私的ヒットチャート【2020】

はじめに

昨年末、Instagramのストーリー機能を用いて投稿した2020年にリリースされた音楽の私的ヒットチャート。ずっとどこかできちんと文面を整えたいと思って先延ばしにしていたが、この際noteに載せればいいかと思い立ったのでまとめていこうと思う。そもそも音楽に僕如きが一丁前に順位をつけるのも生意気な話ではあるのだが、今から挙げる曲に明確な差があるという話ではなく、ランキング形式で列挙するならこうかな?という程度のものだと思っていただきたい。また完全に独断と偏見による選出になるため、問題等あれば対応致しますので速やかに連絡頂きたい所存です。

20位→11位

20位:三文小説/King Gnu

19位:JET/ポルカドットスティングレイ

18位:はなうた/FLOWER FLOWER

17位:Caffeine/秋山黄色

16位:爛漫/カネコアヤノ

15位:俺たちに明日はない/The Whoops

14位:虻と蜂/女王蜂

13位:小さな恋のメロディ(with 大武茜⼀郎from突然少年)/林萌々子

12位:白春夢/My Hair is Bad

11位:チューリップ/indigo la End

繰り返すようだが、形式上順位付けしたものの、ほぼ差はない。どの曲もめちゃくちゃ好き。さわり程度に軽く解説していく。

King Gnu「三文小説」


これはもう、井口理(Vo)の声に全て持っていかれたという印象。第一声を聴いた時、女性のゲストボーカルを迎えたのかと勘違いしたほど。これまで見せてきた嵐のような声とも、霞のような声とも明らかに一線を画す。言うなれば凪のような、或いは鏡面のような、ザラつきのまるでない美しさ。圧巻です。

ポルカドットスティングレイ「JET」

2019年の「女神」や「トゲめくスピカ」を聴いて、雫(Vo)の歌の洗練され具合に心底驚いたのがまだ僕の中で記憶に新しいのだが、その練度が2020年の「JET」や「FREE」にも引き継がれていてとても良かった。以前の歌はエジマハルシ(Gt)のフレーズと張り合うような印象があったが、今は御している印象。

FLOWER FLOWER「はなうた」

よなよなエールとgr8!recordsが主催する「Craft Beer Music Project」の第3弾として『僕ビール君ビール』とのコラボソングとして書き下ろされた楽曲。yui(Vo,Gt)にとっては活動15周年の節目であもったが、肩の力が抜ける軽快な曲調に、少女から大人になった声がよく似合う。単純にこういう曲は好き。

秋山黄色「Caffeine」

デビューアルバム『From DROPOUT』のリードトラック。秋山黄色は、ボーカル最重視人間の僕としては珍しく、ギターに惚れ込んだ。どことなく不安を募らせるような焦燥と寂寥を感じるフレーズとサウンド。そこにカフェインというモチーフを絡める感覚に脱帽。次世代の天才の一人として目を離せない存在。

カネコアヤノ「爛漫」

椿は花弁ではなく、花首から落ちるように散る。花の姿のまま死ぬのだ。そこに美しさを見るカネコアヤノの音楽には、衝動があるし、反骨があるし、諦観がある。それらを当然のものとして何食わぬ顔で高らかに歌い上げるから、聴き手はいとも容易く浄化されてしまう。両A面の「星占いと朝」もとても好き。

The Whoops「俺たちに明日はない」

ZINEにダウンロードコードをつける形式でゲリラリリースされたミニアルバム『TAPES and LOVE』の収録曲。MVが期間限定公開されている。こうも爽やかに潔く、後悔や未練を歌われてはもう笑顔になるしかない。いつか失恋した時にこの曲を聴いたら確実に僕は号泣する。笑いながら咽び泣く。確信している。

女王蜂「虻と蜂」

2020年2月19日発売のアルバム『BL』の収録曲。B ver.とL ver.が存在している。僕が女王蜂を聴き始めてからまだ時間は浅いのだが、この曲を聴いて、こんなに哀しくてこんなに美しい楽曲に出会ったことがあっただろうか と思わずには居られなかった。女王蜂というバンドの生き様を結晶にしたような楽曲。

林萌々子「小さな恋のメロディ」

Hump Backの林萌々子(Vo,Gt)の2作目の弾き語りep『あきやすみ2020』に収録された、突然少年の大武茜一郎(Vo,Gt)を迎えたデュエット曲。青春時代か、或いはもっと昔に憶えたノスタルジックな歌詞の良さは勿論の事、ライブで歌を届ける事を続けてきた二人のボーカリストのハーモニーは説得力がある。

