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創価大学での学生生活〜男子寮について〜

昨日の読書レビューで寮長時代のことをチラッと書いたので、創価大学男子寮での寮生活についてもボチボチ更新していく。⤵︎学生生活の前回更新記事はこちら

私の大学生活の大半を占めた寮生活。今回は男子寮のシステムについて。

なお、学生寮の紹介は大学公式HPに詳しく掲載されている。また、開学当初の寮生活の模様については、池田大作『新・人間革命15巻』創価大学の章に記載がある。
従って、できるだけこれらの資料を基に説明しながら、適宜私の経験から補足をしていく形で話を進める。

創価大学1年生の7割が経験する寮生活

創価大学の男子寮(女子寮も)は、基本的に1年生が使用する。なので、2年次になると共に寮を卒寮することになる。
ただ例外もあって、2年生や3年生の若干名が「残寮生(以下Z)」として寮に残り、1年生(以下寮生)と寮生活を共に過ごす。
その制度もあって、創価大学男子学生の7割は寮生活を経験する。

寮生活のメリット

この制度については、創立者・池田大作の意向が大きく影響している。

創価大学の特色の一つは、学生寮を教育の場として、積極的に取り入れていた(原文ママ)ことにあった。一期生は八割近くが寮生であった。
かつての旧制高等学校がそうであったように、学友同士が寝食をともにしながら、深い友情を結び、人間的な啓発を図ろうと、大学をあげて、寮の充実に力が注がれたのである。

新・人間革命15巻「創価大学」p153

どこか旧時代を思わせるような文章だが、近年、池田と同じような考え方で学寮を新設する大学は増えている。
例えば2014年に早稲田大学で新設された「国際学生寮WISH」の理念は以下の通りだ。

多様なバックグラウンドを持つ学生が共に学び生活する「WISH」は、まさに毎日が異文化交流実践の場。国籍や専門分野を超えた幅広い人脈づくりの場であり、生涯にわたる友人関係を築く機会ともなります。
また、寮内では多才な学生が集う早稲田大学の特性を活かして「Social Intelligence(SI)プログラム」を展開します。寮生同士で積極的にディスカッションしながら、社会のニーズに応え得る人材となることを目指し、主体性、課題発見力などプラスαの能力を涵養していきます。

早稲田大学入学センターHP

いかがであろうか。人間形成や教育の場として寮を位置付けている点は共通している。また新設ではないが、国公立大の寮でも寮を同じような位置づけとして扱っている大学もある。

池の上学生宿舎(学生寮)は、学生の修学に適した住居を提供し、併せて良識ある市民として生活体験ができる住居を提供することを目的に設置された施設です。
個室になっており、個人の生活権を尊重する形態をとっている一方、各階には10~20人が入居しているため、集団生活の場ともなります。また、外国人留学生と日本人学生が同じ建物で共同生活を営むことを通して相互理解を深め、国際交流の場としての性格を併せ持つ宿舎となっています。

広島大学HP

こうした、学生同士の触発による成長を狙う取り組みは、ピアサポートと呼ばれる。

ピア・サポートとは、学生が学生を支援する取り組みです。支援を求める側にとっては支援者が学生であることで気軽なサポートが受けられ、支援を行なう学生は、サポートを通じて自らを成長させる機会が得られます。学生はピア・サポートでの支え合いの経験により、本学の教育理念“Do for Others(他者への貢献)”の実践を体現しています。

明治学院大学HP

現在、精神保健福祉の分野で注目を浴びているピアサポートだが、大学運営の場でも注目し、実践が行われているのだ。
池田はこうした効果を狙い、構想を立てていたのだ。

寮生活のデメリット~1971年開学当時の大学を取り巻く状況より~

現代では肯定的に捉えられる学生寮だが、創価大学開学前はそうではなかった。これについては池田が『新・人間革命』で触れている。

大学紛争では学生寮をめぐる問題が紛争の火種となったり、闘争の拠点となるケースが多かったことから、社会的には、とかく寮は問題視されていた。しかし、それは、寮の失敗ではなく、大学教育そのものの失敗であると言わなければならない。
学生の自治に委ねた寮の運営が成功するならば、それは創価大学の人間教育の勝利であるーー創大の学生寮は、その決意から出発していた。

新・人間革命15巻「創価大学」p153

開学当時は大学紛争の真っただ中であり、開学当初もその影響が色濃く出ていた。『新・人間革命』では大学紛争のことも取り上げられており、学生部員が学生運動に参加したり、学生部が学生運動の組織を結成し、池田もそれを支援したりする場面が描かれている。

そうした状況下でも、「学生自治に委ねた寮の運営の成功」を「創価大学の人間教育の勝利である」と決めて建設した決断はなかなかできないだろう。

このエピソードから「学生自治に委ねた寮の運営の成功」は寮建設に携わる学生の間での共通の目的となり、50年以上その伝統が脈々と続いている。


国際寮と学部寮の大きな違い

現在男子寮は国際寮と学部寮に分かれている。これは、滝山寮が滝山国際寮に改装される際に新しく作られた区分だ。私の在学中は、こんなに洗練され詳述されたHPではなかったので隔世の感がある。

