見出し画像

ユーザー視点で考えるTimelabのソフトウェア品質

これは「Timelab Advent Calendar 2023」の4日目の記事です。

本記事では、ユーザー視点でTimelabのソフトウェア品質について、普段Timelab開発チームで議論していることや考えていることを言語化してみようと思います。ソフトウェア開発に携わる人やTimelabに興味がある方々に読んで頂けると幸いです。


ソフトウェアにおける品質とは?

ソフトウェアの品質を考える際には様々な観点が考えられますが、ここで扱う品質はユーザーが求める品質という視点で考えてみたいと思います。代表的なモデルとして、東京理科大学名誉教授の狩野紀昭氏が1980年代に提唱した「狩野モデル(Kano Model)」があります。狩野モデルでは品質を以下の5つに分類しています。

当たり前品質
あって(充足)されていても当たり前と受け取られるが、ない(不充足)と不満に感じる品質要素。

一元的品質
あると嬉しいものの、ないと不満につながる品質要素。

魅力的品質
本来なくても構わないものの、あると嬉しい品質要素。

無関心品質
あってもなくても顧客の満足度に影響を与えない品質要素。

逆品質
あると逆に満足度が下がり、ないほうが嬉しい品質要素。

5つの品質要素を「充足度合い」と「満足度」の2軸でマッピングすると以下の図のように整理することができます。

狩野モデル図解


ソフトウェア開発においてユーザーへの価値を高めるために取り組むべきは「当たり前品質」「一元的品質」「魅力的品質」の3つになります。

余談ですが、「無関心品質」と「逆品質」については、言うまでもなく取り組むべきでない品質要素であるものの、多くのソフトウェア開発において、ユーザー視点を欠いた議論がなされる時に、このような結果を生み出します。ユーザーの離脱を防ぐために退会導線を分かりづらくしましょうとかですね。。僕はサービス運営側や開発側の都合をユーザーに押し付けることは絶対にやってはいけないと思っています。ダメ絶対!!

カレンダーソフトウェアにおける品質とは?

さて、Timelabは複数のカレンダーをまとめて管理できるソフトウェアになるのですが、カレンダーソフトウェアにおける「当たり前品質」「一元的品質」「魅力的品質」3つの品質について具体的に考えてみたいと思います。

「当たり前品質」は、あって当たり前の機能=カレンダーソフトウェアの基本となる機能と言うことができます。登録した予定を週表示や月表示で確認できることはもちろん、イベントの登録や編集、削除するような基本機能が備わっていることが当たり前品質に当たります。

「一元的品質」は、あると嬉しいものの、ないと不満につながる品質要素であるので、使いやすいUIデザイン、サクサク動くなどのパフォーマンスなどがここに該当します。ツール系ソフトウェアであるカレンダーは、究極この使い勝手の部分のディティールをどれだけ突き詰めるかというのが非常に重要です。

「魅力的品質」は、本来なくても構わないものの、あると嬉しい品質要素、つまり付加価値ということになります。カレンダーソフトウェアにおいては、日程調整機能やタスク管理機能、ソーシャル要素などがここに当たります。Timelabでいうと、複数カレンダー間を自動で同期する自動同期機能が魅力的品質に当たります。

カレンダーソフトウェアは「当たり前品質」がすごく高い

カレンダーソフトウェアの代表は言うまでもなくGoogleカレンダーやOutlook、TeamsなどのMicrosoftカレンダーです。オンラインカレンダーを利用するユーザーのほぼ99%がどちらかのカレンダーを仕事やプライベートで利用しています。

ユーザーは別のカレンダーソフトウェアを利用する際に、使い慣れたGoogleカレンダーやMicrosoftカレンダーと必ず比較することになります。つまり、カレンダーソフトウェアにおける「当たり前品質」の基準は、GoogleカレンダーやMicrosoftカレンダーであるとも言い換えることが出来ます。

GoogleカレンダーやMicrosoftカレンダーでできることが当たり前にできないと、すべてユーザーの中ではマイナス評価となってしまいます。GoogleカレンダーやMicrosoftカレンダーは非常に高機能なプロダクトであり、それを当たり前に実現するというのは、相当ハードルが高いことは容易に想像して頂けるかと思います。正直、時間もお金もリソースが限られているスタートアップが手を出す領域ではありません(笑)

Timelabの最初の2年間は「当たり前品質」を埋める戦い

2021年4月からTimelabの開発をスタートしましたが、スタートしてからの2年間はずっとこの「当たり前品質」を埋めるための戦いでした。ユーザーインタビューやプロダクト内に設置したフィードバックツールからのユーザー要望の多くは、「Googleカレンダーのように〇〇できるようにして欲しい」がほとんどでした。

