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基本情報・セキュマネ合格率急上昇の件

2023年4月より、基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の試験制度が改正され、通年受験可能となりました。
併せて、試験内容も大きく変更となり、難易度がどのように変わるか気になるところでした。

この度、5/17(水)に4月実施分の合格発表と同時に、統計情報が公表されましたので、その内容から読み取れることを整理しました。


合格率の大幅上昇

まずは公表された合格率を紹介します。

2023年4月実施分の合格率

2023年4月実施分の応募者数・受験者数・合格者数は下表の通りであり、合格率は、FE:56.4%、SG:76.2% でした。
(2023年5月実施分は、FE:54.7% SG:78.2%

両試験とも、かつての状況からは考えられないほど大幅に合格率が上昇しました。次章以降で、その理由について考察していきたいと思います。


以前の合格率

参考までに、以前の合格率はどうだったかという点も紹介しておきたいと思います。

おおよそですが、平成21年度〜令和元年度は、FE:20%台、SG:50%台、令和2年度〜令和4年度は、FE:40%台、SG:50%台、となっています。

現在の試験区分になったのが平成21年度、その後コロナ禍の影響もあり令和2年度にPBT方式からCBT方式になり、令和5年度から新制度のCBTという流れです。その変更の度に大幅に合格率が上昇(≒易化)しています。


FEの合格率上昇の要因

FEの合格率上昇について、その要因と思われるものをいくつか紹介します。

試験範囲の縮小

まず挙げられる要因が、科目B試験(旧午後試験)の範囲がかなり狭まったことです。

以前は、大問選択ながら、複数の分野の問題を解く必要がありましたが、現在は実質的にプログラミングだけ(一部セキュリティ)の試験になっています。
そのため、試験対策が容易になり、合格点を取れる受験者が増えたと予想されます。

科目別の得点分布からもその影響が見て取れます。

基本情報技術者試験 評価点分布 令和5年4月分

各科目600点以上が合格であり、科目A合格率は61.44%、科目B合格率は63.84%となり、科目Bの方が合格率が高いことがわかります。
PBTで行われていたときは、およそ午前試験合格率が6割程度、午後試験合格率4割程度で推移していたため、科目A(旧午前)の難易度は変わらず、科目B(旧午後)がかなり易化したと言えます。
(2023年5月実施分は、科目A合格率:63.21%、科目B合格率:64.46%)


科目A免除の増加

上で紹介している得点分布表でもう一つ注目したい点があります。
それは、科目Aと科目Bの受験者数の差で、科目Aの方が科目Bより3,236人(30.8%)ほど少なくなっている点です。
これは科目A試験免除制度を利用した人数と推測されます。

午前試験(現科目A試験)免除制度自体は以前からあるものですが、以前はその割合は10〜15%程度でした。
今回の統計情報ではその割合が30%を超えており、これが全体の合格率を押し上げているようです。

なぜ急に増えたのかについて詳細は分かりませんが、受験者数の中で、専門学校生が突出して多い(全体の3割程度)のが関係しているのかもしれません。
(とはいえ、専門学校生の合格率はかなり低いので矛盾してしまいますが)

令和5年度 基本情報技術者試験 勤務先別一覧表

免除利用の増加が、一過性なのか恒常的なのかはわかりかねますが、今回が年度始めだからということであれば、今後縮小していくことでしょう。
(2023年5月実施分は、免除制度利用者、専門学校生ともに半減していたため、一過性または季節性のものだと推測されます。)


制度改正直後の要因

過去の事例(平成21年度の大改正、令和2年度のCBT化など)を見る限り、試験制度改正直後は合格率がやや高くなる傾向があるようです。

これは、改正直後は、調査目的(講師や記者など)などでレベルが高い受験者が相対的に増えるため合格率が高くなる、などの理由が考えられますが、詳細は分かりません。
とにかく改正直後はそういう傾向がある、ということです。


SGの合格率上昇の要因

続いてSGの合格率上昇についても考察します。
SGの場合、試験の縮小制度改正直後という要因はFEと近いですが、それよりも大きく合格率上昇に寄与したと思われる要因がありますので、紹介します。

合否判定基準の変更

公表されたSGの得点分布は次の通りです。

情報セキュリティマネジメント試験 評価点分布 令和5年4月分

ここで注目すべきは、科目A試験と科目B試験が合算されていることです。
というのも、今回から合否が科目A・科目B合算で判定されるようになったからです。

具体的には、以前は午前試験(現科目A試験)と午後試験(現科目B試験)それぞれで60%以上の得点が必要でしたが、現在は科目A試験と科目B試験の合計で6割以上の得点を取ればいい、という条件になっています。

例を挙げると次のようになります。

【旧試験の場合】

  • 午前:60点、午後:60点 → 合格

  • 午前:70点、午後:50点 → 不合格

  • 午前:50点、午後:70点 → 不合格

【現試験の場合】 *科目Aと科目Bの配点が同じ場合

  • 科目A:60点、科目B:60点 → 合格

  • 科目A:70点、科目B:50点 → 合格

  • 科目A:50点、科目B:70点 → 合格

このように、以前の試験であれば不合格でも、現試験では合格となるケースが発生することになります。
しかも50〜70点付近はかなり受験者数が集中する得点域のため、かなり合格者数が増えることになると想定されます。
よって、合格率大幅上昇はこれが主要因であると言っても過言でないでしょう。


今後の予想

合格率の推移

上述の通り、試験制度変更直後の合格率はやや高めに出ることが多いようです。
そのため今後しばらくすると、おそらくFE:50%前後、SG:70%前後あたりで落ち着いていくのではないかと思います。

また、あまりに合格率が高いがために、今後試験内容や合否基準のテコ入れがある可能性も否定できません。


試験合格に対する評価

企業にお勤めの方は、各種資格取得に手当が出たり、資格が昇格要件になっていないでしょうか?
特に、ITエンジニアの方は、基本情報技術者試験をはじめとする各IPA試験がそれらの対象になっていることが多いかと思います。

もし、FEの合格率が現状のように高いままだとすると、それらの見直しは避けられないでしょう。どのように変更されるかはお勤め先次第ですが、雰囲気は以下のようになるのではないでしょうか。

  • FE合格で一時金(報奨金):30,000円 → 受験料分(7,500円)のみ

  • FE合格で資格手当:5,000円/月 → 廃止

  • 役職者になるための資格要件:FE合格 → AP合格

これまで、基本情報技術者試験がITエンジニアの登竜門と言われてきましたが、これからは応用情報技術者試験くらいまで合格しておかないと、人事上いろいろと不利益を被るようになるかもしれません。

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