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レビュー『ウェブで学ぶ』

2010年に出版された本なので少し古いが、内容はまったく色あせていない。

人生100年時代となり、なおかつ技術や知識が陳腐化するスピードも激しい現在では、「学び続ける」ことが何よりも重要。

そのための場所として、学校や塾だけでなく、それ以外の場所として「オープンエデュケーション」が、個人が一生学び続けるこのできる、次世代教育環境といえる。

そんなオープンエデュケーションは、学ぶ機会を、世界中の人たちのために最大限に増やすという、「壮大な教育イノベーション」だ。

本書ではオープンエデュケーションを利用した学びの可能性と、その方法について書かれている。

教師はもちろん、子供の教育や進路について考えている親や、学び続けたい社会人にもおすすめ。

オープンエデュケーションの特徴「多種少量」

もともとのはじまりは、MIT(マサチューセッツ工科大)が、学部、大学院課程の2000近くの科目の教材を無償で公開したこと。

オープンエデュケーションの特徴は、従来の学校教育との比較で語られる。

これまでの義務教育や学校教育で提供されている教育モデルを「小種多量」といわれる。

供給するコンテンツは限られてはいる(小種)が、対象者は多くいる(多量)という意味だ。

一方のオープンエデュケーションは「多種少量」だ。

多くのコンテンツを供給する(多種)が、それぞれに興味を持つ人は少ない(少量)。

テクノロジーの進展により、従来の教育をより多くの人に届けることが可能となる。

そして、供給者自体の多様化も可能となり、従来の「小種」の教育内容を、「多種」に拡張できる。

学びに必要な強制力

既存の「学校」という教育システムの強制力が機能しにくくなっているという現状を考え併せると、オープンエデュケーションが普及していく中で、より多くの人たちが望む教育を受け確実に知識や能力を習得するために、「一体どのような新たな「強制力」が必要となり、またそこにどのような新たな「教えと学び」の可能性が開けてくるのか」を考えるのはとても重要だと思います。(p.181)

従来の教育には、テストや論文提出期限のような「締切」が存在した。

オープンエデュケーションには、自分のペースで学んでいけることは大きなメリットだが、締切がないことによって、課題をなかなか終わらせることができないというデメリットがある。

現在「42 Tokyo」でプログラミングを学んでいるが、「時間の強制力」の重要性はひしひしと感じる。

知的好奇心が高く、学ぶ対象が自分の好きなことであっても、「締切」が必要だと考えている。

というのも、「締切」がなければいつまでもコードをいじり倒し、改良を加えることができるからだ。

個人的には自分で設定した「締切」を、まわりの友人に公開する、ということをしている。

また「42 Tokyo」では、「ブラックホール」という、退学までの残り日数が、学ぶための「強制力」として働いている。

こういった「強制力」については、オープンエデュケーションの成功の鍵となるので、他の成功事例なども追って探っていきたい。

著者紹介

著者は、『ウェブ進化論』で著名な梅田望夫氏と、MITでウェブによる教育をすすめている飯吉透氏。

本書は、両氏によるオープンエデュケーション教育論についての本だ。

構成としては、まずは飯吉氏がアメリカやヨーロッパの大学の実例を交え、インターネットの教育利用の成り立ちから現状までを紹介。

そして、梅田氏がそれらを支える社会や技術を解説。

最後に、オープンエデュケーションの現状や可能性について対談、という内容になっている。

おわりに

コロナ禍以降、教育のオンライン化が進むなかで改めて読んでみたのが、相変わらず面白く読めた。

帯にかかれた「ウェブ進化 × 教育の進化 = 無限の可能性」と、実際の事例を書かれた内容が非常に示唆に富む著書だ。

学ぶモチベーションにウェブなどの新しいテクノロジーを組み合わせれば、いろいろな可能性が開けると実感できる本だった。


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