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自分本位な感情と忘却

「君の名は。」や「天気の子」が”ぼくがきみを救う物語”だとするならば、「すずめの戸締まり」は”わたしがわたしを救う物語”であった。


そんなすずめに、新海誠は決して「自分本位」だと責めない。これみよがしに救済し、背中を押して、優しく見守るのだ。すずめが自分を救う物語の中で、そういった苦労はノイズになり、思想性が薄れてしまうから。
大切なことを蚊帳の外に忘却しながら、「あなたは光の中で大人になっていく。」という約束を反故にしないために、すずめは光の中を歩いていく。

「今は真っ暗闇に思えるかもしれないけれど、

いつか必ず朝が来る。

朝が来て、また夜が来て、

それを何度も繰り返して、

あなたは光の中で大人になっていく。

必ずそうなるの。

それはちゃんと、決まっていることなの。」

以下所感

「私行ってくる!」
「え、どこに?」
「好きな人のところ!」
このシーンとても、良い。

草太さんを救う動機が「草太さんがいない世界が怖いから」なのが好き。軸を自分の中に持っているという点において、すずめは非常に信頼できる。

環さんと芹澤、本当に同年代くらいだったら付き合ってたと思う。年齢の壁を少しでも感じてしまった自分を恨みたい。


すずめの日記、日付をみて震災を連想しなかった人もいるらしい。時代の流れを感じた。

うちの子になる?の重み。
ダイジンとすずめの関係がすずめと環の関係と同じで刺さる。


新海誠は、この先も大衆映画を作ってくれるだろうか。ポスト3.11作品は今回で完結したと思うし、新海誠さん的にはもう満足してそうな気もしなくない。
個人的には「言の葉の庭」のようなひたすら心に刺してくる感じの作品がまた観たい。

私はすずめが好きだ。自分本位な感情で周囲に迷惑をかけ、ときには危険に晒し、大切なことすらも都合よく忘却して誰かを傷つける。そんな素直で人間味溢れるすずめを悪だと叫ぶ人がいるのならば、私もこれみよがしに救済し、背中を押して、優しく見守りたい。

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