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交通事故の日③
夕方になっていた。S棟という大きな建物の4階の半分が整形外科の病棟だ。412号室のドア入って左手前。ベッドで病衣に着替えたと思う。牽引中はベッドから離れられないので、おむつとお小水の管、あと点滴。事故当日の衣類は上半身の衣類と靴、靴下は他の荷物と一緒に渡されたが、ジャージとパンツはなかった。切って脱がせてそのまま処分したのだろう。
病室は4人部屋の「準個室」で差額ベッド代が1日あたり千円とのこと、「どうしますか?」とは聞かれなかったので病室に関しても選択の余地はないようだ。
準個室は、隣のベッドとの境を引き出しと洋服ダンスと机スペースがくっついたパーティションで仕切ってあるからで、病室の通路側はカーテンだし、天井側は開いているのでプライバシーや音の点では大部屋と変わらない。入院が長期になりそうなので私物があれこれと収納できるのはありがたい。ベッドを挟んでパーティションと反対側には冷蔵庫のついたテレビ台。
仰向けに横たわった後、器具がベッド周りに配置される。足元側におもりを垂らす滑車付きの台みたいなのがあるらしい(支柱しか見えないが)、脚は膝から下も芯が入ったような硬い包帯でぐるぐる巻きになっている、ワイヤーが膝を貫通しているところは金具のカバーで覆われていて見えなかったが、ワイヤーの先は金属製の巨大なピンチに繋がって、ピンチの先から紐が出て滑車を通して錘がぶら下がっているようだ。左脚の上はビニールハウスのケージみたいな半円が並んだ金具を置いてその上にタオルを掛けてある。牽引している器具が他の物に引っかかったりしないように保護してあるらしい。ピンチ状の金具の形は、小学校の家庭科の裁縫箱に入っていた「かけ張り」にそっくりだ。使ったことなかったけど、どちらも何かをピンと引っ張っておくための道具なのは共通している。
右足には血流を促すための装置がふくらはぎに巻き付けられていてポンプがシュッシュッと音を立てている。
ベッドでの体勢が整うと、看護師さんに入院と手術の説明と同意書を渡される。救急入院で、すぐに駆けつけてくれる人もいないので、これも全部自分で記入しないとならない。同意書も、同意する以外どんな選択肢があると言うのか。
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そういえば、病室に来たということは、コロナは陰性のようだ、よかった。
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