卒寮生から見た、国際寮と学部寮の大きな違いは、寮役員の選考方法に大きく表れている。寮則からその点を明らかにしたい。

国際寮と学部寮の寮役員選出方法の違い


まずは国際寮から見ていく。国際寮は2017年に新設されたため、私が経験してきた寮役員選考とは大きく異なっている。

(レジデント・アシスタント)
第4条 寮生活の運営を円滑に行うために、レジデント・アシスタント(以下、「RA」という。)を置く。
2 RAは寮長、副寮長、残寮生の総称とする。
3 RAは本学学部生の2年生以上もしくは大学院生とする。
4 RAは、学生部学生課において公募し、書類選考と面接により学生部長が決定する。
5 RA選考に際しては、次の各号を考慮する。
(1)寮運営に主体的に取り組む意思
(2)学業成績
(3)語学能力
(4)人物、生活態度

寮則>国際学生寮(男子)

次に学部寮を見ていく。こちらは私が寮役員を務めた際の選出方法について大きな変化はない。創価大学男子寮の伝統的な寮役員の選出方法と言える。

(選出)
第5条
1 前条に定める寮役員・残寮生の選考は、学寮連絡協議会において行い、学生部長が許可する
2 選考に際しては、次の事項について審査する。
(1)寮運営に主体的に取り組む意思
(2)学業成績(選考時の通算GPAは2.0以上とする)
(3)人物、生活態度
(4)前任の残寮生による推薦
(5)寮費、食費等を支払う能力のあるもの

寮則>学部男子寮

大きな違いは、RA及び寮役員・残寮生の選考方法である。
国際寮におけるRAは学生部学生課が公募し、学生部長が決定しているのに対し、学部寮の寮役員・残寮生の選考は、学寮連絡協議会において行うとある。

学寮連絡協議会は寮則により以下のように定められている。

(連絡協議会)
第11条 寮の運営を円滑にするため、「学寮連絡協議会」を置く。学寮連絡協議会は、次に掲げる委員をもって構成し、学生部長が議長となる。
(1)学生部長
(2)学生課長
(3)学生部学生課寮担当職員
(4)寮生代表(各寮長)
(5)学生部長が委嘱する教職員若干名

私たちの代の連絡協議会は、全寮代表が学生部長以下学生課の寮役員担当諸君等に、決定事項を報告する場であった。従って、寮役員及び残寮生選考も寮生自身で実施し、新たに選任された者を報告するだけだった。ただ、学生部長から、すでに決定している今後の寮の運営方針を伝えられることもあった。
当時の感覚からいうと、これは学生自治の侵害ではないかと、寮長の間では議論を行った記憶がある。
現在の寮役員等の選考について、どこまで学生課が絡んでいるかはわからないが、学部寮はあくまで寮生主体で寮役員等の選考を行っている。
一方国際寮では学生課が主体となってRAの選考を行っているのだ。

学生自治の原則はどこに行った?

池田の決意を再掲する。

学生の自治に委ねた寮の運営が成功するならば、それは創価大学の人間教育の勝利であるーー創大の学生寮は、その決意から出発していた。

新・人間革命15巻「創価大学」p153

この一文に続き、こうも記されている。

だから、寮生を管理する「舎監」などは置かず、いっさいは学生に任された。学生たちも、理想的な学生寮にしてみせるとの意気込みがあった。

新・人間革命15巻「創価大学」p153

いっさいは学生に任されていたはず。しかし、学生課の介入が年々大きくなっているのだ。確かに寮役員、特に残寮生の選考には時代が経つにつれ、デメリットが大きく指摘されるようになった(この辺りのことは後日書く)。

一OBとしては疑問が湧くが、現状こうした運営がされているので温かく見守っていきたい。

学生寮が創価大学の中心

以上、創価大学における学生寮の位置づけを見てきた。
池田が抱く学生寮への期待が見て取れるだろう。
私が在籍していた寮の玄関わきのホワイトボードには、池田の言葉が書かれている。

「我が学寮は創価大学の生命(いのち)です。
 我が寮生は私の生命(いのち)です」

この言葉を見ながら3年間を過ごしてきた。もちろんこうした言葉は創価大学の様々な組織に残している。ただ1年生の7割が寮で過ごすことから、寮生活の経験がその後の学生生活や大学での活動に影響してくる。私たちは、学生寮が創価大学の核だという意識をもって寮運営を行ってきた。創価大学をよりよい大学にするために。
そのように自負するバックグラウンドをこの記事から感じ取ってもらえれば、創価大学での学生生活の解像度が上がるのではないだろうか。