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やっと心からクラプトンを好きになれた 『Pilgrim』 ERIC CLAPTON

私にとって、エリック・クラプトンはその良さをなかなか理解できないアーティストでした(いやもうお恥ずかしい限りで…)。

もちろんクリームやデレク&ザ・ドミノス、ソロ作でも『Slowhand』などは聴いていましたが、80年代のHR/HMを聴き漁っていた当時の私にとって、それらはいささか音が古臭く感じたり退屈に感じたりで、聴き込むことがありませんでした。

リアルタイムでは『August』や『Journeyman』をリリースしていた頃でもあり、余計に「見た目は渋くてカッコいいけど、そんなにいいかな?」と入り込めずにいたのです。

まだ「三大ギタリスト」という言葉が大きな意味を持っていて、クラプトンは良いと思えなければならないアーティストだったのですが、何度も繰り返して聴きたいアルバムはなく、自分の感性のなさを嘆いていました。

社会人になってからも、通っていた近所の居酒屋で『Unplugged』がよく流れていたのですが、その時も「こんなクラプトンもいいな」とは思いつつも、あれほどのヒット作を入手せずにいました。

しかしある日、レコード店内で “Pilgrim” が流れているのを聴くのです。

最初は声を聴いても誰かわからず(この曲の声の出し方、ちょっと違いますよね?)、店内を見渡すとNow Playingとしてアルバム『Pilgrim』(1998年)が置かれていて「クラプトンなの⁈」と驚きました。

早速、そこで試聴するわけですが ⑴ My Father’s Eye を気に入って、それほど熱心なファンではないにも関わらず即購入しました。

聴いてみると思った以上に打ち込みが多かったりもするのですが、意外と相性が良かったのか、90年代に合う音になっていたと思いますし、とにかくどれも曲が良いのです。

そして、ギターは言うまでもありませんが、クラプトンのヴォーカルも本当に素晴らしいです。

良い曲に良い歌が乗っかり、良い音で仕上げられているのですから、悪いはずがありません。約80分と長めのアルバムですがあっという間に聴き終えて、リピートしてしまう一枚です。

購入の決め手になった ⑴ My Father’s Eye はもちろんなのですが、⑵ River Of Tears に心を鷲掴みにされました。7分を超える曲なのですが、ギターはもちろん、その歌に魅了されてしまったのです。全てが哀しくも美しい。

そして ⑶ Pilgrim が続くわけですが、私はこの曲のギターソロで初めてクラプトンの凄さを感じることができたのです。

4:30 辺りからのギターソロの入りの美しさ!エモーショナルってこういうことだったのかと。そこから続くソロも、クラプトンをよく知る人からすれば普通のプレイなのかもしれませんが、歴の浅い私にとってはまさしく天上の音楽かのように響きました。

指から生み出されるそのトーンに「エリック・クラプトンってすげー」と、ここでやっと本当に好きになるのです(いやそれにしても遅い)。

本作は捨て曲なしで、想像以上にバラエティーに富んだ曲が並んでいます。⑹ Circus や ⑾ Needs His Women の美しさは際立ってると思いますし、ブルージーな ⑽ Sick And Tired もこの中に入るとアクセントになって楽しめます。

⑺ と ⑻ を除けば、(共作も多いですが)クラプトン自身の曲になっています。正直、それまでに(上っ面だけ)聴いていた印象だと「クラプトンはカバーを演っている方が魅力的」などとわかったようなことを言っていましたが、その印象を大きく覆されたのも本作でした。

私自身が年をとったこともあって、ここ10年くらいはクラプトンの様々なアルバムを楽しめています。特に70年代中頃から80年代初めくらいのアルバムをプレイリストにしてシャッフルで聴くのがお気に入りです。

そして時折、腰を据えてデレク&ザ・ドミノスやクリーム、スティーヴ・ウィンウッドやデラニー&ボニーとのライブを聴いたりするようになりました。

そして、聴いてはいたもののあまり意識していなかったFeat. Eric Clapton な曲を一層、楽しめるようにもなりました。

もともとフィル・コリンズの「I Wish It Would Rain Down」は好きでしたが、ブルース・ホーンスビーのアルバムにも参加していたりして、特に『Levitate』収録の「Space Is The Place」はかなりロック寄りに弾いていて、エンディングに向かってのソロはシビれるほどにかっこいいです。

長らく“天下のクラプトン”の良さを分からずにいた(今も分かったとは言えませんが)というお恥ずかしい話なのですが、本作のおかげで助かりましたよ、ほんと。


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