レビュー『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』
競争が激しい時代。
インターネットの普及で、だれでも同じ情報を持つことができるようになり、差をつけることが難しくなりました。
そんななかで他人と差をつけるのに必要なのは「センス」や「美意識」といったフワッとしたもの。
そして本書では、「エリート」と「美意識」というビジネスマンの心をくすぐるキーワードについて語られています。
かなり話題になった本だったのですが、やっと手に取ることができたので感想をつづります。
本書の内容をざっくりいうと、複雑で不安定な時代におけるビジネスの意思決定に必要な能力は「美意識」であるということ。
なぜかというと、「現代は市場の欲求が多様化」し「ルール制定が追いつかないほど変化が速い」時代なので、経営やイノベーションといった意思決定において、分析や論理といったサイエンスにもとづいた意思決定だけでは、解にたどりつけません。
さらに、他企業の意思決定もサイエンスにもとづいているため、皆が同じ結果に行き着き、差別化することができません。
そこで必要となるのが「真・善・美」の感覚で、論理を超越した「美意識」をもとにしたアートの意思決定がカギとなります。
もっと具体的に「美意識」とはどのような能力かというと、以下の三つです。
・物事をパターン化しない
・物事をありのままに捉える
・直観力
これらの能力が高まることで、サイエンスに頼ったアプローチとは別の回答が出せる可能性を高めることができます。
そして朗報なのが、「美意識」は鍛えられるということ。
本書では以下の三つのトレーニングがすすめられています。
・哲学を学ぶ
・文学を読む
・芸術作品鑑賞
個人的に興味深かったのが、「哲学」についての項目。
過去の哲学者が生み出した「コンテンツ」自体の価値はなくなってしまったかもしれませんが、「思考プロセス」からはいまでも学べることがたくさんあるとのことです。
たしかに、当時支配的だった考え方や常識について、いかに過去の哲学者たちが疑いの目を向け、考えたかということは「現状を打破」するためのヒントを与えてくれそうです。
また本書では、つねに「正解」が与えられる日本教育のリスクを指摘しています。
そんな日本教育にどっぷりと使ってきた自分自身の危うさを感じることができ、いい意味でモチベーションをあげることができました。
さいごに、本書を読んでいるとダニエル・ピンクのベストセラー『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』を思い出しました。
ハイ・コンセプトで語られていた以下の三点が、本書でいうところの「美意識」にも通じるものを感じました。
・機能だけでなく、消費者がときめく「デザイン」
・議論より相手を納得させるだけの「物語」
・真面目なだけでなく「ユーモア」
差別化するための能力としての「美意識」。
その理由と、鍛え方を伝授してくれる本書は、他人と差をつけたいビジネスマンにピッタリの本だと思いました。
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