仮説思考

■書籍の紹介
仮説思考
著者:内田和成

■はじめに

現在、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)を略して、「VUCAの時代」と言われるようになったが、「企業の行く末」はもちろん「組織の在り方」「自分自身のキャリア」など一寸先の未来すら読みにくい時代と言われています。

こうした時代には「今、目の前に見えるもの」から物事を考えることではなく、「その背景には何があって」「どのような法則が働いて」「どのような未来になりうるのか?」を見抜く必要性があります。

そして、「絶対的な正解」は存在しません。
本や、先人たちの経験や知見は、情報や知識としてとても重要なものですが、それでも全くその事象と同じことが起こるということは少ないと思います。

今までは、「あれをしろ」「これをしろ」と目の前に見える物事が主に与えられてきましたが、今後はもっと自分で未来を予測し仮説をたて、判断行動していくことが必要になると思ったので、本書を選定しました。

■仕事が3倍速くなる「仮説思考」とは?

「仕事をもっと早くしたい」
そう願う多くの人が、資料を速読したり、ツールをつかってデータを早く集めたり、レポートをまとめたりといったことに取り組みます。
つまり仕事を速くするために、作業の効率をアップさせるのです。
もちろん、多少の成果は出せるでしょう。しかし、作業のスピードを上げるのには限界があります。今の3倍の速さで仕事を終わらせろと言われても、無理なのです。

ではどうすれば今の3倍のスピードで仕事ができるようになるのか?
答えは単純です。仕事の量を3分の1に減らしてしまえばいいのです。

たとえば、3つの作業があるとすれば、そのうち2つをやらないと決めてしまう。こうすることで、作業のスピードを上げなくても、これまでの3分の1の時間で仕事を終えることができます。

ここで重要になるのが、何を選び、何を捨てるのか決定することです。どの作業を行い、どの作業を行わないかの意思決定をすることが必要になってきます。

そこで使うのが、「仮説思考」です。これまず答え(仮説)から考え、それを分析して証明する思考法です。

仮説思考は、手元にある情報のみで仮の答えを出し、その答えの証明に最低限必要な情報収集と分析作業だけを行う思考法です。判断材業が少なくとも先に答えを出してからそれを検証する。このことで作業量を少なくして、仕事のスピードを上げるのです。

これからは、どんな立場の人であっても、個人で意思決定をしなければならない場面が増えていくでしょう。そんなときに、この仮説思考を身に着けていれば素早く正しい判断を下すことができます。

■結論を出すには多くの情報が必要なのか?

何かの仕事を始めようとするとき、多くのビジネスパーソンはまず情報収集とその分析から始めてしまいます。
「どの地域の、どのお店で、どんな客に売れているのか?」「売上ランキングトップ5の商品は何か?」「どのような機能が付いたものが支持されているのか?」
このようなことを調査するために、膨大な情報を集めて、細かく分析しようとするのです。特に日本の企業の多くは、調査をすると、もっと情報がほしい、より正確な数字がほしいとう欲求が湧いてきて、際限なく調査や分析をしようとしてしまいがちです。

しかし、どんな仕事にも締め切りがあり、人手だって限りがあります。そしてビジネスには時機(チャンス)というものがあります。そのチャンスを逃してしまえば、どんなにいいアイデア・解決策がでても、成功することはありません。

何事にも慎重な日本人は、情報収集や分析を重視し、意思決定を先延ばしにしがちです。とりわけ、昔から勉強や仕事をコツコツ取り組んできた人ほど、そのような傾向にあるようです。

■情報が多くても正しい判断はできない

そもそも、なぜ情報収集を徹底してしまうのか。それは情報が多ければ多いほど正しい意思決定が下せると思っているからです。

しかし、情報が多ければ正しい意思決定が下せるというのは、そもそも誤りなのです。

例えば、あるライバル会社の商品が売れているために、同じような商品を開発することを考えたとします。そのライバル社や他社の商品の分析、市場の動向といった情報を集め、満を持して発売します。
しかし、結果はライバル企業の商品は売れ続け、自社の商品は全く売れなかった。あるいはこちらが新製品を出すころには、ライバル社が次の新製品をだし、そちらにお客様が流れてしまう。徹底的に調査・分析をしたにも関わらず失敗に終わったという経験は、社会人であれば同様のことはあるかもしれません。
つまり、どんなにたくさんの情報を集めても、それが成功を導くとは限りません。

それにも関わらず、情報収集や分析を絶対視し、その作業に没頭する。そのような人は、仮説思考ではなく網羅思考で物事を考えているのです。網羅思考で、情報収集・分析に終始すると、すばやい意思決定ができません。どれだけ時間があっても足りなくなってしまいます。

■仮説思考で答えを最速で導く

情報収集・分析ばかりをしていると、選択肢ばかりが広がってしまいます。A案かB案かで迷っていたのに、新たな情報を得たことでC案も検討することに。結果いつまでたっても意思決定ができないのです。

仮説思考は、十分な判断材料もそろっておらず、分析も進んでいない段階で、先に仮の答え(仮説)を出していきます。意思決定する際は、経験と思いつきが組み合わさった勘を使います。

「当てずっぽうなのか?」となりますが、極論を言えば当てずっぽうです。そして、出した後にそれが合っていたかどうかの検証をしていきます。

しかし、仮説思考は、普段の生活では誰もが使っているものです。「雨の日ならば話題の店でも空いているだろう」という仮説を立てて店に向かったり、「恋人ができないのは太っているせいだ」と仮説を立ててダイエットを始めてみたり、、、まず仮説を立ててから、それが合っているかどうかを検証します。

