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レビュー:作家のお金事情をつらつらと『お金本』
本書は作家や詩人らのお金をめぐるアンソロジー本。
文豪といわれる人たちでさえ、生計を立てることがどれほど難しいことだったかが分かります。
文豪や偉人の金銭感覚、懐具合に興味がある人にとっては参考になり、お金とのつきあい方を見なおしたい人に良いきっかけを与えてくれます。
本書には100篇の文章が収録されており、たいていは数ページ程度の短いもの。
お金に対する想いが、日記、手紙、エッセイ、漫画と、さまざまな形で垣間見ることができます。
さすがは作家というべきでしょうか、それぞれが読み物としての魅力を放っており、飽きることがありませんでした。
お金がないことを嘆く文章がほとんどですが、なぜか不思議と悲壮感は感じません。
貧しい時代があったという話をつうじ、それぞれがどのような覚悟を持って生きていたのかを知ることができます。
たとえば、作家の村上春樹さんは、
自慢するわけじゃないけれど、僕は昔かなり貧乏だったことがある。結婚したばかりの頃で、我々は家具も何もない部屋でひっそりと生きていた。ストーブさえなくて、寒い夜には猫を抱いて暖を取った。(中略)我々は若くて、かなり世間知らずで、そして愛しあっていて、貧乏なんて全然怖くなかった。大学を出たけれど、就職なんかしたくないやと思ってけっこう好きに生きていた。客観的に見れば世の中からおちこぼれていたようなものだけれど、不安というほどのものもなかった。でもまあ、とにかく貧乏だった
と語り、夜中に3万円を拾って、借金を返したこともあるそう。
事実は小説よりも奇なりといいますが、村上春樹さんが書く小説とおなじぐらいに、彼のライフストーリー自体も魅力的です。
お金について悩む文豪たちの姿が、微笑ましくさえあります。
そして、巻末の資料も圧巻。
作家の年代別の年収ランキングでは、松本清張さんと司馬遼太郎さんが稼ぎまくっていたことが分かりました。
また、一カ月に何枚を書き上げたのか番付もあります。
谷崎潤一郎さんは月に140枚と、1日あたり5枚のペース。
志賀直哉さんは月に3枚と、10日に1枚のペースで、作家ごとの違いを楽しめました。
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