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訪問看護に「チャレンジする勇気がない」という方へ

訪問看護に興味はあるけれど、「一人での訪問が不安」という声をよく耳にします。
私の経験でも、復職を考えているママ友(看護師)に、訪問看護どう?楽しいよ!と勧めたことはあるものの、「一人で訪問するとか、絶対ムリムリ!」と即答された経験があります。理由は「その場に自分しかいないのに、ちゃんと判断できるか不安」というものでした。
訪問看護をやってみたい、でも踏み出す勇気がない……と考えている方は、この「一人で訪問」「一人で判断」に大きな不安を感じているのではないでしょうか?


不安の中身はなんだろう?

新しいことに挑戦するときは不安を感じます。
そんなときは、「不安の中身」を具体的に洗い出してみてはどうでしょうか?
実際に、私が訪問看護に挑戦する前に感じた不安や、身近な友人・知人から聞いた不安の中身をご紹介します。

①異変があるとき、一人で判断できるかな?

訪問看護では、基本的に看護師一人で利用者さんのお宅に訪問します。
しかし、これは「訪問看護業務に慣れてから」の話です。入職して間もない時期は、先輩看護師が同行してくれるケースがほとんどです。同行訪問の期間はステーションによってまちまちですが、概ね1ヶ月くらいのところが多いようです。
同行訪問の間に、基本的な看護技術や利用者さんごとの対応を学ぶとともに、「異変を感じたときにどのように対応するか」も学んでください。
この利用者さんは、普段どんな様子なのか?バイタルは?顔色は?呼吸は?皮膚の状態は?排泄状況は?など、「普段」を知ることで「異変」に気づけます。
そして、「異変」に気づけたとして、その後にやってくる不安が「これは経過観察でいいのか、報告したほうがいいのか、往診依頼や受診をすべきか、救急搬送したほうがいいのか」の判断です。これについても、同行訪問の時期に、「このような場合、医師に報告したほうがいいか?」「救急搬送の目安は?」を確認しておくと良いと思います。
また、訪問するのは一人ですが、現在はLINEやChatWorkなど、社内共用のチャットツールを利用しているところがほとんどです。不安なときに、いつでも通話・画像を送信しての相談が可能になった点は、ひと昔前の訪問看護に比べると、安心感が格段にアップしたと感じます。

②主治医への報告の目安は?どうやって報告する?

利用者の異変は察知できた。じゃあ、どうやって対応する?というのも不安要素のひとつです。
私が後輩指導をする際に必ず伝える内容としては、
「意識・呼吸・循環のひとつでも異常がある場合は、すぐに主治医報告。ただし、意識がない・呼吸をしてない・ショック状態など、緊急性がある場合(生命の危機)は救急搬送を優先。その後に主治医に報告」と伝えています。

救急搬送については、利用者さんのこれまでの病状経過やACPによって、「救急搬送しないで主治医を呼ぶ」となっていることもありますので、その辺の事前確認も重要となります。

他にも、疼痛を訴えている・嘔吐している・出血がある・腫脹があるなど、明らかに普段と違った様子があれば、速やかに主治医に報告します。
また、「今のところ変わった様子はないが、昨夜転倒して頭を打ったらしい」とか、「ここ最近薬が飲めていない」とか、今すぐ医療処置が必要なわけではないけれど、主治医の耳に入れておいた方がいい内容についても報告をします。

訪問看護の場合、主治医のいる医療機関(病院・クリニック)に報告する手段として最も多いのは電話です。病院のように直接主治医に報告できるケースはまれで、対応してくれるのは医療事務や看護師の方です。その方たちに、「状況報告」と「その後の対応依頼(ひとまず報告だけなのか、往診をお願いしたいのか、処置の指示がほしいのか等)」を伝え、場合によっては医療機関から折返しの連絡をいただくこともあります。
最近は、訪問看護ステーション・医療機関・薬局・ケアマネジャー等が共有できるチャットツールを利用しているケースもあり、急ぎでない場合はチャットを利用して報告することもあります(とても便利です!)。

②運転に自信がない、道を覚えられるかな?

車の運転は実践で慣れるしかありません。どうしても不安……という場合は、自転車訪問もありです。
私は極度の方向音痴ですが、社用車のカーナビや、カーナビがなくてもスマホやタブレットで地図アプリを使用すればまったく問題ありません。
同行訪問の期間に、近道や目印を教えてもらいながら覚えていきましょう!

