代においては、面白いコンセプトには、お金も人も集まるからです。逆に人がいる、お金がある、だけでは勝てません。

重要なのは、うまくいった場合を、カラフルに鮮やかに描き切ることです。現実性を突き詰めていくと、面白さはどんどん失せていきます。

「できないことは言わない」というのは誠実さであり、日本人の美徳です。しかし、面白いコンセプトにどんどん人やお金が集まるような世の中になってくると、面白さを極限まで発想するプラスαの力が必要になる、ということです。

■良いコンセプトを生む クリエイティブ思考の技術

良いコンセプトとは、その実現のために、自分が、意志力を総動員して、集中して努力できるものです。

そのためにもまずコンセプトとの持つパワーを理解するのがステップ1です。そしてステップ2は「アイデア」をつくることです。

さて、アイデアだしというと、どうも苦手・・・と苦手意識を持つ人も少なくはないでしょう。「そもそも自分には面白いアイデアは出せない」「どうすればすごいアイデアを思いつけるのか」という悩みがでてきます。

しかし、本書では、アイデア出しの段階でハードルを上げすぎることが、一番ありがちな失敗パターンと言っていました。

覚えておくべきは、アイデアは、あくまでコンセプトの一部にすぎない、ということです。アイデアそのものは二番煎じ、三番煎じだったとしても、開き直って徹底的に実現して勝つことも、立派な戦略となります。

「誰かがすでに取り組んで、失敗したもの」を、失敗した理由を把握し、コンセプトを立て直してうまくひねることができれば、成功するかもしれません。

コンセプト自体は他人からの借り物であっても、本気で取り組めば自分のものにできます。むしろ、「自分だけの考え」「自社だけのオンリーワン技術」「オリジナリティ」にこだわりすぎると、コンセプト立案プロセスの最初で足が止まってしまい、前に進めなくなってしまいます。

とはいえ、単なるパクリでは「やる気」が起きないというのもまた、当然です。どういう発想をすれば、自分が努力するに足る、ワクワクするアイデアを発想できるのでしょうか。

クリエイティブな能力とは、「既存のものの組み合わせ」により面白いものが発想できる能力です。

まったく新しいことをゼロから生み出そうとするのではなく、いかに自分なりの新しい組み合わせを発見するかが大事です。


■組み合わせ能力を鍛えるポイント

組み合わせる能力を高めるためにはいくつかのポイントがあります。

①毎日の生活から自分なりの一次情報を蓄積する
秋元康さんは、過去に体験した、一見何の繋がりもない記憶の引っ掛かりが、頭の中で結びついて発想が生まれる、と言っています。
他の人が見過ごすようなことに気づき、自分の観点で「面白いな」と思って記憶に蓄積するのです。

人はそれぞれ、着眼点が違います。それぞれの個性で、自分に関心のあるもの、面白いと「主観的に」感じるものを「選択的」に見て、記憶に仕舞い込む。それがあとになって役立つのです。

そのために、一次情報に身をさらし、雑多な情報の洪水の中から自分の気になるものを直接ピックアップすることが不可欠です。

②自分があまり知らないことは、情報の蓄積を集中的に行う
仕事となれば、面白いと思うものだけではなく、あまり詳しくない分野について集中的に情報を収集する必要が生じることもあります。そこで役に立つのが、1940年刊行の超ロングセラー『アイデアの作り方』です。
著者ジェームス・ヤングは本書の中で、「データをまず調べて熟成することがポイント」と述べ、発想のための5つのステップを紹介しています。

1、データ集め
2、データの咀嚼
3、データの組み合わせ
4、ユーカレ(発見した!)の瞬間
5、アイデアのチェック


この中で、手を動かして作業するのは「1、データ集め」だけです。
自分のあまり詳しくない分野では、集中的に調べたものを、しばらく意識下に沈殿させます。自分なりに熟成させ、過去の自分の体験や独自の視点を組み合わせることによって、新しい付加価値を生み出すというわけです。

③シンク・ビックで筋肉を鍛える
いったん筋肉で覚えたものは、ずっと身体に残っています。これを「筋肉記憶」といいます。ビジネスでも、筋肉記憶をつくることができます。自分が稲盛和夫さんならどうするだろう、ビル・ゲイツならどうするだろうと、大きな視点で「シンク・ビック」することの効果は絶大です。

どんな組織でも、自分がもしトップだったらどうするか、真剣に考えてみるのはいい特訓となります。
また、「人の真似をする」ことは練習するのに最高の方法です。特に、自分が目指すレベルの人を真似るのは、いい筋肉記憶をつくるベストな方法です。

④普段を違う環境をいかにつくるか
良いコンセプトを出すためには、「ロジカル」「客観」だけではなく、「発想の飛躍」「ひねり」を生み出すクリエイティブ思考が必要になります。
その能力を高めるためには、組み合わせるネタの独自性と数が重要です。だから、自分の独自の経験や関心で蓄積した記憶、引き出しの数の多さが勝負になります。そして、引き出しの中から組み合わせを発想するための「視角」「刺激」が重要になります。

平社員メンタリティに漬かった人は、これまでの自分と違うことをする、とうことが大切です。

■まとめ

先日の読書レポートで、なによりもまずコンセプトが重要というのは理解できましたが、そもそもコンセプトとは何かというものがいまいち分かっていませんでした。

クリエイティブな思考がないと思っており、アイデアなんか出てこないということを思いながら本を読み始めましたが、ゼロから生み出すのではなく既存のものを組み合わせ発想することなら自分でもできそうです。

しかし、どちらかというと実現可能かという実現可能性ドリブンで考えてしまう傾向にあるため、まずはそこから変える必要があると思いました。

これは今実現可能なのか、ではなく実現するにはどうすればいいのかという思考にそこに対して努力をしなければ、ありがちなもので競争にも勝てません。

シンク・ビックを鍛えるとポイントにありましたが、「社長ならどうするか」「自分が組織のトップだったらどうするか」ということを常に考えていきたいと思います。

採用は組織をつくると同じと先日のコンサル時に言われましたが、このコンセプトの考えは組織にも通じると本書でもありました。



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