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いつもありがとう

むかしのはなしをしてもいいですか、薬を飲んでるからってことにしていいですか、

あの、保護所がなんか炎上してましたよね。私が居たのは川崎だったんですが、ちゃんと下着は新品をもらっていました、8年前から。職員の前で全裸になって着替えないといけなくて、お風呂に入る時もそうで、すごく恥ずかしかった。なんだかそんな記憶がありますけど。

職員の機嫌を損ねて夜ご飯を持ってきてもらえないなんてことは普通に何回かあって、泣いたって何も解決しないよ!とケースワーカーにどやされて、ほやほやの小学一年生の女の子がママに会いたいって泣いてるのをうるさい、他の子も我慢してるんだから静かにしなさい!って叱ってさらに泣かせるような職員がいたり、した。のをよ、く憶えています。あの子、いまもういくつになったんだろう、中学生くらいかな、そうだね、

隣の部屋で、壁をノックしたらノック仕返してくれる年下の女の子の姉妹、同じ部屋でこっそりお菓子を分け合いっこした同い年の子、CDを借りたらその曲いいよねって笑ってくれた一つ上の女の子、いつも目が合うとひらひら手を振ってくれたあの子、あげるよって夕食のお肉を分けてくれた二つ上のお姉ちゃん、クチパックンの折り紙に内緒だよって暗号の電話番号を書いて教えてくれた高校生のお姉さん、元気にしてるかな、ほんとに大事にしてたんだけど、解読できなくて諦めちゃったんだ。ねえ幸せでいてね、どうか、ねえ。今何していますか、笑顔でいられていますか。みんな。どうか。

最近は随分環境が改善されたと聞きますが、実際のところどうなんだろうなって、いろんなニュースをみて、心苦しく思います。

3度目の保護の後、両親に引き取りを拒否されて、いく宛のなかったわたしは精神科に入院しました。

淡い虹色の雲みたいなところだったな。感受性が煌めく少女たちの、絶望や葛藤や焦燥や諦観、フラストレーションが、それらが、血となって流れたり作品として昇華されたり、表に出ているのはそんな子たちばかりで、綺麗な記憶しかもう残ってないや、さみしいね、なっちゃんもひーくんもすずもせいねえも りこちも るかも、あおいくんも、ねえいまどうしてるのかな、いきてたら、いいな、笑っていたら、もっといいな

今まで感情を燻らせて爆発させることしかできなかったぼくにとって、彼らと出会えたことは衝撃で、初めて世界に理解者を見つけたような気持ちになった、んです、救われたような、あれは崖っぷちの閃光だった。毎日のようにりこちが絵を書いてる横できょうちゃんと数学の勉強をして、せいねえに大人なことをたくさん教えてもらえて、本棚の裏で隠れてキスをして、たのしかった、楽しかったな。でも大好きなあの子たちもひらりひらりと退院していくから、思い出を永遠にしたくて施設に行くことを決めたんです、訳がわからない文章かな、訳が分からなくていいよ。ごめんね。

見学に行った施設でたまたま同じ保護所だった子が、細い窓から私を見つけて全力で手を振ってきたのが愛おしくてそこの施設にしたんですよ、

施設は、一言じゃ言えないけど、SNS監視されてお茶請けにされていたり、したそうです、気持ち悪いですよね、でも楽しいこともたくさんあった、園長に使ってない部屋あるならプリ置こうよなんて頼みにいって、ぺいぺいっとあしらわれたり、夜中こっそりお互いのお部屋訪問会をしたり、門限を破って友達とマックで駄弁ったり、デートの待ち合わせ場所までついてきてもらったり、したな、たのしかった、けっきょく、思い出すのはそういうことばっかだ、くるしくて泣いたこともたくさんあったはずなのにね

下着も服もパジャマもコートも不自由はしなかったけど、わたしはずっとAnkrougeの可愛いコートが、evelynのフリル付きのスカートが、ハニーシナモンのリボンのトップスが、どうしようもないほどに羨ましくて仕方なくて、お小遣いを貯めたってこんなダサい格好で入るのも恥ずかしいし、似合わないよなあなんて思うから、ちらりとお店の商品をみて、ああかわいいななんてうらやましくおもってた 淡いリボンとか、レースとか、フリルとか、パステルカラーとか。ああ、かわいい、いいな、かわいいな、なりたいな、とか、おもって、

いちいち揶揄われるのがいやでほとんど化粧もしていなかったら、大学に入る前に付き合った男の子に垢抜けようね…と励まされたり、あははって笑ってたけど屈辱だったよ、ごめんね、そうだよね、すきだったよ、ごめんね

施設を出て、大学を辞めて、シェルターから脱走して、場末のデリヘルで働いて、初めて買ったevelynのコートが、ワンピースが、DIANAのブーツが、本当にいとしくて、うれしくて、鏡の前ですこしだけ泣いてしまったのを憶えています

インターネットでは顔を載せれば簡単に、あの頃いじめてきたクラスメイトたちより多い人数がいいねを押してくれて、それを救いに、それを救いにしてしまっています、いつもごめんなさい、ありがとう、ありがとうございます

それだけを言いたくてこんなに長い文章を書いてしまいました、ここまで読んでくれた方、ありがとう、綺麗にしたかったのにぐちゃぐちゃだ、ごめんね、読んでくれてうれしい、本当に、ごめんね、だいすきです、うまく終わらせられないけど、今交れていることが嬉しいよ、それだけ。大好きだよ。ありがとう、それでは、またね、きっと

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