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5分でわかる子宮頸がん23「HPV感染が子宮頸がんを引き起こすメカニズム」

こんにちは
いつもnoteをご覧いただきありがとうございます。今回はHPV(ヒトパピローマウィルス)が感染後、どのように子宮頸がんを引き起こすかを解説していきたいと思います。専門用語が多くなってしまいますが、分かりやすく解説できるように頑張ります!

・子宮頸がんとHPVの発見

子宮頸がんは古くから研究されており、1970年代には性行為経験の有無が関与していることがわかっていました。しかしその具体的な原因はわかっておらず、ヘルペスウィルス(性器やその周辺に水疱などが形成される別の疾患の原因ウィルス)が原因だと信じられていました。しかし1983年にドイツのHarald zur Hausen 博士が子宮頸がんから、HPV16型ならびに18型のDNAを発見したことで、子宮頸がんの原因ウィルスがHPVと判明しました。(後にこの功績によって、彼はノーベル賞を受賞)

・HPVについての基本的な情報

このセクションはHPVについての基本的な情報を羅列しています。HPVについて詳しく知っている方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。

HPVはこれまでにゲノム配列の相同性に基づき約120種類以上の遺伝子型が見つかっています。それらは、疫学的にがんと関連が示されている高リスク型(16, 18, 30, 31, 33, 35, 45, 51, 52, 58 型等を含む約 20 の型)と、尖形コンジローマ等の良性病変形成にとどまる低リスク型(6, 11 型等)とに大別されています。子宮頸がんの 90 %以上からは、特定の高リスク型 HPV DNA が検出されており、そのうちHPV16型が約半数を占めています.
したがって子宮頸がんのほとんどが特定のHPVの型に由来していることがわかります。

2:『HPVゲノム複製の制御機構と発がん』

・HPV感染から子宮頸がんまでの流れ

女性の50%~80%が生涯に一度はHPVに感染すると言われています。しかしその大半は免疫によって自然治癒し、通常約1年以内にウィルスは排除されます。
一方で感染者の約10%では3年以上の持続感染が成立し、さらにその一部の感染者は数年から数十年の歳月を経て子宮頸がんに進行すると言われています。
その過程を下図1に示しました。

図1 HPVの感染から子宮頸がんまでの流れ

図1に示したように、大部分のHPVは宿主の免疫応答により排除され自然治癒します。HPVの持続感染が成立するとCIN1(軽度異形成)と呼ばれる微細な異形成が進行します。
CIN1まで進行した一部の細胞では、HPVのDNAが染色体へと組込まれていき、CIN2(中等度異形成)と呼ばれる次の段階に進行します。 
CIN2からさらに進行するとがん化が進み、CIN3(高度異形成・上皮内がん)と呼ばれる次の段階に進行します。 

通常、CIN1やCIN2の場合は、直ちに治療するのではなく経過観察することが多いです。その理由は、治療しなくても自然治癒(消退)することがあるからです。
一方で、CIN3や、CIN2が長期に渡って遷延する場合では、治療を行います。

HPVに感染しても自覚症状がなく、がん化が進行していくため、定期的に子宮頸がん検診を受けて早期発見をすることが大切になります。

まとめ

今回の記事ではHPV感染が子宮頸がんを引き起こすメカニズムを紹介しました。
孫子の兵法に出てくる有名な一節に「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。大半の女性にとって敵となりうるHPVと子宮頸がんですが、まずはそのメカニズムを知ってみることも大切かもしれません。

参考文献
1:『ヒトパピローマウイルスによる発がんの分子機構』
温川恭至, 清野透, 国立がん研究センター研究所, 2008
http://jsv.umin.jp/journal/v58-2pdf/virus58-2_141-154.pdf
2:『HPVゲノム複製の制御機構と発がん』
中原知美, 清野透, 国立がん研究センター研究所, 2014
http://jsv.umin.jp/journal/v64-1pdf/virus64-1_057-066.pdf

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