"Googleカレンダーのように繰り返し予定を登録できるようにして欲しい”
"ドラッグ&ドロップで操作できるようにして欲しい"
"カレンダーの色を変えられるようにして欲しい"
"Googleカレンダーのように予定の参加・不参加の返事がしたい"
"他のメンバーのカレンダーを検索して、見れるようにして欲しい"

実際のユーザーからのフィードバックの一部抜粋

Timelabは、複数のGoogleやMicrosoftカレンダーをまとめて一元管理できることが価値です。なので、Timelabでまとめたけど、結局Googleカレンダーでしかできないことがあると、ユーザーはTimelabとGoogleカレンダーを併用することになってしまい、本末転倒です。

GoogleカレンダーやMicrosoftカレンダーでできることはTimelabからすべて操作できなければ一元管理した状態とは言いません。最初の2年間はひたすら、GoogleカレンダーとMicrosoftカレンダーとの差分を埋め続ける戦いといっても過言ではありませんでした。

これからは「一元的品質」と「魅力的品質」を磨き続ける戦い

今年になってようやく「当たり前品質」として、おおよその品質は担保できるレベルになってきました。「当たり前品質」がある程度満たされたので、次は「一元的品質」の大幅な引き上げです。

本来カレンダーのようなツール系ソフトウェアにおいて「一元的品質」であるUXやUIデザイン、サクサク操作できるパフォーマンスなどは非常に重要です。毎日使う仕事道具(ツール)になるので、ちょっとした違和感やストレスがあるとユーザーはすぐに離脱してしまいます。

当時のTimelabはカレンダーの予定を表示するのに、連携するカレンダー数が多いと10秒以上読み込みがかかるような酷いものでした。。この長らく問題となっていた高速化問題にも重たい腰を上げ、今年の3月にようやく改善し、高速化対応をリリースしました。(今ではかなり改善され快適です。)

また、UI周りの改善にも今年から着手し始めました。ソフトウェアデザイナーでツール系ソフトウェア大好きおじさんの貫井さん(@NobtakaJP)にTimelabのUI改善をお願いし、この数カ月間で見違えるように改善されています。今なお進化中です。

そして、Timelabとしては今年の4月に大きな機能をリリースしました。複数のカレンダー間の予定を自動で同期する機能です。これは、複数カレンダーを管理しているユーザーなら多くの人が経験しているであろう、Aのカレンダーに入った予定を他のBやCのカレンダーにブロック予定として何回も登録するという面倒な作業をすべて自動化してくれる素晴らしい機能です。

同じようなカレンダー間の自動同期サービスは、海外だとReclaimが有名ですが、最近だとカレンダーソフトウェアとしても注目度が高いCronにも機能として備わっています。この自動同期機能はTimelabにおける「魅力的品質」のひとつであり、リリースしてからは同様の課題を感じていたユーザーの方からは大きな反響を頂きました。

まとめ

ということで、ユーザー視点でカレンダーソフトウェアであるTimelabの品質について考えてきました。良く狩野モデルでの解説記事などを読むと、「当たり前品質」→「一元的品質」→「魅力的品質」の順番で品質改善に取り組むことが推奨されていますが、個人的にはそれは本質的ではないと思います。

ユーザーがソフトウェアに触れて価値を感じるかどうかは、「当たり前品質」のマイナス評価、「一元的品質」のマイナスorプラス評価、「魅力的品質」のプラス評価の総和によって、ユーザーが感じる価値の大きさが決まるというシンプルな公式で表すことができます。

ユーザー価値=「魅力的品質」+「一元的品質」ー「当たり前品質」

結局は「魅力的品質」で圧倒的なインパクトを出せるソフトウェアであるなら、多少UIや機能が足りてなくてもユーザーは価値を感じて使い続けるし、カレンダーのように当たり前品質が高いソフトウェアであるなら、当たり前品質を埋めるために最初は時間を必要とするということです。

Timelabは後者であるので、まずは当たり前品質を埋めるために相当な時間を要しましたが、これからはとにかく「一元的品質」と「魅力的品質」を磨き込んで、ユーザーの皆さんがさらに使いやすくて便利になるように進化させていきます!やるぞ!

ここまで長文にお付き合い頂きありがとうございました。もし、少しでもTimelabに興味持ったよという方は、絶賛βテスト実施中ですので、下記よりウェイティングリストの登録をして頂けると幸いです🙏もしくは、直接DM頂ければ招待コードお送りさせて頂きます!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?