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絶句

「ああ・・・悲しい」
学生時代はスマートで可愛いと言われた夏美はOLになってからストレスがたまったのだろうか。
異常な食欲で、ミルミルうちに10キロも太ってしまった。
高校時代から3年付き合った彼も、
「お前、契約違反だぞ」
と、そんな契約なんかしてないのに、太ったことを理由に去って行った。
ショックショック大ショックの夏美は、友達とやけ酒を飲んで、帰る途中にコンビニで買ったカラムッチョを
「エステに行っても、雑誌の使用前と使用後みたいに、うまく行くわけないし、それより、この食欲なんとかならないかなあ」
なんて言いながら雑誌をペラペラ見ている内に1袋全部食べてしまった。
空の袋を見て、自暴自棄になった夏美は見るのもイヤになったヘルスメーターを押入に押し込んだ。
そんな夏美が目覚めた朝はバレンタインデーだった。
本命のいない夏美は、義理チョコを同じ課の男子社員に、
「義理よ、義理よ」
と言いながらバラまいた。
こんなブタ女なんか誰も相手にしてくれない。
これでは義理チョコではなくて、ヤケチョコだった。
しかし、世の中捨てたものではない。
そんな夏美にも言い寄ってくる男もいた。
同じ会社の早見という1年先輩のシステムエンジニアだ。
「すぐに結婚前提とは言わないけど、できたら真面目に付き合ってくれないか」
と言って来た。モジモジしながら夏美は言った、
「ええ・・・私なんかのどこがいいんですか?」
早見もモジモジしながら、
「言ってもいいのかなあ・・」
「ええ」
「怒らないでくれよ」
「ええ」
「その、ポッチャリ感がたまらないんだ」
思わず絶句した夏美だった。
 

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