My Hair is Bad「白春夢」

同時リリースされた2作のシングル 配信限定の『love』とCD限定の『life』のうち、生活を歌う『life』の収録曲。コロナ禍の生活を、生活の中にあった言葉だけで紡いでいく。マイヘアが恋愛以外のトピックを歌う時、そこに冗談はあっても、決して嘘はないと僕は思っている。だから好き。あと音像も好み。

indigo la End「チューリップ」

チューリップの花言葉は色によって変わる とのこと。僕は川谷絵音の声があまり好きではないというのと、彼の恋愛描写に某騒動を想起せずにいられないというのとで、indigo la Endの楽曲を継続して聴く事が今までなかったのだが、この曲はあまりにも、悔しささえ感じる程に良くて、何度も聴いてしまった。

10位→4位

10位:BACK/ayutthaya

9位:鯨/add

8位:夏のせい/RADWIMPS

7位:pray/赤い公園

6位:風を食む/ヨルシカ

5位:健全な朝/yonige

4位:祈り/尾崎リノ

ここからはトップ10。多分僕の機器の中での再生回数的にも上位。

ayutthaya「BACK」

3rd ep『I know, right ?』の収録曲。バンドサウンドはタイトでありながら、随所の余白に色気を感じる仕上がり。太田美音(Vo,Gt)の歌の良さも健在で、アンニュイでありながらも、時折髪をかきあげて振り乱すかのような攻撃性が垣間見える辺り、僕のドツボ。ep単位でも好きで、前作のリリースから2年待つことになったが、よりブラッシュアップされたayutthayaの音楽に今後も期待して活動を待ちたい。

add「鯨」

活動休止中のきのこ帝国 西村“コン”(Dr)を中心に、ex アカシックの可愛い連中 バンビ(Ba)、シンガーソングライターのタグチハナ(Vo,Gt)らで結成されたバンド、add。この楽曲は1月23日に配信リリースされた1st demo『Telescoping』に収録されている。各メンバーがプレイヤーとしては一癖も二癖もある印象だが、自由度の高い演奏と、確かな下地を持つソングライティングとが噛み合って、デモ音源でありながら想像以上の完成度を誇っている印象。

夏のせい/RADWIMPS

7月24日からApple Music限定で先行配信された楽曲。後に9月2日リリースのepの表題曲にもなっている。『夏のせい ep』はコロナ禍の中でRADWIMPSがコンスタントに制作を続けてきた楽曲の作品集のような立ち位置だが、この「夏のせい」自体は野田洋次郎(Vo,Gt,Pf)が2019年8月にTwitterで"とても気持ちのいい夏の曲が浮かんだ"と発信していた楽曲で、1年越しの発表となった。この曲が描く、どこまでも"普遍的な夏"に思いを馳せて。

赤い公園「pray」

11月25日、シングル『オレンジ/pray』としてリリースされた、FODオリジナルドラマ「時をかけるバンド」のED曲(「オレンジ」はOP曲)。今作のリリースを控えた10月18日、津野米咲(Gt)が急逝。この記事の執筆時点で2021年5月28日に実施予定のワンマンライブをもって、赤い公園は解散する旨が発表されている。奇しくも津野の遺作となってしまった今作だが、まるで嘘みたいに楽曲が良い。2代目ボーカルの石野理子の歌はより洗練され、バンドの更なる歩みに期待が膨らむばかりだった。哀しいし、無念だが、この曲を愛して生きるしかない。

ヨルシカ「風を食む」

配信限定シングルとしてリリースされた楽曲。コンポーザーのn-buna曰く、"タップひとつで物が買える現代社会で、消費することに疲れてしまった心を、最後に優しく包むような曲を書きたいと思いました"とのこと。僕はn-bunaに対して、コンセプトアルバムを作る能力が図抜けているという印象を抱いているので、ヨルシカは曲単位というよりアルバム単位で聴いて満足するアーティストとして位置づけているのだが、今回初めて曲単位で惹かれる楽曲に出会えた。永戸鉄也が手掛けたアートワークも素晴らしい。"透明な記念碑"のイメージとのこと。

yonige「健全な朝」

2ndフルアルバム『健全な社会』より、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文(Vo,Gt)がプロデュースを務めたリードトラック。ドラマチックなことに飽きたと言う牛丸ありさ(Vo,Gt)が、"明確に悲劇があったわけではないのに何となく悲しい"というニュアンスで歌詞を書きたかったと述べているが、実際この曲のMVを初めて見た時に僕が受けたのは 悲劇にすらならない絶望 という印象だった。サポートメンバーとして土器大洋を迎えたyonigeのサウンドクリエイトはとても好みだし、『HOUSE』以降顕著な恋愛描写以外の武器を得た詞も本当に好き。

