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5分で分かる子宮頸がん 22「HPVワクチンって本当に有効なの②?」

感染すると子宮頸がんを引き起こすHPV(ヒトパピローマウィルス)ですが、HPV自体には200種類以上の型が存在します。ただその全てが子宮頸がんを引き起こすわけではなく、日本で主に子宮頚がんを引き起こしているのは次の6つの型になります。 ¹

表1  日本で子宮頸がんの原因となっている主なHPV型とその割合

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日本で承認されているHPVワクチンは「16、18型」に対して有効な2価HPVワクチンと「16、18、6、11型」に対して有効な4価HPVワクチンの二つです。
では実際にHPVワクチンはどのくらい有効なのでしょうか?
今回の記事では2022年に大阪大学が行った、「HPVワクチンの積極的勧奨の停止による、子宮頸部細胞診異常率の増加」の調査報告を紹介していきます。² 

日本では、2013年6月に厚生労働省が積極的勧奨の一時差し控えを発表し、HPVワクチン接種率は激減しました。積極的勧奨差し控えは8年以上継続され、2000年度生まれの女子は低い接種率のまま2020年度に子宮頸がん検診対象年齢である20歳に達しました。

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図1. HPVワクチンの接種率と生まれ年度(参考文献2より改変して引用)

HPVワクチン導入前世代:~1993年生まれ
HPVワクチン接種世代:1994~1999年生まれ
HPVワクチン停止世代:2000年年生まれ~

本研究グループは、24の自治体(人口合計約1,315万人)より、1989~2000年度生まれの20歳の子宮頸がん検診の結果を収集しました。

「導入前世代」「接種世代」の20歳時の細胞診異常率のから「停止世代」である2000年度生まれの細胞診異常率を予測しそれを実際の検診結果と比較しました。
黒の点線が「導入前世代」から予測した2000年生まれの細胞診異常率
オレンシの点線が「接種世代」から予測した2000年生まれの細胞診異常率

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図2. 生まれ年度別の子宮頸部細胞診異常率およびHPVワクチン接種率
(参考文献2より改変して引用)

結果、「停止世代」
「接種世代」の傾向から予測される率 約4%(図2オレンジ線)よりも高く、
「導入前世代」の傾向から予想される率 約5%(図2黒線)に近いことが明らかになりました

→まとめ
前回の記事【5分で分かる子宮頸がん 21「HPVワクチンって本当に有効なの①?」】ではHPVワクチンの健康被害の有無について紹介いたしましたが、今回の記事ではHPVワクチンを接種した世代接種していない世代の細胞診異常率を比較しました。
結果、厚生労働省の積極的勧奨により、HPVワクチンを積極的に接種した世代は細胞診異常率が低いことがわかりました。先日厚生労働省は積極的勧奨の再開を決定いたしました。この機会に皆さんも接種を考えてみては如何でしょうか?


参考文献
1:Azuma, Y., Kusumoto-Matsuo, R., Takeuchi, F., Uenoyama, A., Kondo, K., Tsunoda, H., Nagasaka, K., Kawana, K., Morisada, T., Iwata, T., Aoki, D., & Kukimoto, I. (2014). Human papillomavirus genotype distribution in cervical intraepithelial neoplasia grade 2/3 and invasive cervical cancer in Japanese women. Japanese journal of clinical oncology, 44(10), 910–917. https://doi.org/10.1093/jjco/hyu112
2:Yagi, A., Ueda, Y., Ikeda, S., Miyagi, E., Sekine, M., Enomoto, T., & Kimura, T. (2022). The looming health hazard: A wave of HPV-related cancers in Japan is becoming a reality due to the continued suspension of the governmental recommendation of HPV vaccine. The Lancet Regional Health–Western Pacific, 18.








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