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「SOUL&CIRCUS」の製作過程や裏話をお話しします。(前編)

皆様、こんにちは。

ソロボードゲーム製作者のHOUROU(ホウロウ)と申します。

私はゲームマーケット2021春にて「SOUL&CIRCUS」(ソウルアンドサーカス)というボードゲームを頒布しました。

ストーリーとしては、悪魔と契約して魂を奪い合う対戦ゲームで、ポーカーをアレンジしたルールとなっています。

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気になる方はぜひTwitterで様々な情報公開をしていたり、BOOTHボドゲ―マ様で通販しているので、チェックしてみてください。

さて、今回はその「SOUL&CIRCUS」の製作過程や製作の裏話をお話ししようと思います。ボードゲームをこれから製作しようと思っている方の参考にしていただいたり、私HOUROUに興味を持っていただくキッカケになれば幸いです。


1.ボードゲームの作りはじめ(卵と鶏)

「卵が先か、鶏が先か」。

ボードゲーム製作においても「ゲームデザインが先か、コンセプトが先か」という話題はよく耳にします。

ひねくれもので大変恐縮なのですが、私は「同時」派または「どちらでもない」派です。

どういうことかと言うと、今回は「悪魔をモチーフにした(コンセプト)、軽量級の対戦ゲーム(ゲームデザイン)を作ろう」と思っていたからです。

ゲームマーケット2020秋にて「BEASTORY」という協力ゲームを頒布しました。そのため、自身の製作の幅を広げたいこともあり、「対戦型」のゲーム製作にチャレンジすることを端から決めていました。

他にはデザイン的な部分として、「2人からできるといいよな」とか、「軽量級でいこう」ということも決めていました。

そしてまた、「悪魔を使役して」「対戦」しようというコンセプトにも元々興味がありました。

整理すると、当初の決定事項はこんな感じです。

・ゲームデザイン→対戦型、2人~、軽量級(30分以内)

・コンセプト→悪魔

「悪魔を使った、軽い対戦ゲームを作ろう!」というところに戻るわけです。

どちらもゲームデザインやコンセプトという大仰なものではないかも知れません。そもそも対戦型であることはゲームデザインと呼べるレベルではないと思いますし、軽量級であることはデザインより、コンセプトに含まれるかも知れません。

どこまでがゲームデザインで、どこまでがコンセプトか。それは長くなりそうなので、またどこかの機会で考えてみようと思います。

話を戻します。私はゲームの芯とも言える「コンセプト」と「ゲームデザイン」の卵をまず決めます。

細かく煮詰めておらず、ただの材料でしかない。

ただし、材料が揃わないと料理は始められません。また、手元にある材料によって料理は大きく分岐します。野菜がないのに野菜炒めは不可能でしょう。

私はゲームの始まりもそれと同じだと考えています。小さくても、些細でも、幼少だろうが高尚だろうが、何でも良いのです。

これとこれをやりたい。

「決める」ことが何より重要だと考えています。

骨組みさえ決めておけば、ゲームデザイン的な部分においては、「やっぱり3人からがいいかも」とか「やっぱり中量級になりそう」とかいうことは削除されます。コンセプトも同じです。「やっぱりドラゴンが出てくるファンタジーがいいかも」とか「魔法少女が出てきて欲しいかも」などの邪念は削除できます。

それが時に奇跡を生むこともあると思いますが、遠回りになってしまうことは多々あります。ぜひ「卵」でいいので、コンセプトとゲームデザインを決めてゲームを作り始めることを私はオススメします。


2.ボードゲームの肉付け

それでは、先ほどのゲームデザインとコンセプトに肉付けをしていきましょう。決めなくてはいけないことは、肉付けであるからして、大きく2つです。

(1)「ゲームデザイン」の肉付け

どんなルールにしていくか。どんな手法を取り入れていくか。

(2)「コンセプト」の肉付け

どんな世界観、ストーリー、外観(アートワークなど)にしていくか。


肉付けの仕方で私が大事にしていることがあります。それは、この2つ(「ゲームデザイン」と「コンセプト」)が融合して1つのゲームが作られるため、密接に絡み合わせよう、ということです。

「SOUL&CIRCUS」では、「悪魔」をコンセプトにしています。私は文学部ということもあり、ゲーテのファウストがすぐに浮かんできました。メフィストフェレスが主人公ファウストと悪魔の契約をする戯曲です。

