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いくつになってもフーセンガムは必要だ

「フーセンガムができたら、付き合ったげる。」

小学校のころ、気になる女の子から放たれた言葉です。

なにゆえにフーセンガム?

そんなに流行ってたいたのか?

いまとなってはツッコミどころ満載ですが、そもそも、どのような話の流れで「フーセンガム」と「付き合う」ことがでてきたのか、まったく思い出せません。

いずれにしても、小さなぼくを奮い立たせるには、十分な言葉でした。

もちろん、その女の子が提示した「フーセンガムができる」とは、「フーセンガムを使って、フーセンを作ることができる」ということ。

そして、フーセンガムの代名詞といえば、紙の小箱に入った小粒のガムではなく、すこし大人な感じがする「バブリシャスガム」。

買い物のときに、母にバブリシャスガムを買ってもらい、特訓がはじまりました。

まずはバブリシャスガムを1つ口に含み、膨らませるのにちょうどいい固さになるまでアゴを動かします。

そして、舌と、口のなかの天井ともよべる部分で、ガムを平らになるようプレスし、そのガムを歯の内側にたてかけ、舌を前方につきだし、ガムを少し伸ばします。

最後に、舌でつくったガムのくぼみに向かって、息をいれていく。

繰り返していると、自分なりにコツのようなものが掴めてきました。

ガムを噛み始めて、味がなくなるタイミングがフーセンを作るのにちょうどいいころ合い。

1個のガムよりも、2個や3個のバブリシャスを噛んだほうが、フーセンが作りやすくなることもわかりました。

夢中で取りくんだためか、意外とあっさりとフーセンを作ることができたような気がします。

そして、ただフーセンを作ってもつまらないと思い、フーセンの中にフーセンを作る、2重フーセンにも挑戦。

練習のおかげで、2重フーセンもいつの間にかできるようになっていました。

しかしその後、気になる女の子にフーセンを見せた記憶がありません。

女の子の家も離れており、そもそも彼女がどこに住んでいるかも知らなかったため、彼女と会えるのが学校だけ。

当然ですが、学校にお菓子を持っていってはいけませんでした。

そんな学校のルールを優先したのか。

彼女も約束を忘れしまったのか、そして、ぼくも本気ではなかったのか、ただ恥ずかしかったのか。

その女の子との思い出は、冒頭の言葉以外、フーセンガムのように記憶から弾け飛んでしまいました。

残ったのは、フーセンガムを生み出すスキルと、フーセンガムを作ると味わえる、少しだけ幸せな気持ちです。

思い出したら懐かしくなってきたので、とりあえずフーセンガム買ってきます。

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