見出し画像

DX閑話~DXからの電話

都会の喧騒を背に、私はその電話をじっと見つめた。半年間、誰一人としてかけてこなかった電話が、今、不意に鳴り響く。その音は、遠い記憶を呼び覚ますようだった。

「もしもし・・・」受話器を取る手が、わずかに震える。

電話の声の主は、●●●だと名乗った。私でも名前は知っているような会社の名前だった。

「DXを推進したい」と唐突に相手は言う。

しかし、その言葉の裏に隠された意図は掴めない。何を成し遂げるために、ITツールを使うのか、そもそもITツールを使うべきなのか、その答えは常に曖昧だった。

「具体的には?」私が問い返すたび、相手は言葉を濁す。このやり取りは、まるで猫とネズミのゲームのようだ。

彼らはただ「DXをしたい」と言うだけで、その実体は見えない。それは、まるで霧の中を歩くようなものだ。

私は、この謎を解き明かす鍵を探したが、あきらめて「申し訳ないが、ソリューションベンダーに問合わせたほうがいい。そのDXという何かを提案してくれるだろう」。

気が付けば、窓の外は星が瞬いていた。
私は窓辺に立ち、空を見上げる。
そこには答えはない。ただ、虚しさだけが心を満たす。

私は深くため息をつき、夜の街に目を向ける。
そして「これが、ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーなのか?」と呟いた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?