レビュー『絵本作家になりたくて ぐーたらブー子の奮闘記』
当時30歳だった著者が、34歳で絵本作家デビューするまでのコミックエッセイ。
美大も出ておらずコネもない著者が、一念発起して福岡から上京し、いかにして絵本作家としてデビューしたかが描かれています。
絵本作家になりたい人はもちろん、絵本業界について知りたい人や、絵で食べていきたい人にとって参考になる本です。
絵の修行
本書には、きむらゆういち氏、宮西達也氏、内田麟太郎氏といった、ベストセラー絵本作家のインタビューも掲載されており、お得感があります。
著者が実践していた絵のトレーニングで興味をひいたのは、「好きな画家の絵を徹底的に模写し、模写した絵をさらに模写する」というもの。
「好きな画家の絵を模写する」ことは、よく聞くトレーニングですが、「自分が描いた模写の模写」という練習法は、はじめて聞きました。
この特訓をすると、自然と自分らしい絵に仕上がっていくそうです。
また、「日常にアンテナをはって作品に活かす」ということも著者は実践しており、どこでもすぐにメモをとっていたようです。
絵本の数字
本書では、ふだん目にすることがない、絵本業界についての数字も紹介されており、好奇心を刺激されました。
たとえば、1年間に出版されている児童書の数は約5,000冊。
つまり、毎日13冊の児童書が出版されているということになり、競争の激しさを物語っています。
そして、初版は完売して、せめて二刷にならなければヒットとは言えないとのこと。
プロならば、当然ヒットを打たなければいけません。
また絵本の場合、初版は3,000~5,000部が一般的とのこと。
売れ行きがよければ、1,000~2,000部ずつ重版していくようです。
おわりに
絵本作家への道をストレートに進んだわけではない著者が、紆余曲折ありながらも、最後にはデビューをはたす物語に引き込まれました。
途中、たこ焼き職人を目指してみたり、霊感が強いお金持ちの不思議君とデートしたりと、プライベートも語られます。
そして、モチベーションセミナーにダマされたり、自費出版をすすめてくる出版社から逃げたり、といった面白い話がのっており、楽しませてくれました。
最後になんといっても、巻末の情報に圧巻されました!
絵本の種類や、絵本製作のステップや、編集者に読まれる企画書の書き方、持ち込みする際のポイント、お金、絵本コンテストといった情報が満載で、これだけでも一読に値します。
コミック形式なので読みやすく、著者の苦労や頑張りが、リアルに伝わってきて胸にぐっときました。
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