今から200年近くも前の物語であり、そこには根源的な悪魔の姿が垣間見えます。悪魔は栄華の見返りに主人公に代償を求めます。人間の欲望が鍵となって、悪魔は力を与えるのです。

なるほど、と私は思います。最初のギアを入れて、後はゆっくり進んでいきます。

思考回路を追ってみましょう。

・ファウストでもそうであったように、悪魔がプレイヤーに力を貸すならば、「欲望」を見返りにすることにしよう。また、複数人プレイヤーがいる状態だとしたら、より強い「欲望」を示したプレイヤーにこそ悪魔は力を貸しそうだ。では、「欲望」に強弱を付けよう。(後に強弱が役の強さに繋がり、ポーカーを採用することとなります)

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・逆に「欲望」が弱いプレイヤーはどうなるだろう? 悪魔と契約する=魂を売る、だから魂を奪われてしまうのでは? 対戦ゲームであるからして、勝敗条件に魂を絡めよう。(現に「魂カードを奪われたら負け」というゲームになりました)

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・悪魔ってそもそもどんな姿だろう? 神話上だと単一ではなさそうだ…。人間の欲望を最もコントロールしている存在ってなんだろう? それはきっと無意識化で人の欲望を満たしている「道具」なのでは?(悪魔のモチーフとコンセプトアートが銃や携帯などの「道具」になりました)

……この繰り返しです。螺旋階段を上るように、このコンセプトにはこのゲームデザインが合うのでは、このゲームデザインはこのコンセプトに合うのだろうか、という循環を繰り返して肉付けを実行していきます。常に仮説と疑問符を纏い、自分なりの答えを出しながら進んでいきます。

時には立ち止まり、リサーチが必要になる時もあります。今回、人間の欲望や欲求とはどんなものがあるだろう、ということで人間の根源的な欲求について調べたりもしました。(結果として欲望を、「愛情」「防衛」「自由」「財物」「名声」という5つに絞ることにしました。正解はないため、私個人の解釈でこの5つにまとめることにしたので悪しからず)

他にも、ポーカーや悪魔についても調べたりしました。

結局のところ、「SOUL&CIRCUS」もこの肉付けの段階で、以下のように決定事項が増えました。

「ゲームデザイン」→対戦型、2人~4人、軽量級(30分以内)、ポーカーをアレンジしたルール(数字のない5種のカード(欲望をイメージ)でポーカー)、各カードの枚数、悪魔に固有能力、魂を隠して奪い合うというプレイヤーの目的/勝利条件と敗北条件…etc

「コンセプト」→悪魔(道具をモチーフにしている)、対抗する天使の存在(同じく道具をモチーフに)、悪魔は悪魔界で生きておりそのバラエティ番組が今回の舞台、プレイヤーは欲望を顕示する、人間にとっては現代が舞台、基本は白と黒のツートーンでメインをグレーカラー、テレビはカラフルにして対比、タイトルは古代ギリシャの「パンとサーカス」からもじり、「SOUL&CIRCUS」…etc

箇条書きにするとこんな感じです。

もはや「SOUL&CIRCUS」の前情報を知らないと、何を言っているのか分かりませんね……ただし、文章量で比較すると、当初の「悪魔を使った、軽い対戦ゲームを作ろう!」からはかなり肉付けしていることが分かるはずです。

この繰り返しをしていく内に、ゲームが少しずつ輪郭を帯びてきます。主軸を決めていけば細部の粗さが浮き出てきます。その粗さをまた決めていくと、さらにより細かい細部の粗さが浮き出る。

それらの循環の結果により、1つのルールがいつの間にか完成しているはずです。

困ったときや迷ったときは、初期のコンセプトとゲームデザインに戻ったりもします。ゲーム製作は思ったよりも地味かも知れません。

私はアートワークも自分で行う主義のため、コンセプトアートも作ったりします。(拙さは置いといて) 視覚的な妄想もモチベーションの維持や、コンセプト固めに繋がったりします。

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この画像は初期のアートワークです。タイトルは現在と変わりませんが、悪魔のような顔だけが描かれています。

……そうして、ある程度の形になり、肉付けのスピードが落ち、限界が近づいてきた時に私は思います。

「そうだ、テストプレイしよう」


……前編はこれくらいにしましょう。

テストプレイとコスト、宣伝の話を後編にてお話ししようかなと思います。

こんな拙い文章を、そしてまだボードゲーム製作の経験が浅い私の話を、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ、あなたのスキまたはフォローをいただければ、今後のゲーム製作の励みとなります。

それではまた。

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