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#ウェルネス ブッククラブ『私と小林緑』

ヘルスケアやウェルネス媒体にしてライターをしている桑子麻衣子です。この【ウェルネス ブッククラブ】では、無類の本好きの私が、本の世界から気づいたウェルネスのヒントをシェアします。

小林緑と聞いて、首をかしげる方ももしかしたらいるかもしれません。

「小林緑?」
「どこかで聞いたことあるな」
「どこにでもいそうな名前」

私がここで話している小林緑は、村上春樹さんの代表作の1つ『ノルウェーの森』に出てくる小林緑です。

小林書店の次女で、
緑色の洋服は似合わなくて、
お姉さんの名前は桃子(お姉さんはピンクがすごく似合うんだとか)、
料理上手で、
変な歌を作詞作曲して、
入院中のお父さんの看病をしていて、
下ネタが好きで、
主人公のワタナベくんを振り回す、
小林緑さんです。

私が最初に『ノルウェーの森』を読んだのは、高校生の時でした。正直言って、高校生の私が理解するにはハードルの高すぎる内容で(なんせ「死と性」についてかかれた内容なので)、最後まで一応読み終わったけれど、全くの消化不良に終わったのをよく覚えています。

内容もそうだし、ワタナベが作中の中で言うように、どうして直子が死ななくてはいけなかったのかどうしても理解できませんでした。

そして、一番消化不良だったのが、小林緑の存在でした。ワタナベが彼女に優しくすることが許せなかったし、彼女が物語に登場する度にイライラしたし、なんて厄介な存在なんだろうと思いました。私になにか危害を与えられたわけでも、会ったことも、むしろ架空の人物である小林緑に対して抱く負の感情の理由は、おそらく私が直子派だったからだと、私は長年考えていました。

それから、何度かノルウェイの森を本で読み、
何なら水原希子さんが演じているなら小林緑もよく見えるかもしれないという理由で、クリスマスに一人で茅ヶ崎の映画館を訪れて、映画ノルウェイの森を見ましたが、それでも小林緑という人物には違和感というか、喉の奥に刺さった魚の骨のようなつっかかりを感じずにはいられませんでした。

そして、最近オーディブルで妻夫木聡さんがナレーションをしているノルウェイの森を聴いて、気づきました。

小林緑は、私なんだということを。
私が私自身に抱く苦手な部分や嫌いな部分をそっくりそのまま持っているのが小林緑だということを。

自分には、直子の部分もあり、小林緑の部分もあるんだということにようやく気づきました。

直子と緑は、比較対象として作中で描かれていると私は考えていますが(色々な意見があると思います)、比較つまり180度異なる(ように見える)性質を私自身の中に備えていることを受け入れることが長年できなかったのかもしれません。

それって、矛盾しているようだから。けれど、矛盾があるから、人としてのバランスが取れるのかもしれません。

今週の本: 『ノルウェイの森』
37歳のワタナベは、ハンブルク航空に到着した飛行機のBGMでビートルズの「ノルウェイの森」を聴き、激しい混乱を覚え、学生時代のことを回想する。

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