なぜ数学ではこれほどまでに「定義」を大事にするのか【感想:数学ガール ゲーデルの不完全性定理】
数学の問題で、「なんか当たり前のことを遠回しに言っているなー」と感じたことありませんか?
例えば、大学生になって今更足し算の定義を述べたり、極限の定義を述べたり、めんどくさいと思うかもしれません。しかし、当たり前と思うそれらの便利な記号も、全て定義を定めることで成り立っているのです。
そして、それらの定義をした記号を用いて「定理」ができます。数学においては、この定理に価値があるのです。
今回は、こんな複雑でわかりにくいと感じる「数学」をわかりやすく書かれた本を紹介します。
【感想:数学ガール ゲーデルの不完全性定理】
「lim〇〇」という表現があります。中学・高校数学の範囲なので覚えている人も多いと思いますが、これは「限りなく〇〇に近づける」という意味です。
この「限りなく〇〇に近づける」という表現があいまいなため、厳密性を増すために大学数学で「εδ論法」というものを学ぶのです。
「何を面倒な言い回しで簡単なことを言っているんだ」と思うかもしれません。しかし、定義の厳密性がないと正しい定理は生まれません。あいまいな定義から生まれた定理は、本当に大発見かどうかわかりません。つまり新しい定理を発見するために、数学においては異常とも思われるほどに、定義が重要視されているのです。
この本では、このような定義への振り返りを「知らないふりゲーム」と呼んでいます。これは的を得た表現で、当たり前のように使っている定義を再度確認する作業が、数学者にとって重要なのです。
大学数学は小難しいことをやっているだけで、実用性がないと呼ばれるのもここに理由があります。大学に行くと大変ですが、一冊の本でそれが体験できるのであれば、少しお得かもしれません。大学数学を覗き見る体験として、本書を手に取ってみても良いかもしれません。
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