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美しいトーンから変態的なスタイルまで堪能できる 『Time Machine』 JOE SATRIANI

ジョー・サトリアーニの代表作と言えば『Surfing With The Alien』か、もしかするといまなら「カンブリア宮殿」でお馴染みの「 Crowd Chant」が収録されている『Super Colossal』かもしれません。

私が1枚選ぶなら『The Extremist』か『Is There Love In Space?』になりそうですが、noteでは出来る限り「代表作ではないかもしれないけれど、これも聴いてみてほしい」と思うものについて書きたいと思っていますので、今回は『Time Machine』について取り上げてみます。

1993年にリリースされた2枚組の『Time Machine』は、Disc 1が新曲、未発表曲、1984年のEP収録曲などのスタジオ録音、Disc 2が1988年から1993年までのライブで構成されています。

Disc 1はいささか寄せ集め的な側面もある分、ジョーの多様なスタイルを聴くことができますし、Disc 2はそれまでの代表曲を知るのにも良い選曲ですので、スキンヘッドになる前のジョー・サトリアーニを知る意味ではとても良い2枚組になっていると思います。

⑴ Time Machine のイントロからして「そこらへんのギターインストとはひと味違うものが始まった」と胸が高鳴ります。ソロパートも緊張感溢れる展開でドラマチック、この曲だけでも「買った甲斐があった」と満足出来ました。

⑺ Speed Of Light はバイクや自転車による旅番組で多用されている出発ソングで、ジョーお得意のハネた疾走感(ドラムはプログラミングなのに!)を満喫できます。車でよく聴いたものでした。

そのトーンが浮遊感を際立たせる ⑷ Banana Mango や、ジョーお馴染みのギターバラード ⑸ Thinking Of You 、⑻ Baroque 、⒀ Saying Goodbye に加えて、異常なテンションでその変態ぶりが全開になる ⒁ Woodstock Jam(ドラムはサイモン・フィリップス)と、本当に様々なスタイルの曲が詰め込まれています。

Disc2は⑴ - ⑽ までが1992-93年にグレッグ・ビソネットとマット・ビソネットと、⑾ - ⒁ が1988年にジョナサン・ムーヴァーとスチュワート・ハムと行ったライブになっています。

もちろん、どの曲もどちらのバンド編成でも素晴らしいライブ演奏でその巧さにはひれ伏すばかりなのですが、中でもお勧めしたいのが ⑽ Rubina です。ジョーのギターはまさしくエモーショナルで美しく、いつ聴いても感動します。

ビソネット兄弟もとにかく素晴らしく、バンドの音も最高です。この日のこの曲が録音されて、このアルバムに収録されたことで恒久的に聴けるようになった幸運に心から感謝しなければなりません。

そして今回、改めてこの2枚組を聴いて思ったのは、インストなのにかなり細かいところまで覚えていて、それはジョー特有の歌えるようなソロパートというのもあると思いますが、あの頃は買ったCDを本当によく繰り返し聴いていたんだなと懐かしく思い出しました。

「Rubina」はサンフランシスコでのライブ盤にも収録されているのですが、私は本作の方が好きでして、それは演奏の良し悪しというよりもこの頃にアホほど聴いていたからなんだろうと思います。繰り返し聴いて馴染んでしまったものを超えるのはなかなか難しいようです。

ジョーの凄さは何でもできるテクニックや音はもちろん、Satch Boogieに代表されるそのスタイルに加えて、ギター・インスト・アルバムをコンスタントに出し続けているところにあると思います。近年のアルバムも難しいことを考えずに楽しめるものになっていて、本当にありがたいギタリストです。

このCDのブックレットには長文の英文ライナーがついているのですが、野村伸昭氏がこの全てを翻訳したものが同封されています。これにも感謝です。 

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