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物語が見事に表現されている 『Ghost Stories』 COLDPLAY

コールドプレイが来日しますね。私も「もしチケットが取れれば」と思っていましたが、東京ドームの2日間、全く無理でした。ライブ参戦率の高い東京在住の友人も全滅したそうで、その人気には驚くばかりです。

コールドプレイはロンドン出身の4人組。学生寮で出会った4人は1997年にバンドを結成し、2000年に『Prachutes』でデビューしています。

この1stアルバムから “Yellow” が大ヒット。そこからの快進撃はまさしく21世紀を代表するバンドといった感じで、今日までメンバーチェンジすることなく活動を続けています。ここまで全9作が全英1位を獲得、総セールスは1億枚以上だそうで、現在だと世界最大のバンドと言ってもいいのではないでしょうか?

私も初めて “Yellow” を聴いたときからファンでして、「英国っていうのはいつになっても力のあるバンドが出てくるもんですな」と感心したのを覚えています。当初はピアノの美しさが際立つ曲が印象的でしたが、途中からはジャンルを超えた、言ってみればなんでもありのポピュラーミュージックという感じ。もはやバンド感のないものが増えていますが、良い音楽を作る為に制約はないということなのでしょう。

そんな中で、初めて聴いた時には「もうドラムらしい音は聴こえないな」とその変化に驚きながらも、現在まで愛聴しているのが6作目となる『Ghost Stories』(2014年)です。

ヴォーカルのクリス・マーティンがグウィネス・パルトロウと離婚した頃で、その影響が感じられる内省的なアルバムです。つまりは悲しく暗いんですが、繰り返し聴くほどに染みてくるものになっています。音が少なくなっている分、ひとつひとつの音が丁寧に配置されている印象です。

⑴ Always In My Head は暗いアルバムを象徴するかのように静かに始まりますが、相変わらずジョニー・バックランドのギターが奏でる旋律は美しいです。様々な解釈が可能だろうと思いますが、いずれにしても「クリス、かなりダメージ受けとんな」と感じる曲です。

⑵ Magic を聴いた時には「マッシヴ・アタックか?」と戸惑いましたが、少し大きめの音で聴いたらめちゃくちゃ好きになりました。ジョニーのギターが静かに入ってくるのが美しすぎてシビレます。“With Or Without You” を彷彿させるほどです。


やっとコールドプレイっぽさを感じられる ⑶ Ink から、美しい ⑷ True Love へ続きます。切ないを超えてもはや女々しいというくらいの歌ですが、ここでもジョニーのギター・ソロは素晴らしいです。

⑸ Midnight はInterlude的と言うにはしっかりとした長さがありますが、ある意味このアルバムの雰囲気を最も表しているかもしれません。

⑹ Another's Arms であらためて喪失感について考え、1stや2ndの雰囲気を感じる曲調の ⑺ Oceans が(歌詞的にも)我々をしっとりと落ち着かせた後、いまや祝祭的場面の定番とも言えそうな ⑻ A Sky Full Of Stars が高らかに響き渡ります。

「いやー、ここまでの曲は全部フリだったんかな」と思うくらいに吹っ切れたこの曲は、亡くなったAviciiとの共作でEDM全開なわけですが、ライブ映像なんかを観ると好きも嫌いも超えて「今世紀最高に問答無用でアガる曲かもな」と思います。映像は私の愛するリーベル・プレートのエル・モヌメンタルで、ライブっていうのは今やこんなことが可能なんですね。

そして最後、⑼ O は正確に表記すると “Fly On - O” ということになると思いますが、あれだけブチ上がった後に初期のようなピアノが美しい “Fly On” がくる流れは本当にニクいです。

そして、曲はアルバム冒頭に繋がっていくかのような “O” に移り変わり、静かに終わっていきます。

出会いと別れ、それによる喪失感や痛み。それでもそれらを受け入れてまた進む物語が見事に表現されていると思います。


と言いつつ、私が最も好きなコールドプレイの曲は今のところ、『X&Y』収録の “Swallowed In The Sea” です。失敗作との評判もあるアルバムに入っていますので、まだ聴いていない方がいるかもしれません。ぜひ。




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