③訪問看護って、なにをどこまでやるの?

たまに聞くのが、「結局、訪問看護ってどこまでやるの?」「施設や病院みたいに、ずっと利用者さんを看れるわけじゃないでしょう?」「時間内でケアが終わらないときはどうするの?どこで線引するの?」といった質問です。
訪問看護は、保険(介護保険・医療保険)サービスのひとつです。利用者さんの希望することを、なんでもやってあげられるサービスではありません。「主治医からの訪問看護指示書」があり、「ケアマネの立案したケアプラン」があります。それらの内容に沿った訪問看護計画を立案し、計画的にサービスを提供することが大前提です。予防的ケアから、病院で行うような医療処置まで幅広く対応できるのが訪問看護の強みと言えます。
しかし、勘違いしてはいけないのが、計画にないケアをする・時間オーバーしてまでケアを完遂することが(善意であっても)「良い看護」ではないということです。
例を挙げると、「すでにサービス終了時間になっていたけど、『爪を切って欲しい』と言われたから対応した」「独居の方の救急要請をしたときに、救急隊に『病院まで一緒に乗って!』と言われたので救急車に同乗した」というものがあります。
1つめの例は、「爪切りくらいやってあげても……」と思わなくもないですが、そもそもご家族が切れるのであれば、ご家族にお願いすればいいのです。巻爪・肥厚した爪など特別なケアが必要な場合は、主治医とケアマネに報告して、きちんと指示書・ケアプランに記載してもらいましょう。「指示にあること・ないこと」「やる必要性のあること・ないこと」の線引は大事です。
2つめの例は、いくら独居の方であるとはいえ、訪問看護が「利用者のお宅で看護を提供するサービス」である以上、居宅外でのサービス(この場合は救急車の同乗)は算定(請求)できません。ボランティア、あるいは自費サービスの範囲です。救急隊に依頼されても、お断り案件です。

訪問看護でできること・できないことを線引して、「その方に必要な看護ケアを、決められた時間内で行う」ことが重要になります。

④オンコール持てるかな?

もうひとつの不安は、「オンコール」の問題です。
オンコールが無理なら、パートとして働く・正社員でもオンコール選択制のあるステーションを選ぶ方法があります。

オンコールを持つ場合は、「電話の音に気づけるだろうか」「電話の相談内容に適切に応えられるか」といった不安があります。
これについては、オンコールを持つ際にも研修期間のようなものがあり、段階を踏んでオンコール対応ができるような体制があります(ただし、ステーションの規模や教育体制によります)。
理想的なオンコール体制としては、管理者やベテランナース・新任者の2名体制でオンコールを持ち、段階的に新任者にファーストコールを移譲していくパターンです。

第一段階:ファーストコールを管理者・ベテランナース、セカンドコールを新任者が持つ。ファーストが受けた緊急連絡の内容をセカンドと共有し、どのような判断をして、どういった対応をするのかを学ぶ。

第二段階:ファーストコール(管理者・ベテラン)が受けた内容を、セカンドコール(新任者)に共有。どのような判断・対応をするか新任者に考えさせる。場合によっては一緒に同行訪問する。

第三段階:新任者にファーストコールを受けさせる。管理者・ベテランナース(セカンド)は、いつでも相談・応援ができるよう待機しておく。場合によって同行訪問するが、主体的に動くのは新任者。

第四段階:新任者のオンコール自立。

このような体制をしっかり取ってくれるステーションが理想的です。
ここまでではなくとも、少なくとも新任者のオンコールが自立するまでは、管理者やベテランナース(教育担当者など)が常にサポートできるよう待機してくれるステーションだと安心です。
「訪問看護に挑戦したいけど、オンコールがネック」という方は、お目当てのステーションに見学や問い合わせをして、オンコールの指導体制について確認してみると良いと思います。

どのような分野・職場でも、未知のことや初めてのことには不安がつきものです。
そんなときは、「何が不安なのか?」「どうやったら不安が解決できそうか?」「事前に確認できることはあるか?」など、ひとつずつ前に進む方法を考えてみると良いと思います。
訪問看護、楽しいですよ!興味のある方は、ぜひ訪問看護の世界へ!

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