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『月刊公明』1年間読んでみて

学会内外で公明党を批判または賞賛する声は多々ある。だが、客観的に評価しようという試みは数える程だ。最近では、朝日新聞の論座において公明党を検証する試みがなされている。

そうした記事も追いつつ、私は約1年前から『月刊公明』を購読し、公明党が何を考えているか読み解こうとした。
月刊公明は、公明出版サービスが毎月発刊している、公明党の理論誌である。
以前公明新聞を購読していたのだが、速報性とわかり易さが命の新聞では、ネットで得られる情報以上のものは得られない。議員が毎月勉強のために購入している月刊公明からならば、公明党の見ている世界の一端を垣間見えるのではないかと思い、年間購読を開始した。

特集においては、様々な識者へのインタビュー記事や寄稿が掲載されている。
月ごとにテーマを変え、幅広い人物から記事を得ている。

私が最も驚いたのは、2022年4月号において、政治学者の菅原琢「不完全な野党共闘がもたらした競争的な選挙」という記事である。
この記事は2021衆院選をデータで振り返り、野党共闘が限定的に効果的であったこと。参院選で野党が勝利する可能性があることをデータから導いたものである。
議員たちに危機感を煽るために掲載した面もあるだろうが、表紙に菅原氏の名を確認した際仰天した。意外と肝座ってるじゃん、編集者。

最近号である2022年7月号では、総務省統計委員会専門委員・小巻泰之「物価高の特徴踏まえた軽減税率の生かし方」が掲載された。過去に実施された他国の例とその際の下落率等を分析し、軽減税率の減税を訴える論説である。
私は軽減税率は愚の骨頂だと判断しているが、既に制度として導入されている以上、活かすためには軽減税率の減税はありの立場だ。そうでないと、何のための軽減税率かわからなくなる。
これが公明党本部の意向なのか、小巻の持論なのか、私には判断がつかない。水面下で検討しているのであろう。

同月号では、元防衛研主任研究官・佐藤丙牛「現実を直視した専守防衛政策が重要に」の中で、公明党へ次のような提案がなされている。
「公明党として今後の平和政策をどう考えるかといった継続的な対話会を国民や支援者との間で開催することを期待したい。(略)公明新聞や『公明』の中で、紙上対話シリーズを展開するようなことも意義があるのではないか」
これは是非やってもらいたい。ガチガチに拗れてもらいたい。

こうした識者の記事をチョイスする力は素晴らしいと感じる。その道の専門家の声を聞き、王道を進んでいこうという気概が感じられる。この点は評価したい。

しかし、『公明』の記者が書いた記事はどうか。
編集部の記事は読んでて恥ずかしいし、共産党批判の急先鋒である飯竹憲弘記者の記事は、正直いってゴシップ記事を読まされてる気分になる。ソースが示されてない、憶測と推測にはらむ、引用するのは20年以上も前に共産党を離党した人間の著作を何度も繰り返し引用するなどなど。
これを堂々と掲載できるのは何故だろう。理解に苦しむ。ほかの記事の質が高いだけに、悪目立ちする。

最後に、こんなこともやってたんだというトピックを1つ。衆院選で初当選した金城泰邦衆院議員が2022年2月の予算委員会で「障害者手帳」制度の改善を訴えていたことだ。
私は、精神障害者保健福祉手帳に、難病や高次脳機能障害、発達障害が含まれていることに疑問を呈していた。そのことについて、細分化を求めていたのだ。これは素直に応援したい。

1年間購読し、識者の選出においては中立性を保とうとする意図が垣間見えた(選挙が近づくとヨイショする識者も多いが)。
一方で、記者が展開する持論のレベルの低さも目立つ。党内で何か構文でもあるのだろうかというくらい、同じことを毎回言っている。レベルアップを期待したい。

併せて、やはり政治は妥協の産物だと改めて思い知らされた。公明党がやりたがってることは見てとれた。しかし、現実は様々な調整が必要であり、100%党としての思いを通すことはできない。その点に不満を持っている党員は多いだろう。

私としては次の1年も勉強のために購読しようと考えている。時たま、思わぬ角度から素晴らしい記事が掲載されるからだ。広く専門家の声を聞こうとする『公明』の取組は素直に評価したい。
党や議員においても、その姿勢を広く国民に示してもらえれば、創価学会の支援なくしても支持拡大を成し遂げることができるのではなかろうか。