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誕生日のプレゼント

「時間よ、止まれ」
拓也は急いでいた。
シンデレラではないが、何とか夜中の12時までに自宅に帰りたかった。
何を隠そう今日は、この連休に結婚した新妻の恵理の誕生日なのだ。
しかし、そんな時に起きては困ることが起こる。
システムエンジニアの拓也がいつも出入りしている電鉄会社のサーバーに
ウイルスが侵入したのだ。
連絡をもらったのが朝の10時で、復旧したのが夜の10時だった。
ハーハー、12時5分前。
荒い息でやっと辿り着いた我が家。
拓也を迎えてくれたのは、優しい妻の笑顔だった。
「誕生日、忘れてないよ、プレゼント買えなかったけど・・」
と拓也が申し訳なさそうに言うと、恵理はウーウーンと首を振って、
「あなたが無事で帰って来てくれたのが、何よりのプレゼントよ」
最愛の妻の言葉に、もう、とろけてしまいそうな拓也だった。

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