見出し画像

イールドワークで学ぶ空間身体学 第5回 「細胞」と「環境」の相互影響ーすべてのものは関係しあう

「言っていることや方法は正しいのになぜしっくりこない」
普段生活するなかでそんなことを感じたことはありませんか?
それとは逆に、

「理由はないけれどこの人といると安心できる」

ということもあるのではないでしょうか?
その理由は、私たちの身体が無意識のうちに相手や自分がいる環境に対して常にアンテナを張り、そこが自分にとって安全で「身を委ねられるか」を判断しているからです。
この「身を委ねる」という行動は「イールド」と呼ばれ、私たちは生まれた瞬間から身に備わったこの能力を使って積極的に安心できる相手や場所を選んで生き抜いています。
この連載ではこの能力「イールド」を知るとともに、上手にそれを使って自分を安心させたり、他人をリラックスさせたりする方法を、イールドワークの第一人者である田畑浩良さんにご紹介いただきます。アシスタントはイールドの達人(?)である猫を代表してニャンコ先生です。

連載 安心感と自己調整能力の鍵は「間合い」

イールドワークで学ぶ空間身体学


第5回 「細胞」と「環境(細胞外マトリックス)」の相互影響――すべてのものは関係しあう
文●田畑浩良
取材協力●半澤絹子

すべてのものは相互関係にある
細胞と細胞外マトリックスは影響を与え合う


 ここまで細胞は生存のための足場として「細胞外マトリックス」を必要とすることを紹介してきました。

その一方で細胞外マトリックスもまた、細胞からの影響を受けます。

そもそも、細胞外マトリックスは細胞から産生されるものです。

細胞と細胞外マトリックスの関係性は、Murrayらによって、次のように表現されています。

「細胞の運動によって、細胞外マトリックスに構造変化が生じ、その変化に細胞が応答して動きが制御され、さらにその細胞の動きに応答して細胞外マトリックスが再構築される(*1)」

つまり隣り合う「細胞」と「細胞」、または「細胞」と「細胞外マトリックス」は相互に作用し合っているわけです。

自分が周りに働きかけ、与えたものを周囲から受け取る――、この微小環境で完結している協調システムによって、身体全体の構造は組織化されていると考えられます。

仏教では「すべてのものは縁起する(関係しあう)」と言います。

そのように、生命とは、社会というレベルだけでなく、細胞のレベルでも“関係性”によって成り立っているのです。

*1 原著:James D. Murray, Biological modelling On the mechanochemical theory of biological pattern formation with application to vasculogenesis, C. R. Biologies 326 (2003) 239–252
https://doi.org/10.1016/S1631-0691(03)00065-9

ここから先は

4,946字 / 4画像

¥ 150

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?