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ムーミンの第一作であり原型とも言うべき本を、本屋で発見したのである。「小さなトロールと大きな洪水」である。この本の題名をご覧になると分かるようにどこにも”ムーミン”という文言がない。だから、ムーミンファンでもなかなか気づかない。ただ、どのムーミンよりもメルヘンチックな内容なのだ5月29日

 
自称ムーミン評論家の女子大生・真美は、
ムーミンの原作本9冊目を読破した。
世間でよく知られているムーミン本は
8作であるが、ムーミンの原型とも言うべき
もう一作を、先日、本屋で発見したのである。
「小さなトロールと大きな洪水」講談社青い鳥文庫である。
この本の題名をご覧になると分かるように
どこにも”ムーミン”という文言がない。
だから、ムーミンファンでもなかなか気づかないのが
実状のようである。しかし、真美は気づいた。というのも、
あのムーミンの名前はトロールと知っていたからだ。
「これって、ムーミンなのね」
と、行きつけの本屋のレジで
アルバイト風の”とぼけた顔”の男の子に真美は言った。
「え、そうなんですか」
その男の子は、ビックリしていた。
この1年間くらい、いつもレジに座っている彼と
真美は顔なじみである。
彼は、このことに限らず真美が何を話しかけても
ビックリする人なのである。
だから、真美は
「へんなの」
と、いつも不思議そうに笑ってしまうのである。
 
真美は彼氏募集中である。なかなか妥協もできない性格なので
とりあえずってのができない。こんな性格なのが彼氏ができかけても
今一歩踏み切れない原因に拍車をかけている。
こんな女の子の真美がメルヘンの世界に足を踏み入れても不思議な
話ではない。「小さなトロールと大きな洪水」に出会ったのは
偶然ではない。ムーミン谷に住む妖精たちのお導きなのかもしれない。
この本は、100ページあまりと30分もあれば読み切れる内容だった。
買った日の夜には、一気に読み切ってしまった真美は
そのまま眠ってしまった・・・
 
夢の中に出てきたのは、この本の中で赤ちゃんを連れて来ずに
人助けならぬムーミン助けをやったコウノトリである。
コウノトリは言った
「真美ちゃん。僕が、真美ちゃんの彼氏を連れてきてやろう」
「ほんと!」
真美は大喜びだった。
しかし、具体的に彼氏になる人の名前や顔を
教えてくれたわけでもなかった。だから、
「なにか手がかりになるもの、たとえば横顔だけでも。。。」
と真美は、コウノトリにお願いした。
しかし、コウノトリは
「それは・・・その・・・」
と、はっきり言わない。
「せめてせめて、趣味だけでも・・」
と、真美がお願いしても
「ううう・・・」
と、煮え切らない。
真美は、ハッキリしないコウノトリに腹が立ってきた。
ジーッと睨みつけた。
コウノトリは、顔を背けた。
真美はふと思った。
「あれえ、その・・とぼけた横顔・・・どこかで見たぞ」
なんとも、不思議な夢であった・・・
 

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