仮説を立てる際は、経験と思いつきが組み合わさった勘を使うといいましたが、ではどんなときに仮説が思いついているのでしょうか。

もっとも多いのは、誰かと話しているときに思いつくというものです。あらかじめ考えていたことに対して、ディスカッション相手の発言に刺激されて閑雅がブラッシュアップする、もしくはインタビュー途中に全く考えてもみなかったことを見聞きし、棚からぼたもち的に新たな考えを思いつくというものです。

なお、話を聞く際ですが、適切な質問ができるかが鍵となります。インタビューなどで大切なことは相手の本音を聞き出すこと。その際、掘り下げて質問を重ねていくのが効果的です。深堀する質問を繰り返し、相手の本音を聞き出すスキルを磨くことも大切です。

仮説を立てたら、今度は最低限必要なアンケートや情報収集・分析をしテストマーケティングを行います。そして、仮説が当たった場合は、具体的な打ち手や解決策に進化させていくのです。進化させるときは、検証の際に得られた情報や分析結果、また、新たな気づきなどを使います。

■仮説→検証のサイクルを素早く回す

最初に立てた仮説が的外れだった。仮説思考を使い始めのときは、このようなことがよく起こります。するとどうなるか。仮説思考を諦めて、網羅思考に戻ってしまうのです。

「結局間違えて、考え直すのならば、網羅的にすべての選択肢を考えたほうが速いのではないか?」という意見があります。
しかし、この指摘は間違えです。

プロの棋士は、80手くらいある指し手のうち、はじめに多くの指し手を切り捨てて、3つくらいに絞り、そこから手を選んで指していくといいます。もしこの3手がよくなければ、他の3手を選びそこから選んでいく。たとえば考えた7手目で指せたとしても、80の手をすべて分析するより、早くいい指し手を選びだすことができます。

はじめに、これが根本的な原因だと思うものを選び出し、それを検証し、違っていると分かったら、別のものを選び直していく。

仮説を幾度が選び直したところで、全部を網羅的に検証するよりは、時間も労力もかけずに済みます。仮説が間違っていても、選択肢のひとつが消えるわけなので、仕事は前進するという考えです。

なぜ失敗したのか、なぜうまくいかなかったのかを考え、仮説の一部を変えてみる。もしくは全く別の仮説を立てる。そのように試行錯誤していくことが、仮説思考です。仮説は合っていても間違っていても進化させていくものです。

仮説を修正・進化させるには、仮説と検証までのサイクルタイムを短くし、その分多く回していくのがポイントです。
数か月に一度しか仮説・検証しない人と、毎日仮説・検証している人では、そこから得られる知恵、ノウハウ、スキルに差がでてきます。

■論点思考で真の問題を探す

一流のコンサルタントは論点を見つけ出す能力に優れています。
「論点」とは、解くべき問題のことを指し、この論点を設定するプロセスを「論点思考」と呼びます。そして、問題の分析は部下に任せても、この論点設定だけは、自分で行う人が多いそうです。

論点設定は、問題解決のプロセスの上流に位置します

仕事で問題解決をはかる際、まずは問題をいくつかの仮説思考でピックアップし、解決すると効果があるか、すばやく解決できるのかといったことを考えながら、解くべき問題(論点)を確定していきます。

論点を確定したら、その解決策を仮説思考で考えます。解決策を考えたら、それを検証して確かめ、証明されたら、より具体的な施策(解決策)を打っていきます。検証の結果、証明されなかったら、別の施策を考えます。

なお、解決策を検証しているとき、そもそも設定した論点が間違えていることに気づき、論点設定を再度やり直すことも起こります。問題解決のプロセスはいったりきたりしながら進めていくのです。

■仮説思考の鍛え方

仮説を立て始めたころは、的外れな仮説も立ててしまいがちです。しかし、間違えた仮説を修正したり、さらに進化させたりを続けていると、筋のいい仮説を立てられるようになります。最初から進化した仮説が立てられるようになるのです。

これは、脳内でいつの間にか、仮説・検証をすばやく行ってしまうことを意味しています。仮説を立て、検証し、その結果、修正したり進化させる。その一連の流れが、無意識のうちに脳内で一瞬に行われるようになります。

このような思考になるためには、常に、「だから何?」「それはなぜ?」と問いかけることを心がけるようにします

この「だから何?」「それはなぜ?」は以前レポートにも書いたサイコパス脳にもつながってきます。

■まとめ

冒頭に記述しましたが、「今、目の前に見えるもの」から物事を考えることではなく、「その背景には何があって」「どのような法則が働いて」「どのような未来になりうるのか?」を見抜く必要性が今後さらに重要になってきます。

今までは、こういう人を採用できたらいい。研修はこういうのをすればいいいとある程度枠があった中で業務をしていましたが、今後はそれでは今の現状と何も変わず作業人から抜け出せません。
また、決まった枠の外に飛び出すこともできないと思いました。

新しい働き方コースができたにも関わらず、9割以上の人は今までと同じコースを選択しています。それがいい悪いではありませんが、あんなにいろいろ意見をいっていたのになーとも正直思ってしまいました。

来期から新しいコースで挑戦することにしますが、ここでの振る舞いが成果が今後の組織の方向性に結構影響してくるのではないかと思っているので、
それこそ、自分がこういう働き方をしたら、こういう作用があるのではないかと仮説を立てて行動していこうと思います。

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