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タイトル通りに月明かりのような穏やかさで満ちている 『Meet The Moonlight』 JACK JOHNSON

大変な猛暑だったこの夏、繰り返し聴いたのがジャック・ジョンソンの『Meet The Moonlight』でした。

彼の音楽は大好きでして、『On And On』や『From Here to Now to You』などは今も愛聴盤なのですが、5年ぶりの本作は最初、「かなり地味だな」と感じました。

ただ、これまでの経験から地味に感じたものほど長く聴けるものが多いと信じている私は、夏の暑い日の夕方あたりから格段に合うと感じる本作を繰り返し聴きました。すると、やはりどの曲も聴くほどに沁み渡るアルバムだとわかってきました。

プロデューサーにブレイク・ミルズを迎えた本作では、ミルズ自身も様々な楽器を担当しながら2人でレコーディングされたものが多いそうで、演奏を楽しんでいる雰囲気が感じられます。

実際、こんな動画が配信されていました。

バンド的な音が取り入れられた時期もありましたが、それらをぐるっとひと回りした上で、本作ではギター以外の音を取り入れつつも最小限に抑えられているような印象です。その分、楽器の音が際立ち、美しく響いていますし、曲も(おそらくは)言葉も優しさに溢れています。

動画でも演っている ⑴ Open Mind はオープニング・トラックとしてはかなり地味で、最初は「わざわざこれを1曲目にしてるのか」と困惑していましたが、馴染んだ今では穏やかに始まるこの曲以外にないと思えますし、このアルバムを象徴している1曲と言えそうです。

⑵ 3AM Radio で遂に始まったように感じたのち、⑶ Calm Down で文字通り落ち着いた後、バンドっぽさを感じる ⑷ One Step Ahead まではあっという間です。

そして、タイトル・トラックとなる ⑸ Meet The Moonlight が流れてきます。弦が重なっていく様がなんとも美しい曲で、まさしくアルバムジャケットのまんまです。いや音楽って素晴らしい。


この穏やかな曲の後は一変、⑹ Don’t Look Now でジャック・ジョンソン的ノリノリ曲が全開で、これは一発で好きになる曲でした。

⑺ Costume Party 以降はギターを主体にした、所謂ジャック・ジョンソンらしい曲が続きます。最後の ⑿ Any Wonderはこれまでにあまりなかった、熱く歌い上げる感じなのが意外でしたが、これで締め括られるのは新鮮でとても良いです。

サーフミュージックとか呼ばれ、海と陽射しがテーマみたいな感じが多かったと思いますが、ここにきて月の光をタイトルに持ってきたのはさすがでした。

コロナ禍もあり、加速度的に複雑化していく現代社会ですが、月あかりの下で心を落ち着かせる音楽になっていると思います。長く、飽きることなく聴けそうなアルバムです。


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