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入院中に再会した人

私にとっては再会。しかも約20年ぶりの。
彼にとっては初めまして。会ったときは3、4歳だったから私の記憶はないらしい。
50手前の私のお見舞いに、遠くから一人で来てくれた20代半ばのKくんは、私の大切な友人の長男。思いがけないお見舞い客だった。

友人が次男を出産したとき、私は隣の分娩台にいて、お隣さんの後に続けと長女を出産。それ以来の仲だ。以前にもnoteで触れた人。
お互いの家を行き来すると、3つ上のお兄ちゃんのKくんが、赤ちゃんだった長女とよく遊んでくれた。
そんな平和な時間を共有した後、彼女に多くの荒波がかぶさってくる。
一人で子育てすることを選んだ彼女は、環境を整え猛勉強を開始。
40代で医療従事者になり未知の世界に飛び込んだ。

あの時3、4歳だったお兄ちゃんが背の高い立派な青年になって、なぜ私のお見舞いに来てくれたかというと。
「ウチは子どもがすごい苦労する家庭環境になっていた可能性だってあったのに、母がそうはさせなかった。ウチの母親賢いし、逞しいんです。苦労してたのかもしれないけど、そういうの見せなかったです。だから母には本当に感謝してて。頭が上がらないです。」とKくん。
彼の側から見た母としての友人の姿が、私が見てきた姿となんら変わらないことが嬉しかった。荒波にあっても常にベストを尽くす彼女の人生の舵取りを、心から尊敬してきたから。

Kくんは続けた。
「そんな母の大切な友だちでいてくれた人がご病気と聞いて、お見舞いせずにはいられなくて。来ちゃいました。」
そして、Kくんセレクトの可愛い靴下をプレゼントしてくれた。
その後は、彼の学生時代の話や仕事に対して思うこと、坊やだったころの彼にまつわる思い出話なんかを2時間近く語り合った。
最後に握手して別れた。

なりたくもない病気でしたくもない入院中だけど、とても良い日だった。
舵取り友人と、闘病中の私、2人分の頑張りが祝福されたような時間だった。私は20代半ばで、あんなふうに親に感謝できなかったな。

靴下はさっそく使用。「ずいぶん可愛い靴下履いてますね」と看護師さんや放射線技師さんに言われる。その度「でしょでしょ?イケメンにいただいたのよ♡」と大自慢している(それくらいは許されるはず)。


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