見出し画像

ある法律書ができるまで…Vol.1

2022年12月、弊社から『最高裁破棄判決 失敗事例に学ぶ主張・立証、認定・判断』(田中豊・著)を刊行しました。

『最高裁破棄判決 失敗事例に学ぶ主張・立証、認定・判断』(田中豊・著)

本書は、訴訟代理人、事実審裁判官が陥りやすい実務の難所を抽出し、主張・立証方法、事実認定・法的判断のあり方を解説したもの。

「法令の解釈、適用の誤り」「証拠に基づかない事実認定」「審理不尽」「理由不備」「判断遺脱」「経験則に反する違法」「採証法則に反する違法」など、22の破棄理由の事例を登載し、事案の概要から原審判断、最高裁判所の破棄理由を提示しつつ、なぜ・どこで誤ったのかを明示します。

東京地方裁判所判事、司法研修所教官(民事裁判担当)、最高裁判所調査官(民事事件担当)を歴任した著者の実践知・経験知を提供する唯一無二の書であり、読者の皆様からも大変好評いただきました!(皆様ありがとうございます!🙌)

本記事では、当編集局のTwitterで反響のあった、本書編集担当者の連載投稿【#ある法律書ができるまで】をまとめて掲載!
140字以内で綴られた、企画から発刊に至るまでの経過の中に、熱い編集者魂を感じていただけるものと思います!🔥


きっかけは、日頃お世話になっている弁護士の田中豊先生の事務所にうかがったときだった。田中先生の著作には、よく判例時報の「#最高裁破棄判決の実情」掲載の判決例が取り上げられる。この論考が、弁護士や裁判官にどのように役立っているのかをお尋ねしたのである。

#ある法律書ができるまで①】

田中豊先生は、判例時報の「#最高裁破棄判決の実情」は、事実審裁判官の事実認定や法的判断、あるいは訴訟代理人の主張・立証を誤った事例の宝庫であり、ここから学べることがたくさんある、弁護士には、この貴重な論考からいろいろ学んでほしいとおっしゃっておられた。

#ある法律書ができるまで②】

以前から訴訟における主張・立証方法のあり方に関する書籍を出版したいと考えていた。一方で、『○○訴訟の実務』といった書籍では、事件類型ごとに主張・立証方法が解説されているし、弊社には『#立証の実務(改訂版)』(群馬弁護士会編)もある。差別化が必要だ。

#ある法律書ができるまで③】

昨今では、「ヒヤリハット事例から学ぶ」や「失敗の本質」などといった出版物が多い。だとすれば、弁護士や裁判官も、ヒヤリハットや失敗から学ぶ書籍があってもよいのではないかと考えた。しかし、失敗事例を集めるのは大変だ。そのとき田中豊先生の言葉を思い出した。

#ある法律書ができるまで④】

企画書をまとめ、田中豊先生に正式に依頼し、ご快諾をいただいた。ご多忙な中でのご執筆となるので、時間がかかることは覚悟した。何年越しの企画になることか、とにかく原稿が届くのを楽しみに待つことにする。

#ある法律書ができるまで⑤】

執筆をご快諾いただいてから季節がいくつか移ろった冬の日。草稿が届いた。第1章で「#民事訴訟の基本原理」を説明し、第2章以下で、最高裁破棄判決の事例をテーマごとにまとめて分析してくださった。裁判官や弁護士でも初歩的なミスをするのだなと感じながら拝読する。

#ある法律書ができるまで⑥】

草稿を拝読して、「破棄判決」をテーマにして「主張・立証のあり方」を解説するメッセージをもう少しクリアにできないかと感じた。そこで、序章を設けて最高裁破棄判決についての概観と紹介をいただくこと、各章で、失敗から何を学ぶかを掘り下げてほしいとお願いした。

#ある法律書ができるまで⑦】

こちらの提案を田中先生も喜んでくださった。あらためて執筆を進めるとお約束をいただき、再び、原稿が届くのを待ち望む日が続く。毎回、思うのだが、事件対応でご多忙な方なのに、判例や学説などを丁寧に確認しておられる。いつ、インプットをしておられるのだろう?

