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レビュー『限りある時間の使い方』

全米ベストセラー本のご紹介。

一言でいうと時間術の本なのだが、凡百の本が「効率」や「生産性」に着目していることに対して、本書は「人生の有限性」に焦点をあてている。

時間に関してのおおくの人の誤解を解き、目を覚ましてくれるという点で、本書は間違いなく良書。

やりたいことが多すぎて、何をしたいかが定まらない大学生や、時間に追われている若手社会人にぜひ読んでほしい。

人生の早い段階で時間に関しての意識を変えることができたら、人生の後半戦に活きてくるだろう。

原題は「FOUR THOUSAND WEEKS -Time Management for Mortals」で、直訳すると「4000週間 ー 命に限りのある人間のための時間術」。

人の人生を80年とすると、約29,200日。

週にすると、たったの約4,000週間しかない。

ただでさえ4,000週は少ないにも関わらず、残り時間が減れば減るほど、時間が経つスピードまで加速してしまう。

こういった「人生の残り時間」について深く考えるのは、死にかけたことがある人くらい。

しかし、死にかけた経験がなくても、本書は人生の有限性を意識することを助けてくれる。

まずは「すべてのことを終わらせる」という強迫観念を捨て、自分の残された時間を受け入れたうえで、そこから有意義な人生を築くことが重要だ。

なぜなら、やるべきことはいつでも多すぎ、これから先もきっと変わらない。

有意義な人生を築くための唯一の道は、「全部できる」という幻想を手放し、ひと握りの重要なことだけに集中することだけ。

本書のなかでも、特にウォーレン・バフェットのアドバイスが有用だと感じた。

それは、「人生でやりたいや成し遂げたいことのトップ25をリストアップし、それをもっとも重要なものから重要でないものへと順番に並べる。そして、そのうち上位の5つに時間を使。残りの20項目は捨て、一切手を出さないようにする。」というもの。

ここで重要なのは「捨てる20項目」で、何を手をつけないかを明確に決めることにより、本当に重要なことに時間を使うことができる。

このように、「限りある人生を生きる」とは、「いつでも可能性に別れを告げる過程」であるといえる。

また、本書は「効率性への戒め」としても有用だ。

効率化の先に休息はなく、さらなる忙しい日々が待っていると教えてくれる。

人々は、いま取り組んでいる仕事に区切りついたら、それから楽しもうと妄想しながら日々を暮らしている。

今を楽しまずに、未来のために効率化に精を出すが、やればやるほど苦しくなっていく。

忙しくなければいけないという思い込みから解き放たれ、未来のために一日一日を犠牲にする生き方ではなく、今を大切にしながら生きる方法が本書では説かれている。

本書で読んでハッとさせられたのが「余暇を無駄に過ごすことこそ、余暇を無駄にしないための唯一の方法」だ。

「怠けることは単に許容されるだけでなく、人としての責任だといっていい」と、怠けることを肯定し、「一度きりの人生を存分に生きるためには、将来に向けた学びや鍛錬をいったん忘れる時間が必要だ」と、生産的な時間を過ごすだけでは、良い人生を生きられないと諭してくれる。

この教えはぼくだけではなく、休日にダラダラと過ごし、日曜の夜に後悔している大学生と社会人に救いをもたすだろう。

世の中には、生産的になるための「ライフハック」があふれているが、本のタイトルに「限りある時間」とあるように、人生は有限であることを深く考えさせられた。

古今の哲学や心理学を駆使し、ウィットに富んだ語り口で、時間と時間管理を問い直しており、楽しく読み進めることができた。

人生の折にふれて、大事なことを忘れていないか?と自戒の念を込めて読み返したい。


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