見出し画像

もっと成功してもよかったと思う 『Tangled in Reins』 STEELHEART

Steelheartはなんと言っても1stアルバムで語られることが多いですし、代表曲は文句なく「She’s Gone」になると思います(Spotify再生回数も断トツ)が、それでも2ndアルバム『Tangled in Reins』の扱いはもうちょっと良くてもいいと思います。

1992年に発売されたこのアルバムを購入するきっかけは、当時のBURRN!編集長だった酒井康氏のラジオ番組『HMシンジケート』で ⑻ Steelheart を聴いたことだったはず。

1stの印象と違い、「何これ⁉︎ めちゃくちゃハードロックじゃない!」と釘付けになり、レンタル店に入荷するのを待つことなくCDを買いに行きました。

気に入るのが ⑻ だけでも構わないくらいのつもりでしたが、他も良曲ばかりで思っていた以上に繰り返し聴きました。極めて良質で、ちょうどいい陽気さを持ったアメリカン・ハードロックだと思います。

動機となった⑻はもちろんのこと、⑴ Loaded Mutha(終盤の盛り上がりは最高)やバラード ⑸ All Your Love 、⑹ Love ’em And I’m Gone(サビの高揚感、素晴らしい)などは、まだ車にCDプレーヤーがなかったのでラジカセでテープにダビングして、ドライブしながら何度も聴いたものでした。

⑶ Electric Love Child は当時、「はいはい、お決まりのLed Zeppelin風ね」と、今ほどLed Zeppelinを聴き込んでもいないくせにわかったつもりでいましたが、いま聴くとSteelheartの良さがうまく加えられていて、バンドの演奏もカッコいいです。
 
Steelheartはどうしてもマイク・マティアヴィッチのヴォーカルに話題が集中しましたし、実際マイクはすごいわけですが、このアルバムでのバンド演奏は相当なものだと思います。ギター誌で取り上げられているのを見た記憶はありませんが、クリス・リゾーラのギターは十分にテクニカルで、起承転結のある良ソロが聴けます。

そして、⑼ Mama Don’t You Cry が収録されていたのは望外の喜びでした。ピアノ主体で進むこのバラードはとても美しく、フィーリングあふれるギター・ソロも素晴らしいです。もちろん、マイクのヴォーカルは最上級です。個人的には「She’s Gone」よりも遥かに好きな曲です。

もっと成功してもよかったアルバムだと思うのですが、発売が1992年というのはおそらく不運でした。その前年は“奇跡の1991年”となっていて、Nirvanaの『Nevermind』やPearl Jamの『Ten』が発売され、グランジ・ムーブメントが到来。Metallicaもそれまでと違ったグルーヴ重視の曲を並べたブラック・アルバムが激売れ。まさしく時代の潮目が変わりつつある時だったように思います。

そんな中で発売となった本作は「ダサい」と判断されてしまったのかもしれません。Rage Agaist The Machineの1stアルバムも発売となるこの年に ⑵ Sticky Side Up や ⑷ Late For The Party のようなパーティ・ソングも含まれた本作を聴くことは、(特にアメリカでは)きっと居心地が悪かったでしょう。

アルバム・ジャケットだけはそんな時代に寄せたのか、中身と合っていないダークな感じになっていて、それが本作を分かりにくくしてしまっています。後追いで聴いてみようとしている人にも選んでもらいにくいジャケットになっているように思います。

それに加えて本作のツアー中にヴォーカルのマイクが事故(照明器具が落下したとか…)に遭ってしまったようで、ツアーは中止。振り返ってみると残念な要素が多いです。

最近、「入手困難盤復活!! HR/HM 1000キャンペーン北米編」として全78タイトルが1000円で発売されるそうなのですが、その中に本作が含まれていました。やっぱり入手困難盤扱いだったのかー。

世の中には後に再評価され名盤扱いとなるアルバムがたくさんあります。そこまでとは言いませんが、あの頃の陽気でゴキゲンなハードロックが好きな人にはたまらないアルバムのはずです。もう少しだけ見直されて、より多くの人に聴いてもらえるようになればと願う次第です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?