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養生訓 巻第八 養老 鳳凰堂流解釈⑤


原文を現代文に改変

今の世老いて子に養わるる人、わかき時よりかえって怒り多く慾深くなりて、子をせめ人をとがめて晩節をたもたず、心を乱す人多し。

慎みて怒りと慾とをこらえ、晩節を保ち、物ごとに堪忍深く、子の不幸をせめず、つねに樂しみて殘年をおくるべし。

是老後の境界に相應じてよし。乳子、年老血氣衰えては得るを戒め給う。聖人の言おそるべし。

世俗わかき時は頗る慎む人あり。老後はかえって多慾にして怒りうらみ多く、晩節をうしなう人多し。慎むべし。

子としては是を思い、父母の怒り起こらざるように、かねて思いはかり、おそれ慎むべし。父母を怒らしむるは子の大不孝なり。又子としてわが身の不孝なるを親に咎められ、かえって親の老耄(ろうもう)したる由を人に告ぐ。

是大不孝也。不孝にして父母を恨むるは惡人のならい也。


鳳凰堂流意訳

今の世の中で老いて子に養われている人は、若い時よりかえって怒りやすく欲が深くなり、子をせめ人をとがめて晩節を汚し心を乱す人が多い。

慎んで怒りと欲とをこらえ、晩節を保ち、物ごとに堪忍深く、子の不幸をせめず、つねに楽しんで残りの人生をおくるべし。

これが老後の境界に相応じて良い生き方である。

乳飲み子や年老いた人は気血が衰える毎にこのように戒める必要があるといった聖人の言葉は的を射ている。

世俗では若い時に頗る慎む人がいるが、老後はかえって多欲で怒りうらみが多く、晩節をうしなう人が多い。慎むべきである。

子としてはこれを思い、父母の怒り起こらないように双方思いはかり、おそれ慎むと良い。

父母を怒らせるのは子の大不孝である。

又子としてわが身の不孝なるを親に咎められて、かえって親の老いぼれた理由を人に吹聴する事は大きな不孝である。

不孝にして父母を恨むのは惡人のする事である。

鳳凰堂流解釈

現代社会の中で、ここまで孝行心を持つ人がどれだけいるだろうか。

そして、親に感謝するのは当然の事ながら、執着にならないように考え、準備しておく必要がある。

親や先人は逆に子や後人に恥じない最後を見せる事で、最後の教えを人生で伝える事ができるのが、聖人、或いは人の親として大切なのではないだろうか。

今の世の中、このような感性から離れすぎて寂しいばかりである。

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