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レビュー『お金の悪魔: フェおばさんの経済学レクチャー』

ロングセラー『数の悪魔』の著者による経済学についての本。

著者のエンツェンスベルガーさんは1929年生まれでドイツ知識人の頭脳と呼ばれ、2022年11月24日に享年93歳でお亡くなりになられました。

本の内容は、大金持ちのフェおばさんと、3人の子どもたちのおしゃべりを通して、お金の歴史をひもときつつ、現代の世界経済を考察するというもの。

「経済学レクチャー」と副題にありますが、教科書的なものではなく、物語を楽しみつつ、借金や破産、分業、限界効用、景気、貧困にといった、お金にまつわる事柄について考えるきっかけを与えてくれます。

「大切なことは、お金で何をするつもりかではなく、お金が私に何をするのかなのだ」といった哲学的な記述がおおく、人間というものの本質について考えさせられます。

一番面白いと思ったのが、、「時間とは何か?」と聞かれたアウグスティヌスが、その質問をされないかぎり、時間とは何か知っているのに、もっと詳しく教えてと言われると、誰も時間とは何か説明できないと答えたこと。

お金についてもまったく同じことがいえるとフェおばさんは語ります。

また、欄外に引用されているお金についての著名人の言葉も面白く、以下の言葉が胸に響きました。

哲学者たちは富を軽視した。それは、貧困による屈辱からみずからを守るための策略だった

お金とは、硬貨に鋳造された自由である。

ドストエフスキー『死の家の記録』


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