見出し画像

【資格】消費生活相談員 その1


1 どんな資格か

少し前に消費者安全法が改正され、消費者センターには【消費者の相談や苦情あっせんに当たる消費生活相談員】を置くこととなった。これにより国家資格(必置資格)としての消費生活相談員が新設された。が、新たな資格が生まれたというよりは、従前は民間資格が担っていた仕事を国家資格に引き上げたという感じだ。

この沿革から試験の仕組みが分かりにくい。登録試験機関である「国民生活センター」と「日本産業協会」が行うことになったからだ。例えば、国民生活センターの場合は、かねてから実施されてきた「消費生活専門相談員」という公的資格の試験と国家資格である消費生活相談員試験を「あわせて」実施する。この試験に合格することによって、国家資格と公的資格の2つを得ることができる(日本産業協会の場合も同様で、消費生活アドバイザーと同時に行われる)。

ちなみに合格率は、国民生活センターはR4:36.1%(合格者/実受験者)、30.4%(合格者/申込者)、日本産業協会の場合はR4:30.0%(合格者/申込者)であって、ほぼ同じである。

2 国民生活センターの試験

(1)出題範囲

これは消費者安全法に規定されている。なので、どちらの試験も似たような試験となる。

1 商品等及び役務の特性、使用等の形態その他の商品等及び役務の消費安全性に関する科目
2 消費者行政に関する法令に関する科目
3 消費生活相談の実務に関する科目
4 その他内閣府令で定める科目

消費者安全法10条の3

(2)択一

僕は国民生活センターの試験を受験したので、こちらについて出題の範囲を紹介しよう。
10条の3第2号の法令に関する科目の出題数が多い。消費者基本法、消費者契約法、消費者安全法、民法、特定商取引法、景表法、PL法その他の細かい法律が対象である。対策は、個々の専門書まで読む必要はないが、杉浦市郎『新・消費者法これだけは〔第3版〕』(2020,法律文化社)はお勧めしておきたい。

もう少し立ち入った論点まで整理したい場合、コンメンタールを読んでもいいだろう。ちなみに、消費者庁は、消費者契約法特定商取引法の逐条を公開しているので、これで十分だろうというのが僕の感想だ。

また第1号「商品等及び役務の特性・・・関する科目」については、この資格独特だ。
金融商品の種類、食中毒の知識、クリーニングの知識等が出題対象になる。この手の話題は、朝の情報番組で最新の情報を拾ったり、概要を整理するという方法が意外と効果的であるように思う。

(3)記述

この資格は小論文がある。対策は難しいが、択一を意識して勉強する際、「これは論述でも出題されるくらいボリューミーな論点だな」と感じた部分を、用語の定義(例:クーリングオフとは何か)、課題(例:どんな問題を背景に制度化されたか。事情の変化で改正が必要ではないか)などを自分で文章に書いてみることだ。「頭でわかっている」と思っても、論理的な文章にしようとすると難しいので、よく練習するのがよいと思う。あと、国民生活センターは「10大問題」などは目を通すとよいかも知れない。

(4)面接

最後には面接試験がある。これは基本的に助け舟を出してくれるので、ここで落ちることはないと思う。

(5)最後に

1つだけ僕なりにポイントをいうと、企業は情報・資金・人材が豊富で、消費者はこれらの面で企業に及ばない。なので、この偏在を是正するため、法の原則(対等・私的自治)を曲げてまで、消費者に有利な制度を設けているのが消費者行政であるという認識を覚えておくのがよいと思う。
「民法だとこうなのに、消費者のためにこのように修正されているのだ」という意識。これは持っていて損はない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?