#ある法律書ができるまで⑧】

しばらく経って、お電話をいただいた。数日後には原稿を送るとのこと。いよいよ来た。原稿が届いたらすぐに確認できるように態勢を整えておかなくては。1ページは、何文字程度にするか、見出しのフォントはどうするか、書籍全体のデザイン(割付)も考えておこう。

#ある法律書ができるまで⑨】

原稿が届く。加筆をご検討いただいた「序章」もいただいた。口頭弁論期日の調書に口頭弁論を公開した旨の記載がなかったばかりか、控訴審の口頭論期日の調書に第1審における口頭弁論の結果陳述をした旨の記載をした事例などが紹介されていた。こんな事例があるんだ……

#ある法律書ができるまで⑩】

序章「最高裁破棄判決とは」、「第1章 主張と立証に関する民事訴訟の基本原理」「第2章 請求及び主張と失敗事例」「第3章 直接証拠による立証と失敗事例」「第4章 間接証拠による立証と失敗事例」「第5章 証拠の提出に関する問題」が全体の章立てである。

#ある法律書ができるまで⑪】

各章では、事例ごとに、事案の概要から原審判断、最高裁判所の破棄理由を提示しつつ、どこで、何を、どうして誤ったのかがわかるようになっている。そして、「事例から汲み取るべきレッスン」において、法律実務家の対応すべき考え方と手法を詳解している。

#ある法律書ができるまで⑫】

ご執筆いただいた事例の最高裁の破棄判断の理由をみると「法令の解釈、適用の誤り」「証拠に基づかない事実認定」「審理不尽」「理由不備」「判断遺脱」「経験則に反する違法」「採証法則に反する違法」など様々な事例がある。原稿を読んでいるとワクワクしてくる。

#ある法律書ができるまで⑬】

事例が把握しやすいように罫線で囲む。原審判断は、破線で囲み、最高裁判断は実線で囲む。重要な記述は、太字にするなど工夫する。事案については、概要説明の後、[関係図]を作成いただいたので、全体像がわかりやすい。読者に著者のメッセージを届きやすくするのだ。

#ある法律書ができるまで⑭】

印刷会社に校正刷りの作成を依頼し、出力される。全体で約300ぺージ。これに目次や索引が付くので、全体で320ページくらいか。弁護士が増員され、20年前より新人弁護士が経験する事件数が減ってしまっている。ぜひ、本書から経験知を獲得してほしいと願う。

#ある法律書ができるまで⑮】

著者から校正刷りに赤字が入って戻ってくる。ご多忙な中、丁寧な修正をいただく。もっとわかりやすく説明できないかと葛藤された様子がうかがえる。編集担当者としてこれから最終確認を行い、目次と索引の作成に入る。併せてリーフレットなどの販促材料の作成も行う。

#ある法律書ができるまで⑯】

装丁をデザイナーに発注する。書名・オビの文章に悩む。どのキーワードが読者の心に刺さるのか。まずは、書店で手に取っていただくような雰囲気をもたせたい。著者からは、「最高裁破棄判決は失敗事例だということがわかるようにしてほしい」とのご教示をいただく。

#ある法律書ができるまで⑰】

著者とのやりとりを経て書名は『#最高裁破棄判決――失敗事例に学ぶ主張・立証、認定・判断』に決定する。オビの文章も固まった。著者からは、装丁は、「とにかく格好よく」とのこと。良い書籍にはオーラがある。書籍全体から良書だと伝わってくるものにしたい。

#ある法律書ができるまで⑱】

著者の修正を反映した新しい校正刷りが届く。こちらは、あらためて著者にご確認をいただく。装丁のラフデザインも複数届いた。どのデザインが良いか、営業担当者とも相談する。書店で目立つにはどのような色合いがよいかなど、この間、少しチームの雰囲気がピリつく。

#ある法律書ができるまで⑲】

装丁を決定し、オビの文章も固まった。「訴訟代理人、事実審裁判官は、『どこで』『何を』間違えたのか、を知ることで法曹のハイクラス・スキルを獲得する!」。訴訟代理人や裁判官がどのように考えていたかなんて、田中豊先生にしか執筆できないのではないかと感じた。

#ある法律書ができるまで⑳】

いよいよ最終段階。目次・索引の掲載箇所が間違いないか、修正箇所はきちんと反映されているか、最後まで徹底的に確認する。著者略歴は、本文の確認を終えて油断していると誤字を見逃しやすいので慎重に対応する。このほかホームページのウェブサイトなどの確認を行う。

#ある法律書ができるまで㉑】

いよいよ校了。本書を通じて、#田中豊先生 の知見が多くの法律実務家の方に伝わっていくと嬉しいです。弊社納品は、22日(火)の予定です。ご予約は、こちらからお願いいたします。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/11350
#最高裁破棄判決 ―失敗事例に学ぶ主張・立証、認定・判断

#ある法律書ができるまで㉒】

『最高裁破棄判決 失敗事例に学ぶ主張・立証、認定・判断』の
ご購入はこちらから📚

『最高裁破棄判決 失敗事例に学ぶ主張・立証、認定・判断』(田中豊・著)

法律のひろば公式サイト

法律のひろばTwitter


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?