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レビュー『天才』イェール大学人気講義

イエール大学の学部人気講義を書籍化したもので、原題は『The Hidden Habits of GENIUS』と、「天才たちの隠れた習慣」について焦点があてられています。

登場する天才たちの分野は幅広く、アインシュタイン、キュリー夫人、ホーキング博士といった科学者、イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズのような実業家、シェイクスピアやヴァージニア・ウルフなどの作家、レオナルドやゴッホ、草間彌生などの芸術家、モーツァルト、ベートーベンといった音楽家、レディ・ガガやカニエ・ウェストのような現代のアーティストから、エリザベス1世やチャーチルのような政治家まで。

彼、彼女らの特徴的な思考や行動パターンを明らかにしていくので、クリエイティブになりたい人、自分の才能を開花させたい人にとってのヒントが満載です。

天才とは?

本書では、天才を以下のように定義しています。

天才とは、精神力が並外れていて、その人独自の業績や見解が、文化や時代を超えて、良くも悪くも社会を大きく変革する人を指す。

p15

長期にわたって、最大公約数の人に最大のインパクトを与える人とも言えそうです。

キーとなるのは創造力と創作物なので、ちまたで天才といわれているヨーヨー・マ(ベートーヴェンのように楽曲を創造してはいない)、フェデラー(競技自体を創造してはいない)、ウォーレン・バフェット(財産を蓄えることと、変化をもたらすことは違う)といった人たちは、本書から除外されています。

様々な分野の天才のエピソードが語られますが、個人的にはダ・ヴィンチが研究対象なので、ダ・ヴィンチにフォーカスして、学んだことをまとめます。

ダ・ヴィンチ=好奇心のバケモノ

本書のなかで、ダ・ヴィンチがまるまる取り上げられているのはレッスン5「強い学習意欲を育てよ」の章で、好奇心のかたまりという副題がついています。

ダ・ヴィンチは非嫡出子として生まれたので、ローマ・カトリック教会の正式な教育システムに受け入れてもらえませんでした。

そのため学校には通いませんでしたが、強烈な好奇心をもとに、経験から学ぶタイプの天才になることができました。

67年の生涯で完成させた絵画は25点以下と少ないですが、メモとスケッチ、下絵は10万点ほど。

それは、作品を仕上げるよりも、知ることに対する強い欲求があったため。

また、絵画を描くためにダ・ヴィンチは、一歩下がり「わたしが描いているのは、一体何だろう?この生体はどのように機能するのだろう?」と自問していたようです。

その答えを知るためにはじめたのが人体解剖。

ダ・ヴィンチは遺体からはなたれる悪臭をも気にせず、解剖図を描きました。

それにより、ダ・ヴィンチが人類ではじめて、静脈硬化、見えるという現象は、目の1点ではなく、網膜全体に拡散する光のプロセスであること、心臓には2つではなく、4つの室があることを発見。

ちなみに、ライバルであるミケランジェロは4年間、1日16時間、ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂で天井画を描いていましたが、そのことを嘆くことはありませんでした。

天才は、悪臭や長時間労働といった一般の人が感じる不快感を、ものともしないほどの好奇心をもっていたことが分かります。

目次と学び

それぞれの章のタイトルと、その章から学んだことを、簡単ではありますがまとめます。

LESSON 1 先天的か後天的か?~知能指数(IQ)と多重特性指数(MQ)
・天才はランダムに出現
・IQは関係ない
LESSON 2 天才とジェンダー~ゲームは不正操作されている
・女性は自分の価値を過小評価している
・ジェンダーバイアスは文化であり、遺伝による才能の欠如ではない
LESSON 3 神童の幻想を捨てよ~20歳過ぎればただの人!?
・ほとんどの天才が神童ではなかった
LESSON 4 子どものように世界を想像してみよう~大人になんてなりたくない
LESSON 5 強い学習意欲を育てよ~好奇心のかたまり
・経験で学ぶか、読書から学ぶかの2種類
LESSON 6 足りないピースを見つける~ぼくを探しに
・世間とは異なる目で世の中を見ており、物事が正常な状態におさまるまで、落ち着くことができない
・幸せは、それを達成することではなく、それを探し求めることにある
LESSON 7 他人との違いを活用せよ~狂気、疾患、特性
・天才の1/3は重度の気分障害を患っている
・多くの天才が、一般の平均よりも10年ほど長生き
・「うまくいく方法」を探すのが、天才のミッションであり、情熱であり、おそらくは強迫性の執念
LESSON 8 反逆、不適応、そしてトラブルメーカー~リスクを恐れない
・現状を肯定しない
LESSON 9 キツネになれ~あちこち幅広く嗅ぎ回る
LESSON 10 逆転の発想をせよ~クリエイティブであるために
LESSON 11 運をつかめ~実力だけでは認められない
・天才になる可能性を広げるには、大都会、あるいは大学のある街に移住する
LESSON 12 すばやく動いて、ぶち壊せ~破壊的な衝動が牙をむく
・何かを壊す習慣
LESSON 13 リラックスせよ~最高のアイデアが頭に浮かぶ
・散歩、乗り物にのる
LESSON 14 そして、集中のとき!~自分にぴったりの場所と時間

おわりに

クリエイティブな生き方がしたい場合、どういうことをすればよいかがわかりやすく説明されており、参考になりました。

天才の性質や特徴を明らかにする面白い本で、分厚い本ですが、天才たちのエピソードと、そのエピソードから導き出される「天才の資質」はわかりやすく、読みやすかったです。

正解のない時代、いかにクリエイティブになるかのヒントが盛りだくさんで、楽しめました。


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