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三宅香帆『娘が母を殺すには?』と、批評の問題

今日は三宅香帆さんの新刊である『娘が母を殺すには?』について書いてみたいと思います。(著者よりご恵投いただきました、ありがとうございます。)

この本が何をやっているかって言うと、「批評」ですよね。書評家を名乗っていた三宅さんが、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を経て「文芸評論家」を名乗り、翌月にどーんと批評本を出す。批評家の名刺としては、とてもいい流れですよね。



批評の本としては不思議な書き方

ただの本としては少し不思議なことをやっているんですよ。何をやっているかって言うと、これまでの批評の本ならば、本文中で扱ったような文章を注に投げると言う書き方をしているんです。脚注ですね。

例えば、高橋源一郎と斎藤美奈子の『この30年の小説、ぜんぶ』のいい感じの引用があるんですけど、それが、脚注で全面的に紹介されるだけで、本文では一瞬で済ませられる。

たまに精神分析とか心理士の書き手の文章が引用されているけど、それもほとんどが注に投げられています。本文中でももちろん言及されることもあるんですが、どちらかと言うと例外的で、基本的に引用はほとんど脚注で済ませるという形で書かれているんですね。

では、本文で何をやってるか。

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