尾崎リノ「祈り」

Cody・Lee(李)に加入したことでも話題になった尾崎リノが、自身の名義で11月11日にリリースした2ndミニアルバム『ぜいたくをしようよ』の収録曲。以前Instagramで彼女自身がこの楽曲について、"最初から否定で入る歌詞はインパクトがある"と言及していたが、《あたしアイドルになれなかった》という冒頭のフレーズから展開していく歌詞世界は、終始ドライな虚無感に覆われていながら、時折素足で触れるフローリングのようなリアルな温度を感じさせる。虚構と日常の輪郭を曖昧にするようにして紡がれる言葉は、切なる祈りのように結ばれるのだ。

3位→1位

3位:カナリヤ/米津玄師

2位:モノマネ/クリープハイプ

1位:アカシア/BUMP OF CHICKEN

ベストスリーです。

米津玄師「カナリヤ」

8月5日にリリースされ、自身最大のセールスを記録することとなったアルバム『STRAY SHEEP』の最後を飾る楽曲。この曲のMVを映画監督の是枝裕和が手懸けたことでも注目を浴びた。かなりの難産だったという話もされていたが、コロナ禍で黙々と制作を続ける中で、米津玄師が捉えた変わりゆく世界、変わりゆく人と人の在り方や、それでも変わらない想い、変わらない体温を、奢りも欺瞞もない言葉で描き切った楽曲と言って差し支えない。米津玄師の齎すネームバリューや、一過性の流行コンテンツに留まることなく、このひとつの時代を象徴するポップスとして恒久的に響いてほしいとさえ思える。文句なしの名曲。

クリープハイプ「モノマネ」


クリープハイプが劇伴を担当したアニメーション映画『どうにかなる日々』の主題歌として配信リリースされた楽曲。同時に「ボーイズENDガールズ」の続編としての立ち位置でもあるということがアナウンスされている。2020年は「愛す」「幽霊失格」「およそさん」など多くの楽曲が発表されたが、「モノマネ」はその中でも断トツで好きで、この記事では形式的に2位として位置づけているが、僕の中では実質的に2020年の同率1位。自分たちを"丸くなった"と度々称しているクリープハイプだが、彼らの現在作りたい音楽と、今まで作り上げてきた音楽とが、この「モノマネ」という座標で完璧に交わったような印象。

BUMP OF CHICKEN「アカシア」


9月29日に公開されたポケットモンスターとのコラボレーションムービー『GOTCHA!』のテーマソングとして発表され、翌30日に配信リリース、11月4日に『アカシア/Gravity』としてCDリリースされた。BUMP OF CHICKENは2021年2月11日で結成から、ポケットモンスターは同年2月27日で、それぞれ25周年を迎え、それに先駆けたコラボレーションとなった。「友情」の花言葉を持つ"アカシア"はこの両者を結ぶ要素として完璧と言えるだろう。楽曲的には前項の「モノマネ」と同率のイメージなのだが、このスペシャルMVの感動がポケモン好きの僕にはあまりにも大きかったため、形式上はこの順位とした。大好きです。

むすびに

以上のような感じでした。残念というか、自分の不甲斐なさだなと思うのが、新規開拓したアーティストがあまりにも少ないって辺り。一応その点で、2021年は既に何組か、初めて存在を知ったアーティストの方々の曲でドハマリしているものもあるので、今年(2021年)は更に沢山のよい音楽と出会えたらいいなと思っている。言い訳じゃないけど、昨年(2020年)からSpotifyを利用し始めて、今まで興味があったけど手を出せていなかったミュージシャンの作品をかなりの数聴いたので、2020年は2020年に出た楽曲よりもそちらを聴いた時間の方が長かったかも。今年(2021年)の末まで僕がこの名前で活動を続けていたら、またその時にはまとめようと考えている次第。というわけで今回はここまで。ここまでご覧になっていただいた方々、ありがとうございました。 猫背

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