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個人商店の行方は

2年前、コロナ禍の始まりのころ。お気に入りだった餅菓子屋さんが店仕舞いしてしまいました。ひばりヶ丘駅前商店街オリンピック通りの『伊勢屋』さん。4月上旬くらいまでは営業していたものの、緊急事態宣言のタイミングで営業しなくなり、そのままに。いつの間にか看板がなくなり、その後閉店した旨の知らせが出たのは1年後のこと。

伊勢屋さんの大福やお団子、水饅頭などに使われていた餡子は少し塩が効いていて薄味。スーパーで売っている添加物まみれのそれとは違って、半日以上経てばお餅は固くなってきます。でも、美味しい。もちろん手作り。お団子100円、大福130円なので、スーパーなどの大量生産品には負けますが特に高いほどでもありません。

ただ、餅菓子をコンビニやスーパーで買うことになれてしまっている人にとっては、伊勢屋さんの餅菓子は「味が薄い」と感じ、食べるのが遅くなれば「硬い」と悪印象を抱くこともあったかもしれません。でもこちらに慣れてしまえば、コンビニやスーパーで売っている餅菓子は「甘すぎ」で「不自然にいつまでも柔らかすぎ」なことがわかります。

ファミレスの食事も味が濃すぎです。不健康な生活をしていて味覚が落ちている人でもわかるような濃い味付けにしていますからね。それらに慣れてしまえば、逆に健康を損ないます。「味が濃すぎるものは、不味い」と、実感をもって思えるようになったのは伊勢屋さんの大福に出会ってからでした。

それ以前にも行きつけの床屋さんとレストランが相次いで閉店し、悲しみの日々を過ごしていたのですが、その悲しみが怒りに変わったのは伊勢屋さんのシャッターが開かなくなってすぐ。4月中旬のこと。

自民党の安藤裕議員(当時)が、党の会合で当時補償がないまま営業自粛を求めた緊急事態宣言について懸念を示したところ、"ある幹部"に「これでもたない会社は潰すから」と言われたことを明かしたのです。

お金に余裕のない個人商店や小企業は献金なんてできませんし、経団連からダイレクトに大金をもらっている自民党が大企業に超甘いことは以前からよく知られています。ただ、一方で自民党は地方に根差している政党でもあるので、大企業がほとんど存在しない地方の個人商店や小企業を守るものだと思っていました。

そもそも「これでもつ企業」とは、現金をため込んでいる企業だけです。日本経済が悪化している原因のひとつに"大企業による現金貯め込み"が挙げられているというのに、なにを考えているのでしょう。コロナ禍に乗じて現金を吐き出させたいという思惑があるのかもしれませんが、それで生き残るのが貯め込み体質の企業ばかりになれば、コロナ禍後も経済は圧縮に向かいます。

結局、おびただしい批判を浴びた政府は緊急事態宣言やその後設けたまん延防止等重点措置において(著しく不十分ながら)補償を行なうようになりましたが、逆に「宣言自体をしたがらない」という姿勢になり現在に至ることはみなさんご承知のとおり。

日本の経済的な衰退については、その原因は様々です。しかし政治は、現金を貯めこむ企業に自力での生存を期待する一方で、政策的には「政治に擦り寄るしかないダメ企業」を延命させることばかりを重視。日本はまるでスーパーで売っている不味い大福のように、考えはどんどん甘くなり、そして保存料まみれになっています。

だからといって、政治に個人や小さなお店・企業を守ってほしいとは思いません。偏った肩入れをしたり、わざわざ潰そうとするのは言語道断なのでやめてほしいですが。

政治について不満があるときは、それをきちんと口にしたうえで、自分にできることを探すのが大切だと思います。少し足を延ばして、たまにでいいから、いつもと違うものを試してみる。ちょっと高くても、ちょっと遠くても、派手な宣伝をしていなくても。

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