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空白の期間の短歌34首

日記から次の日記を書くまでに詠んだ歌一覧(後ろに詳しく記載)
正確には3/21~5/31までの短歌

3/21
纏う香を耳鳴りのように放てば良い 春を侵食させる梅たち

3/22
間違えた分銅みたい関係の悪化は些細なものだったのに

3/24
この手にはほんとはでかい花束があってわたしは泣いてたんだよ

3/26
生き残れば何でも良いさ(本当はそうはいかない)目玉の邂逅

3/27
玄関で崩れるように泣いたこと 指先に残る後悔を見せて

3/28
MADE IN TURKEY ならば良いやつ、と教えてくれる中東の友

3/29
向けろよ、春めくカバにそのスマホ ぼってりとした可愛さを見よ

4/1
神の犬なんじゃないのかいつもいる隣の犬はやけにきれいだ

4/3
人類のるい、のあたりで柏手を打って祈りは贅沢にせよ

4/5
駅ビルは生まれたときからあったのだ 再開発逃れそれが選択だと

4/6
紫の絨毯を買うそしてまた崩壊しかけた世界を見に行く

4/8
雨の春 着るものもない雨の春 陰謀論を読む雨の春

4/9
ゴルフバック引きずっていく勝ち組になれないときの「かち」の響きよ

4/11
何十年ぶりに聞いたか鼻歌を はざくら、宣告は父に降る

4/12
何故息の子と書き息子なんだろう 娘ばかりの家系図なぞる

4/13
あ、花と思ったら潰された毛虫 思えば遠くまで来たような

4/14
喫茶店に金魚がいたのはなぜだろう次々閉まる店に祈りを

4/16
とうめいな身体に首輪をつけること これが歌だとあなたは言った

4/18
世界には言葉があってその後に私が生きて無音へ至る

4/20
しにたいとかんたんに言う 青い空 覗ければ勝ち、負けたらしにたい?

4/23
もっともっとカラフルにせよと指さされわたしの壁画は悲しんでいく

4/25
パスポートの更新をする十年の間にワゴンセールの中へ

4/26
寂しさのパスポートには桜型のスタンプ押されやがて木になる

4/27
雨の降る動物園にふたり行く どの動物が良かったか、父よ

5/2
三人に一人はしぬと言うやまい 陶器市が賑わっている

5/5
ネモフィラは上から見ても青かった いつでも子供みたくはしゃぐわ

5/11
あわよくば撃つつもりだろなぁ、夏よ。春は儚くでも強いから

5/15
春の雨をありきたりだと思うほどまるで普通な詩情を持って

5/23
言葉には勝っても負けても良いですよ 幸福は違うポケットにあるので

5/26
音を立てやかんは騒ぐさっきからISSが見えているから

5/28
敵襲を待てと言わんばかりに花 あんたは摘むか?写真に撮るか?

5/29
コップのぬめりとあなたのぬめり、一枚の鱗は羽へと変わる

5/30
落とすからガラス、潰せばそれは虫 右折で飛ばす癖を許して

5/31
なんにでも欠点はあるガガンボは害がないけどすぐ死んでいく

日記『ファーティマの部屋』は2023年の3月20日まで書いて、『ファーティマの部屋 Vol.2』(予定) は今6月1日から書いている(読んでない人に説明するとこの日記には毎日一首ずつ短歌を収録している)。このネプリはその間、つまり日記に収録されない期間にツイッターに発表した短歌34首を掲載した。文フリ東京で配布し、明日ネプリ発行する『短歌同人しえすたお披露目ネプリ』と被っている歌もあるが、記録として敢えて載せた。
最近は結構実景を詠みこんでいることが多い。もともと私はほとんど実景しか詠まない派であったが、いろんなものにチャレンジしたくて一時実景からは離れたが、去年約一年短歌から離れていて、もう一度実景を詠みたい気持ちにシフトした。今では少ない方かもしれない。
ところで今回「人類の『るい』」とか「勝ち組に~『かち』」とか音に着目している歌とか「雨の春」とか「ぬめり」のリフレインとか、私は改めて「音」で詠んでいるところがあるなぁと気づいた。これは先日逝去されたかばんの山下一路さんに初めて行った歌会で指摘されて、今思うとすごいなぁと思っている。
それでは今回もお読みいただきありがとうございました。

ちなみに内容は同じですが、一応明日ネプリ登録するので、もし紙でほしい方はよろしくお願いします。

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