見出し画像

ゴジラ -1.0

2023/11/16

ほめですが、後半にかけて納得いかないノイズが多すぎます。
ゴジラが出現しているシーンは概ね高評価です。
特に冒頭のシーンは展開の唐突さと、暗闇から襲われる恐怖、理不尽さ、
逃げ惑う整備の面々の焦りや怒りを含んだパニック状態がとても良く伝わります。
これは見ている側も怖い。スケール感も小さく、まさに恐竜への恐怖、捕食される側の恐怖が描けている。
以降そういった怖さを感じなかったのは巨体すぎると現実味が薄れるからでしょうか。
意志を感じさせない無機質な目。目線での感情表現がないため、より理解できない怪獣感がある。
そして熱線の魅力。あのギミックに感じる魅力、カッコよさってなんだろう。
また、敷島を中心に展開される人間ドラマの部分は丁寧である反面、ちょっとくどいと感じることもしばしば。
未曾有の大災害を前にどう生き、立ち向かうのかがキモだと思いますが、
市井の人々がどう行動し、どう考えたかはほとんど描かれません。
ゴジラの存在がどういった影響を与え、いかに一大事かが提示されないと、
いわゆるヤバさが伝わってこないのではないかと。
そういう意味では、すごく狭い範囲でのドラマに見えてしまう。

銀座上陸のシークエンスがすごく良かった。
一作目オマージュもさることながら、現在のVFX技術ではこうなる、というスタイリッシュさ。
シンプルでありながらも、どこか破壊に対して気持ちよさを感じる。
とはいえ、中盤にかけては純粋に楽しめた反面、
それ以降はロジカルでない部分やご都合主義な展開が続きすぎて萎えます。
銀座の街に放射性の爆発があった時点で、他国からの侵略、戦争行為を疑って然るべきですし、
いくらGHQ統治下で、という説明があったにしても少数の民間人のみが対処にあたるのは解せません。
戦争の、ましてや空爆の傷跡が生々しい時期であるにもかかわらず人々が冷静過ぎますし、
情報統制でどうにかなるレベルを超えている状況、少なくとも首都圏近郊はパニックにならないのはおかしいですよねえ。
とくにクライマックスである海神作戦は、
いかに鋭意工夫して立ち向かうか、に終始しており、ゴジラがただの動く的、都合の良い舞台装置と化します。
この時のゴジラの挙動は本当に意味が分からない。

脇を固める俳優陣の豪華さ、中でも吉岡秀隆がかもすうさんくささは、
作品世界のフィクション具合とマッチしていてちょうどいい塩梅でした。

ゴジラとしての前作、シン・ゴジラから7年経っていることもあり、
令和ゴジラシリーズとして、リブートとしては及第点なのではないでしょうか。
とはいえ、話の構造や演出自体は旧来の価値観を脱してはいないとも感じます。
もっと時代性を織り交ぜた、新しい視点、映像での実写ゴジラを期待したいところ。

左から右へ、特攻から逃げて着陸する。
右から左へ、ゴジラに立ち向かい飛翔する。
ランディングギアの対比が明確で、好きな演出です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?